クロスオーバー! フレッシュプリキュア! クロス†オーバー 第12話
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フレッシュプリキュア! クロス†オーバー 第12話

町外れの森の占い館。
長い廊下ですれ違う、二つの影。

「どこへ行くんだい?」
「……プリキュアの所だ」

振り返って問いかけるサウラーに、背を向けたまま答えるせつな。

「やつらに正体を明かしたそうじゃないか? わざわざ出向かずとも、プリキュアの方からこちらにやって来るさ。……まぁ、どうせこの館まではたどり着けないだろうけどね」

肩を震わせて嘲笑するサウラー。
無言のまま、廊下の先を見つめ続けるせつな。

「……イース?」
「先程、クラインから手紙が届いた」

小さく、しかし確かな声で呟くせつな。

「そうか。……なるほどね」
「この手で決着をつけに行く。メビウス様のために」

短く言い放つと、再び前へ進んでいく。

「君のためにも……かい?」
「…………」

止まる足、一瞬の沈黙。

「世話になった。ウエスターにも伝えてくれ」
「……ああ、わかったよ」

廊下の闇へ消えていくせつな。
その後ろ姿を、哀れみとも蔑みともつかない表情で見送るサウラー。



フレッシュプリキュア! クロス†オーバー
第12話『イース対グレイブ! キュアパッション誕生!!』



町を目指して、木漏れ日の中を歩くせつな。
その前方に現れる人影。

「……!」

黒い衣装で身を包んだその姿は、彼女を迎えに来た死神のようにも見える。

「元気そうだね、東せつな」
「……黒須メイ」


***


部屋のベッドに横になり、じっと窓の外を見つめているラブ。
真っ青な夏の空、ゆっくりと流れていく雲。
そこに、失われた大切なものを描き出すかのように。

「ラブ、入るわよ」

返事を待たず、部屋の扉を開ける美希。
後に続いて入ってくる祈里、タルト、シフォン。

「せつながイースだったってことは、ラビリンスはあの占い館にいるはず。……行くわよ。これ以上、人々を不幸な目に合わせないためにも」
「…………」

美希の言葉を避けるように、枕で顔を覆うラブ。

「ピーチはん……」
「ラブ、起きて。起きなさい!」

涙をたたえたラブの両目が、枕越しに美希を見つめる。

「せつなが敵だったと知って、ショックなのはわかるけど……あたしたちはプリキュアよ? しっかりしてよ!」

静まり返った室内に、美希の声だけが響く。

「ラブ……ねえ、聞いて。あの子は、せつなはイースだったの。せつななんて子は、もともといなかったのよ!」
「……美希ちゃん!」

思わず、横から美希の言葉を制する祈里。

「……なに言ってるの、美希たん……」
「!」

震える声に、僅かに美希の表情が揺らぐ。

「なんでそんなこと……せつなが、いなかったなんて」

ゆっくりと身体を起こすラブ。
うつむいたまま、両手で顔を覆う。

「なんでそんなひどいこと、言うの……」

指の合間から零れ落ちる雫。

「ラブ……」

静寂を切り裂いて、鳴り響くリンクルン。

『プリキュアの皆さん!』
「キサナ!?」
「キサナちゃん!?」

三人のもとへ、同時に届くキサナの声。

『メイが、一人で森の館へ向かいました』
「なんですって!?」

その言葉に、顔を伏せたまま微かに反応するラブ。

『ラビリンスと、決着をつけると……』
「一人でなんて、危険過ぎるわ!」
『それだけではありません。蓄積されたダメージのせいで……リングルンはいつ故障、暴走するかわからない状態なのです』
「ちょっとそれ、本当なの!?」
「早く、わたしたちも行かなくちゃ!」
「ええ」

