クロスオーバー! フレッシュプリキュア!クロス†フューチャー 砂漠編・プロローグ

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フレッシュプリキュア!クロス†フューチャー 砂漠編・プロローグ



闇の中で緑の波がうねる。
暴風が木々を引きちぎらんばかりに吹き荒れ、恵みとなるはずの雨も矢のようになって枝葉を痛めつける。
白いブーツが水溜まりを蹴った。
闇を裂いた雷光に一瞬見えたのは、緑色のプリキュアの姿と、対峙する何者かの影。

「やあああああああああっ!!」
プリキュアが繰り出した渾身のパンチを、影は片手で受け止め、逆に弾き飛ばす。
「お前は俺には勝てない」
雷雨のさなかにありながら、それが発する声は乾いた威圧感をもって響いた。
「お前を倒すのは造作もないことだ」
「何を!」
再び白い閃光が周囲を包む。
プリキュアの見つめる先に、何本ものトゲに覆われた不気味な鉄仮面が浮かび上がった。
その人物がまとった白衣が、翼のようにばたばたと風に翻っている。
「引け! キュアウッド!」
どしゃりと音を立ててプリキュアの隣に巨大な白い獣が降り立った。
「シトラ? どうして!」
龍の頭と虎の体を持ち、人語を操る妖精シトラ。
歴戦の勇士であり、現在はキュアウッドの補佐を務める。
「こいつはデザトリアンとはわけが違う」
「わかってる。少しはやるみたい」
「ウッド、引くぞ」
シトラの声には切迫感があった。だが、ウッドの心はただ、前方にいる敵へと急いでいた。
「あんなこと言われて、尻尾を巻いて逃げろっていうの?」
「そうだ」
「嫌!!」
「ウッド! やめろっ!」
シトラの叫びを振り切って、ウッドは真っ直ぐに敵へと向かった。
嵐と一体になって夜の森を疾走する。
彼女の行く手、迎え撃つ鉄仮面の両手の指先から、青白く発光する毒針が射出された。
ウッドは足を止めることなく、両手をクロスして叫んだ。
「ウッドガーダー!」
彼女の両肩から光り輝く無数の葉が舞い散り、輪のように連なって主の周囲を回転する。
緑のエネルギーが結界を発生させ、襲い来る針を消滅させた。
「見たか! お前の攻撃こそ、私には通用しない!」
「……ならば、これはどうかな?」
鉄仮面の頭からトゲの一つが外れ、空中で伸縮・変形し、二又の槍となって右手に収まった。
「イ゛ヤアッ!」
裂帛の気合とともに投擲された槍が、風を切って結界に突き刺さる。
「う……!」
ウッドが両手の拳を握り締め、力を全開して対抗する。
わずかな静寂の後、結界はあえなく貫かれた。
「あああああああああああっ!?」
二又の槍はウッドの首を挟み込み、背後にそびえる大木の幹にはりつけた。
「もう一度言う。お前を倒すのは造作もないことだ。だが、俺の目的はそのさらに先にある」
身動きのとれないウッドに向かって歩を進めながら、鉄仮面が呟いた。
「俺の野望を完成させるために、お前の力をいただく……!」
鉄仮面がゆっくりと手をかざした時だった。
グルルルオオオオオオオオッ!!
獣の咆哮が森にこだました。
突如、鉄仮面の眼前に黒い影が現れたかと思うと、鋭い爪が白衣をえぐっていた。傷跡からジュッと白煙が上がる。
「むおっ!」
半透明の巨体が鉄仮面に覆い被さるように立っていた。
シトラの体毛が色を変化させ、森に溶け込んでいる。
さしもの強敵もこの奇襲には怯んだ。
「貴、様っ!」
「砂漠の使徒! 思うようにはさせん!」
「ぬかせ! 妖精ごときが!」
鉄仮面の手にもう一振りの槍が出現する。
ウッドは、おぼろげな意識の中でその光景を見ていた。
(シ……トラ……)
巨体を突き破り、天へと突き上げる槍の刃先。
シトラの断末魔が彼女を現実へ引き戻した。
「ああ!!」
槍の拘束をやっとのことで解き、ウッドはパートナーのもとへ走ろうとした。が、ぬかるみに足をとられ、泥の中に倒れ込む。
「シトラ!!」
横たわったシトラの体毛が白く戻っていく。それは、まるで死に装束を着せられたようでもあった。
やがて全身の色が失われ、肉体が砂のように崩れ落ちると、そこには猛々しい獣の骨格だけが残されていた。
ウッドは泥にまみれた姿で、愕然とそれを見ていた。
鉄仮面の人差し指から放たれた毒針を、胸に受けたことにすら気付かなかった。目の前の暗転が、針に含まれた神経毒によるものか、絶望によるものか、それすらもわからなかった……。
ウッドの変身が解け、変身アイテムが傍らに転がった。
鉄仮面はそれを拾い上げ、満足そうに見つめた。
「これでいい。……さて、こいつはどうしたものかな」
気を失った少女を見下ろし、仮面の奥の目が冷徹に光った。
吹き荒れる風は止む気配がなく、いっそう激しさを増しつつあった。

