クロスオーバー! フレッシュプリキュア! クロス†オーバー 第11話

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フレッシュプリキュア! クロス†オーバー 第11話

四つ葉町総合病院。
額に汗を滲ませ、薄暗い廊下を小走りで抜けていく少女。
目当ての病室の前に着くと、一気に扉を開ける。

「……メイさん!」

控えめな音量でBGMが流れる室内。
振り付けをさらう手を止めて扉の方を向くラブ、美希、祈里。
肩で息をしながら、ベッドの上の三人を順番に見渡すメイ。
しばらくの間を置いて、我に返ったように言葉を紡ぎ出す。

「……みんなが、倒れて……病院に担ぎ込まれたって、聞いて……それで……」

糸が切れたようにへたり込む。

「……よかった……」

その背後で再び扉が開き、顔を覗かせるキサナ。

「大丈夫ですか? 皆さん」
「うん。メイさんもキサナちゃんも、ありがとう」
「ごめんね。心配かけちゃって」
「ちょっと休んだら、またダンスできるようになるよ」
「あかん!」

メイたちに向けてガッツポーズをするラブ。
その隣、ベッドの陰から飛び出すタルト。
小さな手でダンシングポッドのスイッチを切る。

「今日という今日は、はっきり言わしてもらうで!」
「なによ、タルト?」
「世界の危機なんや。……ダンスをやめて、どうかプリキュア一本に絞ってくれへんか?」

両手を合わせ、嘆願するタルト。
うつむくラブたち。

「ダンスとプリキュア、どちらかなんて選べないよ……」

ラブの言葉にうなずく美希、祈里。

「なんでや!?」

顔を上げ、笑顔でタルトに向き直るラブ。

「だって、あたしたちはもう両方選んでるんだもん」
「え……?」
「ダンスとプリキュア。両方選んだから、ミユキさんや、タルトとシフォンに出会ったんだよ。だから、毎日が幸せゲットなの。ね、美希たん、ブッキー!」
「ええ」
「うん!」
「せやけど、このままやったら……」
「私にまかせて」

乱れた髪を整えながら、ゆっくりと立ち上がるメイ。

「グレイブはん?」
「ダンス大会までの間、私がラビリンスとの戦いをサポートするよ」
「メイさん……」
「困った時は助け合おうって、約束したよね?」

ラブに向かって微笑んだ後、タルトの前にしゃがみ込むメイ。

「私がキイマジンと戦ってこれたのは、みんなの助けがあったからです。……だからほんの少しだけでも、その恩返しをさせてください」
「…………」

まっすぐなメイの瞳に、黙ってうなずくしかないタルト。



フレッシュプリキュア! クロス†オーバー
第11話『タルトとキサナの願いごと!』



病室を後にするメイとキサナ。
夕日が差し込む廊下を、並んで歩く。

「でもキサナ、本当にいいの? 正直、止められるかと思ったんだけど」
「確かに、ダークルンはまだ残っていますが……止めたって、聞くつもりはなかったでしょう?」
「まぁ、そうだけど」
「幸い、キュアグレイブの変身回数には若干の余裕がありますから。大会までの間なら、なんとかなるでしょう」
「……うん、ありがとう」

病院を出たところで、見覚えのある顔とすれ違うメイ。

「東……さん?」

数歩歩いたのち、互いに振り返るメイとせつな。

「メイ、久しぶりね」
「……東さんも、桃園さんたちのお見舞い?」
「ええ。その様子だと、大したことなかったみたいね」
「うん。ダンスの疲れが溜まってたみたい。……しばらくは、ゆっくりしてた方がよさそうだけど」
「メイも、体には気をつけてね。……そちらは、メイのお友達?」
「あ、え~~っと……」
「メイのいとこの、キサナと申します」

