クロスオーバー! フレッシュプリキュア!クロス†フューチャー 砂漠編・エピローグ

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フレッシュプリキュア!クロス†フューチャー 砂漠編・エピローグ





 真夏の陽光が降り注ぐ海辺に、11人の少女たちが佇んでいた。
 目の前には生命に満ちた大海原が果てしなく広がり、あの赤い死の砂漠の光景は、まるで白昼夢のようにおぼろな記憶の彼方へと追いやられつつあった。
 しかし、ここにいる誰もが知っている。あの砂漠は、どんな人間の心にも潜むものなのだと。
「帰ろう、おーちゃん」
「ああ」
 微笑みながら呼びかけたイフに、王もまた笑顔で応えた。
「――だが、その前に」
 王は水着をパッと脱ぎ捨てて言った。
「えっ」
 穏やかな終幕ムードが途切れ、イフの目が点になる。
「ひと泳ぎさせろ!」
 全裸になった王は身を翻して大きく跳躍し、放物線を描いて遥か沖に着水した。
「ちょっと……それ今着なきゃ意味ないんだってばー!」
 イフの叫びも虚しく、波間から顔を出した王は、この日一番の笑顔で言った。
「生まれたままの姿で味わってこそだ。……やはり海はいい!!」
 彼女はまさに字のごとく水を得た魚のように生き生きと泳ぎ回った。
「もおー、じゃあ私のお小遣い返して!」
「まあ、まあ。せっかくだしイフも泳いできてはどうですか。水着のサイズは同じはずですよ」
 キサナが冗談交じりに王の水着を差し出すと、イフは慌てて頭と手を左右に振った。
「わっわわわ私はいいよ! こんなとこで着替えとか無理だし!」
「いえいえ私たち以外誰もいませんし、そこの岩陰なんかちょっとした洞窟みたいになってますし」
 少し意地悪なキサナの追撃に、イフの声が徐々に小さくなって口ごもる。
「んっと、ちょっとくらいなら、いいかもしれないけど……」
 冗談ですよ、とキサナが言おうとした頃合いに、思わぬ所から歓声が上がった。
「決まりですね! キサナ様も、みんなで泳ぎましょう!」
「え!?」
 今度はキサナが不意を突かれる番だった。スピリットポリスたちがマシンクロスフューチャーのシートバッグから色とりどりの水着を取り出し始めたのだ。
「全員分ありますよぉ。あ、もちろん日焼け止めも」
「ス、スカイ! これはどういうことだ!?」
 ただひとり、リーダーであるメノウだけが事情を知らないらしく取り乱している。
「クイーンが持っていけっておっしゃったんですよ。リーダーには知らせるなって」
「ク、クイーンが……」
「だろうと思いました」
 まだまだクイーンとの付き合いが浅いせいか絶句するメノウ。対するキサナは呆れながらも、すでに腹をくくった様子だった。
「クイーンのご命令ですよ。あなたも泳ぎますよね、メノウ?」
「わ、私は……」
「レッツゴー!」
 キサナはメノウの返答を待たず、彼女の手を握って走り出した。
「あー! リーダー、ずるい!」
「独断専行は始末書ですよぉ!」
 ポリスたちがドタドタと二人を追い、残されたイフも周囲を見回したあと、そそくさと後に加わった。
「あ、あのー……浮き輪、あるかな?」

 夏の日差しがキラキラと海面に跳ね、その中に少女たちのシルエットが浮かび上がる。波音と嬌声が混じり合って岩場に打ち寄せた。
 その光景を、遠く離れた海岸の道路から見つめる者がいた。――キュアマスカーの変身者、白銀エリス。
「その海は、魔人のものじゃない」
 ぽつりと呟くと、彼女は踵を返してその場を後にした。
 傷の痛みによろけ、ガードレールにもたれながら、蜃気楼がゆらめく道をただひたすら歩いていく。
 彼女に帰る場所はない。待つ人もいない。
 誰ひとり自分の素性を知る者のいない時代で、鍵の妖精のみを道連れに、殺戮を続けていく。
 今夜も狩りが途絶えることはない。その戦いに、いまだ終わりは見えない。