***

それから長い長い時が流れた。

照りつける太陽の下、熱気を孕んだ風が緑の丘を吹き抜けていく。
揺れる白詰草の花々の向こうに、真っ白な校舎が立っていた。
眼鏡をかけた実直そうな教師が、黒板の前で数学の解法を説明している。
読み取った音声を基に、彼の背後に次々と文字と図形が並んで表示されていく。
生徒たちは一心不乱にペンを動かし、机に備えつけられたディスプレイに板書内容を入力していく。
が、教室の片隅で頬杖をついた少女の意識には、その声も文字も、まったく入っていなかった。
彼女はただ窓の外を見つめていた。
青空を背景に、見事な形をした入道雲がそびえている。
その影の落ちるあたりの地平から、何者かが呼ぶ声が聞こえてくるように感じた。
教室の防音設備は完璧であり、校庭の木で鳴くセミの声すら生徒のもとには届かない。
しかし、彼女にだけは聞こえていた。
寄せては返し、返しては寄せる、海鳴りのような律動が。

「21番さん、よろしいですか」
耐えかねたように、教師がついに彼女を呼んだ。
あえて名前でなくクラスナンバーを口にしたのは、その言霊を本能的に恐れたからである。
正直に言えば、教師の側も彼女にはできるだけ関わりたくなかった。だが、生徒の全員が授業内容を入力していない場合、システムに指摘されて責任問題に発展するので、それはできなかった。
男の額には脂汗が滲み、声は哀れにも震えていた。
少女は、咎められたことを悪びれる様子もなく、彼に向かって言った。
「海はいいな」
黄金色に煌めく瞳に見つめられ、教師は目まいを覚えた。恐怖と快感が同時に身体を駆け巡ったためである。
純白の制服をまとった彼女の肌は、深海魚のようにヌラリとした淫靡な紫色で、その声は深淵から響くように蠱惑的だった。
美しい。それも、この世ならざる異形の誘惑に満ちた美貌であった。
真夏の昼下がり、のどかで気怠い教室の風景にはあまりにも似つかわしくない、毒々しい存在感を放つ彼女の名は、暗黒淵 王(やみわだ おう)といった――。


(プロローグ→チャプター1につづく)





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テーマ : プリキュア
ジャンル : アニメ・コミック

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更新お疲れ様です!

おぉお・・・短期のシリーズということで、序盤からすごい展開ですね!
キュアウッドちゃんの行く末も気になるところですが、王ちゃんが満を持しての登場というところで高鳴るものがあります!

システム化された未来な学校の世界観もいいですね! きっとなちるなら毎度寝てたりして起こられてそうなイメージも浮かんじゃったりしましたw

次回も楽しみにしております!更新お疲れ様でした(´∀`)

No title

いきなりの派手なバトルと敗北から始まったようでこの短編はウッドさんメインなのか・・・!と思ったところで王ちゃん登場でテンションやばいことになってます(^u^)エヒヒヒヒヒ

授業をスルーしてる王ちゃんだけど無自覚な新手の教師いじめですかこれはww設備のハイテク具合や困った時はナンバー呼びにラビリンスの名残を感じます。呼ばれた相手は妖しいカリスマで圧倒してるけどww・・・これだけのオーラで基本の顔立ちはイフちゃんっていうのが恐ろしい・・・w

次回も楽しみにしています!!(`・ω・´)

Re: 更新お疲れ様です!

>我さん

ハトプリがハードな描写多めなので、そっちに寄せてみました。ウッドの再登場は少し先になりそうです。
イフや王をはじめとした未来メンバーを一度自分の手で小説化してみたかったのですが、ようやく実現しましたw

あんまりシステム化しすぎてもディストピアSFじみてくるので、さじ加減が難しいですねw
アスハイの伸び伸びした未来観と衝突しないよう、教室の外には自然が広がっているという描写を心がけています。

コメントありがとうございました! 次回もお楽しみに!

Re: No title

>空魔神さん

ウッドはゲストキャラという立ち位置ですね。いきなり派手にやられていますが、後でちゃんと活躍する……はずですよw
王ちゃんの登場シーンは私も書いていてテンションが上がりますw

ちょっとサイバー化しすぎな気もしますが、ラビリンスの文化が入っている学校と考えればアリですよね。
王は魔人で女王様なので、ナチュラルに人をいじめちゃうところがあると思っていますw
でも、イフと正反対なようでいて、実は彼女の憧れを反映した存在が王なんじゃないかな?なんて思ったりもします。

コメントありがとうございました! 次回もお楽しみに!
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フレクロF、今度はイニシャルWW編です。

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