言葉に詰まるメイの横で澱み無く返答し、ぺこりとお辞儀するキサナ。

「私は東せつな。よろしくね」

せつなの胸でペンダントが揺れる。

「そのペンダント、可愛いですね」
「ありがとう。これ、ラブがくれたの。友情のあかしとして」

夕日を照り返して輝く、クローバー型のペンダント。

「ちょっと、うらやましいな。私も東さんみたいに、もっと桃園さんと仲良くできたらいいんだけど」
「できるわ。私たちだって、もう友達じゃない」
「……そっか、そうだったね」

微笑むせつなに、照れ笑いで返すメイ。

(くだらない……)

去っていくメイとキサナの背中を見つめ、口元を歪めるせつな。
ナキサケーべのカードを取り出し、見つめる。

(友情なんて、お前たちをあざむくための道具に過ぎない。……メビウス様のために生きることこそが、唯一絶対の真理なのだから)


***


メイの部屋。
真剣な表情で机に向かっているメイ。
白い紙に黙々と筆を走らせる。

「……できたっ!」
「“みんながダンスで幸せゲットできますように”……ああ、短冊ですか」
「そう。今宵は七夕! 週末のダンス大会に向けて、やれるだけのことはやっとかないとね」

あれから間もなく、退院したラブたちはレッスンを再開。
大会を目前にして、最終調整の段階に入っていた。

「名づけて、星に願いを大作戦!」
「名づけるほどのことですか。……それにしても字、ヘタですね」
「うっさいわい! 大事なのはハートだ、ハート!」

ベランダに出ると、手すりにくくりつけた笹に短冊を吊るすメイ。

「これでよし、っと」

メイの隣に並び、夜空を仰ぐキサナ。

「……曇ってしまいましたね」
「へーきへーき。雲の上はいつも晴れ、って言うしね。……そうだ、キサナも願いごと書いてみたら? せっかくだしさ」

わずかにうつむいて、首を横に振るキサナ。

「私の願いごとは、きっとメイが叶えてくれますから」
「……え?」
「キュアグレイブは、みんなの願いを叶える一番星なんです」

手すりに置かれたメイの手に、キサナの手が重なる。

「私は、メイに出会えてよかった。……幸せ、です」

夜風が笹を揺らし、サワサワと音を立てる。
雲が流れ、星の光が空に散らばる。

「……キサナ?」

寂しげな横顔に、メイの胸がざわめく。
次の瞬間、それを打ち消すように笑顔を見せるキサナ。

「ダークルンはあと二体。ですが、グレイブの変身回数も残りわずかです。気を抜かずに頑張りましょう」
「……うん!」

肩を寄せ合い、雲間の星を見上げる二人。
……その頃、同じ夜空を見上げて、独り決意を固める者がいた。

「グレイブはんの気持ちは嬉しい。せやけど、いつまでも頼ることはできへん。……やっぱり、わいがなんとかせな、あかん」


***


数日後、ダンス大会当日。
会場に向かうメイとキサナ。

「うぉ……私まで緊張してきちゃったよ、まいったなぁ」
「しっかりしてくださいよ。応援する側がそれじゃ――」

言いかけて、キサナの歩みが止まる。

「どうしたの?」
「……ダークルン反応……」
「そんな、こんな真っ昼間から!?」

キサナの両目は、反応を示す紫色に輝いている。

「おそらく、昼行性のダークルン。イニシャルPです」
「もうすぐ本番が始まるっていうのに……!」

リングルンの反応を確かめながら、走り出すメイ。

「キサナは先に会場へ行ってて!」
「メイ!」
「大丈夫。本番には間に合わせる!」

メイの後ろ姿を見つめるキサナの視界の隅に、奇妙な物が映る。

「……?」

植木の向こうの側の道を、トランクが独りで走っている。
……いや、植木の陰に隠れてはいるが、小動物がトランクを引いている。

「あれは……」


***


「みんな、堪忍な……。でも、こうでもしないと諦めてくれへんやろ?」

トランクを引きながら、自分に言い聞かせるように呟くタルト。
唐突に蓋が開き、中に詰まっていたラブたちの衣装が飛び出す。