 1960年、南極。
 見渡す限りの白い氷原に、緑色と桜色、二人のプリキュアが並び立っている。
 凍える風が絶え間なく吹きつける極限の世界で、彼女たちはただ毅然と正面を見据えていた。
 まるで何かを待ち受けるかのように。
「考え事ですか?」
 桜色の装衣をまとったプリキュアがぽつりと呟いた。
 聞く者の心を温かく包み込むような、それでいて芯の強さを感じさせる声だった。
 彼女の言葉を受けた緑色の装衣のプリキュアは、ばれたか、とばかりに相好を崩した。
「あんたに隠し事はできないわね」
「しっかりしてくださいよ」
 桜色のプリキュアが両手を腰に添え、やれやれとため息をつく。
「ごめんね。……ただ、今日がきっと、私たちの世界の未来を左右する日になると思ったからさ」
「なおのこと、考え事してる場合じゃないでしょうに」
「ふふ。今まで誰にも言わなかったんだけどさ……ここだけの話、私は未来のプリキュアに会ったことがあるんだ」
「ええっ、本当ですかぁ?」
 あまりにも突飛な話に、桜色のプリキュアは驚きつつも半信半疑といった様子で耳を傾ける。
「その時の恩返し……ってわけでもないけど。たった今、あの子たちに繋がる道を歩いてるんだと思うと、嬉しくてしょうがないんだ」
「呆れた。私たち自身の明日さえ、あるかどうかもわからないんですよ。……でも、先輩のその呑気さは、逆に頼もしいですけどね」
「こいつっ」
 緑色のプリキュアが突き出した拳を、迎える拳がこつん、と受け止める。二人は微笑みながら視線を交わした。
 その時、一際激しい吹雪が吹き抜け、彼女たちの目は遥か地平線の彼方へと走る。
 風の音に混じる、かすかな地鳴り。白い闇の向こうから、何かがやってくる。
 牛のような角を頂く、黒い悪魔の群れ。
 そしてその中心に君臨する、緑色の髪を振り乱した大巨人――“砂漠の王”の威容。
 決戦が始まる。この星の全ての生命と、“心”を賭けた戦いが。
「さ、行きましょう。――キュアウッド」
「合点よ。――キュアフラワー」



 それらの時代より遥かな過去。古代を超えた、超古代とでも言うべき時間の彼方。
 柔らかな夕陽が石造りの家々を照らしている。
 町並みの中央には、十字の紋章を掲げた城がそびえ立つ。
 そこから程近い山中に、大勢の人が集まっていた。
 崩れ落ちた山肌の中から人造物らしきものが覗いている。数日に及ぶ発掘作業によって、それは徐々に全貌を現しつつあった。
 巨大な砂時計。まるで山のように大きな――というより、この砂時計の上に土砂が堆積したものを誰もが山と信じて疑わなかったのだ。つい先日、長雨による地すべりが起こるまでは。
 作業員や科学者、野次馬などでごったがえす現場に、一人だけ異彩を放つ者がいた。
 高下駄を履いたような異常な長身に長大なドレス、顔の上半分を隠す仮面、そして手には禍々しい形状の杖。それは、この王国の科学者の頂点に立つ人物だった。
 砂時計の器は大きく割れていたが、底部には青白く光る砂のようなものがわずかに残留していた。その輝きを認めて、仮面の下の口元が吊りあがるように歪んだ。
 夕闇の中に浮かび上がる微笑。その裏側に隠れた恐るべき野望の発露を、未来のプリキュアたちは――いや、この時代の人々すら、まだ知る由もなかったのである。


<エピローグ→『クロスオーバーW』につづく>


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テーマ : プリキュア
ジャンル : アニメ・コミック

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お疲れ様です!

いやぁ大盛り上がりのクライマックスでしたね! 巨大な敵を前に、進行を阻止しようとしたりという感じがたまりませんでしたが、タイミング的に今年の某怪獣映画にも見えちゃうあたりも、違う意味でも楽しませていただいたと思いますw

マスカーちゃんのキャラがやっぱり好きですねぇ。気丈に振舞っているようで、かなり無理をしている感じが痛々しくもあり、目が離せない感じでとても今後の活躍が気になりました。

そしてなにより!!あっちにもこっちにもキサにゃんが!!!ユートピアか?シャングリラか?アルマゲドンでもラグナロクでもドーンと来いなパラダイス状態!!あぁなんと麗しく清らかな天使たちの戯れなのでしょう・・・素晴らしくて言葉になりません。ありがとうございます。そして、ありがとうございます!

そしてエピローグのナイスすぎる空魔神さんへのバトンタッチ!鳥肌立ちました!!こういう粋な演出も素晴らしすぎます!

ともあれ、次回の作品も楽しみにしております~!(*´∀`*)

コメントありがとうございます!

>我さん

ブレイブ達のスペックが正直強すぎるので、緊迫感を出すために防衛ラインを設定してみました。
インフェルノには本当は別の元ネタがあったのですが、更新が伸び伸びになった結果、シンゴジと被ってしまいましたw
ただあの映画のイメージを重ねて読んでいただけたとすれば、元の文章よりも迫力が少しだけアップしてるかもしれませんね。

一人で無理してしまうキャラはフレクロに付き物ですがw、マスカーの場合はかなり深刻な状況になっていきます。
次に文章化するエピソードは彼女がメインになって展開しますので、お楽しみに!

サプライズ的に登場したスピリットポリス、大変喜んでいただけたようで本当に何よりですw
グレイブに対するブレイブにように、未来にはキサナの系譜に連なる存在もいるはずだという考えがまずありました。
以前から我さんがキサナのバリエーション(別個体)を描かれていたことも少なからず影響してますね。
本国の警備任務が主なのでちょっと動かしにくいですが、またいずれ活躍の場を用意したいキャラクターです。

空魔神さんの超大作への恩返しも込めて最後に繋げてみました。
どちらも時間移動が絡む話なので、むしろ関連性がなければ不自然という気もしまして。
テレビ本編から映画にバトンするような感覚で楽しかったですw

シリーズ自体が番外編的なフレクロFですが、今後もゆるゆると続行していきますので、お付き合いいただけたらと思います!
コメントありがとうございました!!
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ヤネ

Author:ヤネ
フレクロF、今度はイニシャルWW編です。

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