「キュア~~♪」
「シフォン!? トランクの中で寝とったんかいな!」
「プリップ~~!」

シフォンの額が光り、宙を舞う衣装。

「あぁ! 何すんねん、シフォン!」

道に散らばった衣装を、必死で拾い集めるタルト。

「これは大事な、大事な……!」

一際遠くまで飛ばされてしまった一枚を、タルトに代わって拾い上げる手。

「そうですよね」
「あ……」
「これがどれだけ大事なものか、あなたはよく知っているはずです」

衣装についた砂埃を払い、タルトに微笑みかけるキサナ。

「キサナ……はん……」


***


(ダークルンが、急に……動き出した?)

急速に移動を始めた反応に、足を速めるメイ。

(何だ、こいつ……どこに向かって……?)

「キサナはんの言う通りや。ダンスがあの三人にとってどれだけ大事かって、わいにはよくわかってるんや」

ベンチに腰掛けたキサナの膝の上で、ぽつりぽつりと語り始めるタルト。

「でもわい、三人にプリキュアを続けてほしい。みんなと一緒に、頑張っていきたいんや……」

大きな瞳が潤み、大粒の涙がこぼれ落ちる。

「わい、ピーチはんたちと会うてから、毎日毎日、えらい楽しくて……」

次々と落ちる雫が、セーラー服のスカートに小さな点を描いていく。

「同じですね」
「……へ?」
「私も、メイと出会ってから毎日がとっても楽しいんです」

タルトの頭を優しく撫でながら、遠くを見つめるキサナ。

「私はメイに、プリキュアとして戦ってくれることを願いました。……でも、戦い続けることを選んだのはメイ自身。それは、他のプリキュアも同じはずです」
「……!」

『ダンスとプリキュア。両方選んだから、ミユキさんや、タルトとシフォンに出会ったんだよ』

病室でのラブの言葉が、タルトの胸に蘇る。

「私たちはあの子たちの選択を信じて、応援してきました。……それは、これからも変わらない」
「……そやったな……」

膝から飛び降り、両手で己の頬を張るタルト。

「ダンスをやるのも、プリキュアをやるのも、選ぶのはピーチはんたちや。わいやない!」
「急ぎましょう。今ならまだ、間に合います」
「みんな、今行くで!」

トランクを押して走り出すタルト。
後を追ってベンチから立ち上がるキサナ。
その両目が紫色に輝き出す。

「!」
「……キサナはん?」
「ダークルンが、こちらへ接近してきます……!」
「なんやて!?」
「このスピード……異常です。一体、何故……?」

周囲にダークルンを誘引する存在を探すキサナ。
さまよう視線が、飛び回るシフォンに止まる。

「キュア?」
「……まさか!」
「どうしたんや、キサナはん!?」
「タルトさん、シフォンを連れて逃げてください。ダークルンが狙っているのは、おそらく――」

植木を突き抜けて飛び出し、トランクに一体化するイニシャルP。
黒い塊となり、みるみるうちに巨大化するキイマジン。
その体が前後へ真っ二つに開き、天を向いた紅い口が現れる。

『キィィィィィィィィ!!』

顎に張り付いた四つの目が、シフォンを捉える。

「タルトさん、早く!」
「あかん! キサナはんも一緒に逃げるんや!」
「いえ、キイマジンは私が食い止めます」
「な、何を言うんや!?」
『キィィィィィ!』

キサナたちに向かって腕を振り下ろすキイマジン。

「わぁぁぁ―――――っ!!」

顔を伏せ、叫ぶタルト。
次の瞬間。
キサナの手から黒い光の波動が発生し、障壁となってキイマジンの腕をはね返す。

「!?」
「……逃げてください」

キサナの両目に十字の紋章が浮かび上がり、長い髪がザワザワと波打つ。
紫色のオーラを纏い、全身が陽炎のように揺らめく。

「キュア……キュア~~~~!!」

泣き出したシフォンを背負い、ラブたちのもとへ急ぐタルト。

(何や、今の力……まるで……いや、そんなわけあらへん。シフォンが怖がっとるのは、キイマジンや。そうに決まっとる!)

一瞬よぎった得体の知れない悪寒を振り払うように、スピードを上げる。

「このぉぉぉぉぉっ!」

斜め後方からの飛び蹴りが炸裂し、キイマジンの体を吹き飛ばす。
マフラーを翻して降り立つグレイブ。

「遅くなってごめん。キサナ、大丈夫?」
「……ええ……」

額に滲んだ汗をぬぐい、弱々しい声で答えるキサナ。

「来い、イニシャルP……パンドラ!」
『キィィィィィ!』

両腕を振り上げ、威嚇するパンドラ。
グレイブの背後に下がったキサナの両目が、今度は赤く光り始める。

「これは……この反応は……!」
「ダンス大会を潰すために来てみれば、これはまたとない機会だな」
「イース!?」

吹き抜ける風とともに、姿を現すイース。

「我が名はイース……全ては、メビウス様のために!」

イースが投げたカードが、パンドラの体に張り付く。

『グッ……ギャアアアアアアッ!!』
「そんな!?」

パンドラの全身にどす黒い渦が巻き、瘴気が立ち上る。
巨大な単眼が胴に描き出され、それと同じ紋様……イースの手の甲に浮かんだ“契約の証”から、死の茨が伸びる。

「ぐ……うっ……あ」

激痛と嫌悪感を押し殺し、新たな下僕の名を叫ぶイース。

「我に仕えよ……ナキサケーべ・ダークネスッ!!」
『グギャアアアアアアアアア!!』

耳をつんざく咆哮とともに、ナキサケーべの口から黒い球体が吐き出される。
空中で数倍の大きさに膨れ上がり、グレイブ目がけて落下する球体。

「そんなもの!」

避けるグレイブを追って、新たに吐き出される球体が次々と地面に大穴を開ける。

「……もう弾切れか?」

十数個の球体を放ち、沈黙するナキサケーべ。

「なら、今度はこっちの……」

反撃に転じようとしたグレイブの足元。
地面に亀裂が走り、瞬く間に地割れが起こる。

「なっ!?」

裂けた大地の底から、這い上がる亡者の群れ。

「フフフ……ハハハハハ」

脂汗を垂らしながら、狂気を孕んだ表情で笑うイース。

「キュアグレイブを地獄へ……引きずり込めぇっ!!」

球体の中から現れるナケワメーケ。
……その数、12体。

「プリキュアが倒したナケワメーケを、再生した……!?」
「全ては、メビウス様の願いのために!!」


***


遠く離れた場所から、戦いを見守る赤い妖精。
そこへ、息を切らせて走ってくるキサナ。

「やっと会えましたね。……四体目の、ピックルン」

目を赤く輝かせながら、ピックルンへ手を伸ばす。

「今こそ、あなたの力が必要なのです。最後のプリキュアを、覚醒させる時が来たのです」
『キィ……』

首を横に振る、赤いピックルン。

「“それは、できない”……何故です!?」
『キィ、キィ』
「“選ばれた者が、邪悪な力の呪縛から解き放たれない限り”……?」

光を放ち、姿を消すピックルン。

「待ってください! それは、どういう……!?」


***


「願いのため、か……」

グレイブを包囲する再生ナケワメーケ。

「なら私も、みんなの願いのためにお前たちを倒す!」
「行け! ナケワメーケ・リバース!!」
「来い。お前たち全員、墓の下に送り返してやる!!」

イースの命令を受け、12体のナケワメーケが一斉にグレイブへ殺到する。

『ボーン!』
「ハアアッ!」

先陣を切って飛びかかった骸骨ナケワメーケの顔面に、音速のカウンターパンチが見舞われる。

『ナケッ!』
『ワメーケェ!』
『ガッシャン!』

グレイブ目がけて各々の武器を発射する自販機、黒板、スロットナケワメーケ。
骸骨ナケワメーケの体を盾にし、飛び道具の雨を切り抜けるグレイブ。

「そっちがそう来るなら……」

放り投げた骸骨ナケワメーケを追ってジャンプし、その胴に渾身の蹴りを叩き込む。

「これでお返しさせてもらうっ!」

バラバラになった骨が散弾のように放たれ、三体のナケワメーケを薙ぎ払う。

『ノビノービィ!』
『アクショォン!』
『ウィッグゥ!』

グレイブの背後から触手を伸ばす水飴、撮影機材、カツラナケワメーケ。

「グレイブスラッシュ……アンド ソニック!」

振り向き様の一瞬。
グレイブの左手に発生した不可視の刃がナケワメーケの触手を次元ごと寸断し、右手からの衝撃波が本体をまとめて吹き飛ばす。

『チック……タック!』
「!?」

時計ナケワメーケの振り子が光り、グレイブの体を静止させる。

「くっ……」
『イイカゲンニ、シロクロ――ッ!』

そこを狙い、パンダナケワメーケの巨腕が容赦無く襲いかかる。

「大気反転!」

フィールドを緊急展開し、特殊空間に逃れるグレイブ。
すぐさまパンダナケワメーケの頭上に転移し、落下速度を乗せたトンファーを脳天に打ち込む。

『メガ、シロクロ……』

ゆっくりと崩れ落ちる巨体。

『チック……』
「させるか!」

振り子が光るが早いか、投擲されたトンファーが時計ナケワメーケの胴体を直撃し、怯んだ顔面をグレイブの飛び膝蹴りが捉える。

『チュリーッス!』
『チェリーッス!』

グレイブの左右から迫るチューリップ、桜ナケワメーケ。

「グレイブバリヤー!」

グレイブの体がコマのように高速回転し、ミラージュマフラーが紅い障壁となってナケワメーケを弾き飛ばす。

「やるな、キュアグレイブ。……だが」

グレイブの眼前に、天を突いてそびえ立つ電波塔ナケワメーケ。

「たった一人で、こいつには敵うまい!」


***


一方その頃、ダンス大会会場。
消えた衣装を探し回るラブたち。

「一体、どこ行っちゃったんだろ?」
「ねぇ……さっきから外、騒がしくない?」
「そういえば……」
「みんな~~~~!」

三人のもとへ走ってくるタルト。

「大変や!」
「こっちも大変なんだよぉ。あたしたちの衣装がなくなっちゃって」
「……わいが持ち出したんや」
「えぇ!?」
「タルトちゃんが……?」
「謝って済むことやない。けど今は、それよりも……」
「みんな、大変よ!」

背後からの声に、振り向くラブたち。

「ミユキさん!」
「すぐ近くに、怪物が現れたらしいの。……残念だけど、大会は中止になるわ。みんな、早く逃げて!」
「ミユキさん、あの……」
「そっちは危ないわ! 怪物がすぐそこまで来てるのよ!」

ラブの手を掴むミユキ。

「黒いプリキュアが、たった一人で戦っているらしいんだけど……いつまでもつか、わからないわ」
「……黒い、プリキュア……!」
「まさか!」

無言で交わる三人の視線。

「ミユキさん。……わたしたち、行かなくちゃならないんです」
「祈里ちゃん……?」
「あたしたちの友達が、たった一人で戦っているから」
「美希ちゃん!?」
「……あたしたち……プリキュアだから!」
「!??」

ラブの言葉に、自分の耳を疑うミユキ。

「ラブ……ちゃん……?」

ミユキに背を向け、走り出す三人。

「今の言葉、本当のことやで」
「え……!?」
「あの三人は、ずっと戦い続けてきたんや。プリキュアとして。そして、クローバーとして」
「そんな……あの子たちが、プリキュアだったなんて……」

ラブたちとの記憶が、ミユキの胸に去来する。
どんなに厳しいレッスンを課しても、屈託の無い笑顔で応えてくれた三人。
……その陰で、彼女たちが背負ってきたもの。

「私、何も知らずに、みんなに無理をさせて……」
「それは違う。ミユキはんのレッスンが、応援が、プリキュアの力になったんや!」
「……私がプリキュアの、力に……?」
「そや! だからプリキュアは、どんな敵が相手でも負けずに戦ってこれたんや!」

どんなに失敗しても、めげずにダンスを続けるラブたち。
どんなに倒れても、みんなの幸せを守るために立ち上がるプリキュア。
ミユキの中で、両者の姿が重なり合う。

「……わかったわ。今、私がするべきこと。あの子たちにしてあげられることが、なにか」

ありったけの声を絞り、三人へ呼びかけるミユキ。

「頑張れ、プリキュア!!」
「ミユキさん……」

最高の援護を背に、リンクルンを構える三人。

「「「チェインジ・プリキュア!!」」」


***


『オン・エア――ッ!!』

地響きを立てて迫るナケワメーケを前に、身動き一つしないグレイブ。
その背中で揺らめくマフラーが小さく萎み、やがて消滅する。

「フフ……どうした、諦めたか?」
「……ハァァァァァ……」

エネルギーマフラーを取り込んだグレイブの黒い体が、紅蓮に燃え上がる。

「何っ!?」
「でやあああああああああっ!!」

ジャンプ一閃、炎を纏った流れ星が天空へ駆け上る。

「せいっ!!」

真紅の拳が電波塔ナケワメーケの眉間に叩き込まれる。
空間を歪めるほどの衝撃波が走り、ナケワメーケの全身からグレイブのエネルギーがマグマのように噴出する。

「ビート・ア―――ップ!!」

空中でミドルンを召喚し、マスカーへとバージョンアップするグレイブ。
マスクドトンファーの生成と同時に、マニューバーモードを起動する。

「マニューバーZ!!」

イニシャルZ・ゾディアックの力を利用した質量分身。
12人のキュアグレイブ・マスカーが、地上に並んだナケワメーケに向けて一斉に両手のトンファーを構える。

「何だと……っ!?」
「「「「「「「「「「「「プリキュア・イングレイブスター……」」」」」」」」」」」」

全身を光で包む12人のキュアグレイブ・マスカー。
イースの頭上、空一面に描き出される星座。

「「「「「「「「「「「「フレ―――――――――ッシュッ!!」」」」」」」」」」」」

まさに流星雨。
天下った12の星が、全てのナケワメーケを貫通した。

『『『『『『『『『『『『『シュワ……シュワ……』』』』』』』』』』』』

光の十字架、12の墓標となって消滅するナケワメーケたち。
分身が重なり合い、一つとなって舞い降りる。
マスカーを解除し、片膝をつくグレイブ。

「ハァ……ハァ……」

しゃがんだままトンファーを構え、ナキサケーべを見据える。

「残りはこいつだけ!」
「……ハハハ……アハハハハハ!」
「!?」

苦痛に身をよじらせながら、歪んだ表情で笑い続けるイース。

「お前の……負けだっ!」
『グオオオオゥ……ギャアアアアッ!!』

ナキサケーべの口から新たに放たれる球体。

「そんな!?」

避けきれずに吹き飛ばされるグレイブ。
地面にめり込んだ球体が割れ、現れるアンプナケワメーケ。

『ナケワメーケッ!』
「ぐ……っ」

必死で立ち上がろうとするグレイブの左右に、新たに二個目、三個目の球体が落下する。
内部から次々と生まれるナケワメーケ。

『フシチョーッ!』
『パパンガーッ!』
「このっ!」

トンファーの一撃を喰らい、砕け散る不死鳥ナケワメーケ。
だが、すぐさま復活してグレイブに襲いかかる。

『マタフシチョーッ!』
「あうっ!」

翼で弾き飛ばされたグレイブを、サンドイッチナケワメーケが挟み込む。

『パパンガパ―――ン!』
「う……くっ!」

身動きできないグレイブに向かって、超音波を浴びせかけるアンプナケワメーケ。

『ナッケワメーケ!』
「あぐっ……うあああああああっ!!」

もがき苦しむグレイブの姿を見て、愉悦に浸るイース。

「そうだ。もっと泣け、叫べ……そして、地獄へ堕ちろ!」
「そうはさせない!」
「っ!?」

矢のように降り注いだキュアベリーのキックがサンドイッチナケワメーケに炸裂し、グレイブを救出する。
駆けつけたキュアパインのパンチを喰らい、粉々になる不死鳥ナケワメーケ。

『ナケッ!?』
「プリキュア・ラブ・サンシャイン!!」

キュアピーチの必殺技がアンプナケワメーケを無に還す。
傷ついたグレイブに駆け寄る三人。

「グレイブ、しっかりして!」
「ごめんね、一人で戦わせて」
「……私、ダンス大会を……みんなの願いを、守れなかった」

きつく握り締められたグレイブの拳を包み込むように、ピーチたちの手が優しく添えられる。

「大丈夫だよ。どんな不幸が立ちはだかっても」
「あたしたち、絶対にくじけないわ」
「応援してくれる、みんなの願いがある限り!」

ナキサケーべと対峙する四人のプリキュア。

「ようやく……全員揃ったか……」
『グオオオオオオオッ!!』

ナキサケーべの咆哮とともに、イースの全身に伸びていく茨。

「ぐああああああっ!」
「あの子……?」

イースの異常に気づくピーチ。

「苦しんでる……?」
『いけない!』
「キサナ!?」

リングルンとリンクルンを通じ、四人に語りかけるキサナ。

『あの化け物を操り、再生ナケワメーケを生み出す力の源になっているのは……彼女の生命そのものです!』
「なんだって!?」
「じゃあ、イースは……」
『このままだと、間違いなく命を落とします』

イースの命を吸い、さらに巨大化するナキサケーべ。

「そうだ……プリキュアを倒せ!!」
「もうやめて! どうして、こんなことをするの!?」
「メビウス様の……ご命令だからだ……」
「!?」
「メビウス様の願いを叶えるためなら……この命が、どうなろうとも……っ!」

茨に全身を締めつけられ、両膝をつくイース。

「ああああああああああっ!!」
『グオオオオオオオオオッ!!』

イースとシンクロし、絶叫するナキサケーべ。
体のあちこちから負のエネルギー、黒い混沌が溢れ出す。

「暴走してるの!?」
『一時的に、制御不能に陥っているようです』
「ロックブレイクするなら……今しかないか」
「みんな、行くよ!」

キュアスティックとグレイブトンファーを手に、ピーチの号令で走り出す四人。
行く手に立ちはだかる二体のナケワメーケ。

『マタマタフシチョーッ!』
『パパン! パン!』
「一度倒した相手なんかに……」
「負けるわたしたちじゃないわ!」

二体の攻撃を難なくかわし、同時にスティックを発動するベリーとパイン。

「プリキュア・エスポワールシャワー……」
「プリキュア・ヒーリングプレアー……」
「「フレ―――――ッシュッ!!」」

二色の光が、螺旋を描いてナケワメーケに命中する。

『『シュワ……シュワ……』』

希望と祈りの二重奏の前に、浄化消滅するナケワメーケ。

「ヤアッ!」
「ハアッ!」

ピーチのキックで仰け反ったナキサケーべの腹に、グレイブのトンファーが突き刺さる。

「……ロックブレイク!!」
『グギャアアアアアアアアア!!』

体を崩壊させながら、なおも絶叫するナキサケーべ。

「プリキュア・ラブサンシャイン……」

その苦しみから解き放つように、トドメの一撃を奏でるピーチロッド。

「フレ―――――ッシュッ!!」
『グオオ……オオ……オ』

光の中に消えるナキサケーべ、塵と化すカード。
契約の証が消え、腐り落ちる死の茨。
呆然と立ち尽くすイースに、ゆっくりと歩み寄るグレイブ。

「これで、わかっただろ。あなたたちがどんな手段を使おうと、絆で結ばれたプリキュアには決して勝てない。だから、もう――」
「黙れっ! 黙れ、黙れっ!」

グレイブの言葉をさえぎり、ふらふらと後ずさるイース。

「何が絆だ。何が友情だ。そんなもの、全てまやかしに過ぎないことを……教えてやる!!」

苦しみと憎しみを吐き出すような声を上げ、両手を合わせる。

「スイッチ・オーバー!」

四人のプリキュアの前で、四つ葉のクローバーが揺れた。

「え……?」

ペンダントを首から下げた東せつなが、そこに立っていた。

「東……さん?」
「どうして、せつなが……?」

静寂の中、引き千切られたペンダントが小さな音を立てて地面に落ちる。

「せつなさんが、ラビリンス……!?」
「あたしたちの、敵……!」
「嘘……嘘だよ」

晒された事実を、懸命に拒絶するピーチ。

「せつなは私の、友達で……」
「全てはまやかし。今、お前が見ているもの……それが唯一の真実だ」

ピーチの胸を駆け巡る、東せつなと過ごした数々の思い出。
その全てが今、否定された。

「……嘘……」

力無く呟いたピーチの目の前で、せつなの足がペンダントを踏みつける。

「我が名はイース……ラビリンス総統、メビウス様がしもべ」

無残に砕け散る友情のあかし。
それはせつなに向けたラブの真心であり、せつなにとっての偽りそのものだった。
砕かれた虚構、突きつけられた真実。
最後のプリキュアの誕生へと、全ての運命が集束を始めようとしていた。





つづく



******


イース、最期の日。
悲しみと憎しみとがぶつかり合うその先に、幸せは生まれるのか?

次回、フレッシュプリキュア! クロス†オーバー
第12話『イース対グレイブ! キュアパッション誕生!!』

お楽しみに!





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テーマ : プリキュア
ジャンル : アニメ・コミック

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No title

熱い!熱いぞ!!もう熱すぎてエアコンつけた!
インフィニティを狙ってきたダークルンをナキサケーベ化…ナケワメーケ復活…すごいですね
しかしキサナは一体何者なんでしょう
次回はついにパッション登場しそろそろこの物語も終盤へと向かうのでしょうか
ダークルンは残り1体。
倒した後はどうなるんでしょうか
次回に期待しつつ今回はこのくらいで…

No title

ただでさえ濃いアニメ21話と22話をひとまとめ。
そのうえキサナのエピソードやら再生ナケワメーケ軍団やらをネジ込んだ結果、大変なことに(^^;

大好きな原作を尊重しつつ、かといって丸写しでは意味が無いので、その辺のバランスがとても難しく、また最も楽しいところでもあります。

次回も重いので、書き上げるまで多少時間がかかってしまうかもしれませんが、楽しみに待っていてください。

まさにてんこ盛り感覚!

今までのクロスオーバーの中で、これだけてんこ盛りのエピソードがあったのか!?
というぐらいの激しさでした。そしてそれを受けて、次回はいよいよパッション誕生回。
どんな形でブレイブと「クロスオーバー」していくか、今から楽しみにしております。

No title

アニメで描かれたタルト、ミユキ、プリキュア、イースという四者四様の視点。
ここにメイとキサナの二人を追加するわけですから、もうそれだけでギリギリ、表面張力プレイですよ。
今後こんな無茶はできるだけ控えたいものですね。
次回はもうちょっと落ち着いた展開になると思います。
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ヤネ

Author:ヤネ
フレクロF、今度はイニシャルWW編です。

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