ベッドに腰掛け、泣き続けるラブ。
正面に腰を落とし、その顔を覗き込む美希。

「……最後にもう一つだけ言っておくわ、ラブ」

今、自分がラブを泣かせている。
聞きたくない言葉をぶつけ、苦しめている。
その事実、そうしている自分自身を責めたくなる気持ちを押し殺し、ゆっくりと言葉を続ける。

「ここで寝ていても、何も始まらないわ。……あたしはラブに、後悔だけはしてほしくないって思ってる。それだけよ。あとは自分で、決めなさい」

立ち上がり、部屋を出て行く美希。
シフォンを背負って追いかけるタルト。
後ろ手でドアを閉じかけて、立ち止まる祈里。

「うまく言えないけど……」

手にしたリンクルンを見つめながら、ラブに語りかける。

「せつなさんはラブちゃんを待ってる。きっと心の中では、ラブちゃんを信じてる。……そんな気がするの」
「…………」
「だから、ラブちゃんも自分を信じて。自分の、正直な気持ちを……」

閉じられるドア。
次第に遠ざかっていく足音。

「美希たん……ブッキー……」


***


湿り気を帯びた風が黒雲を運び、晴れ間を埋めていく。
薄暗くなり始めた森の中で、静かに向かい合う二人の少女。

「私は心のどこかで、あなたを信じていた。いつかは手を取り合える日が来ると、そんな夢を描いていたのかもしれない。……でも」

血が滲むほどに、両の拳を握り締めるメイ。
激しい怒りに震える声。

「桃園さんは純粋に、まっすぐに、あなたの幸せを願っていたのに……なのに」
「我々ラビリンスの幸せとは、メビウス様のお役に立つこと。それだけだ」

あくまでも冷徹に、メイの感情を跳ね除けるせつな。

「桃園さんの気持ちを利用して……ダンス大会まで台無しにして」
「だから、そのための障害を排除する。お前たち、プリキュアをな」
「許せない……あなたを許すわけには、いかない」
「来い。私が存在する意味……その全てを賭けて」
「あなたを」
「お前を」

同時に変身の態勢を取る二人。

「「倒す!!」」

キーを挿してリングルンを起動、特殊空間を展開するメイ。

「チェインジ・プリキュア!」

両手を組み合わせて回路を形成し、ラビリンスのネットワークから戦闘用データをインストールするせつな。

「スイッチ……!」
「クロス!」

両腕を翼のように伸ばし、次元の地平を描く二人。

「「オーバー!!」」


***


町外れの森へ急ぐ美希たちに、キサナが合流する。

「本当に手がかかる子ね、メイも!」
「……メイは怒っているんです。今までずっとピーチさんを騙していた、イースに」
「だからって、自分の命を粗末にするようなこと……あたしたちがさせないわ」

木々に囲まれた道を走る一行。
その前に、立ちはだかる二つの影。

「館をお探しかい?」
「!」

不敵な笑みを浮かべて美希たちを出迎える、サウラーとウエスター。

「サウラー!?」
「ウエスターまで!」
「フハハハ……お前たちがやって来ると思って、すでに館は隠させてもらったぞ!」

周囲を見回し、イースの姿が無いことに気づく美希。

「イースは……メイはどうしたの!?」
「さあね。それより君たちは、まず自分の心配をするべきじゃないのかな?」
「望み通り、今日で終わりにしてやろう! 喜べ、プリキュア!!」
「くっ……ブッキー!」
「うん!」

リンクルンを構える美希と祈里。


***


どす黒く塗り潰された空から、絶え間無く滴り落ちる雫。
冷たい雨が降りしきる中、死闘を繰り広げる二人の黒い戦士。

「「ハアアアアアッ!!」」

正面からぶつかり合う拳と拳。
衝撃波が、周囲の雨粒を空気ごと吹き飛ばす。
空間の震動による一瞬の真空状態を経て、竜巻のような暴風が吹き荒れる。
その中心部で、激しく打ち合う両者。

「うおおおっ!」
「ハアアッ!」

グレイブの左腕にはめられたリングルンがショートし、紅い稲妻を吐き出す。
装衣を通して全身を駆け巡る、鋭い痛み。

「ぐ……!」

生じた隙を狙って、イースの蹴りがグレイブの顔面を襲う。
紙一重で避け、距離を取るグレイブ。

「どうした、武器やフィールドは使わないのか?」

態勢を整え、イースを睨みつける。

「……必要無い。お前は、この両手だけで十分だ」
「そうか。なら、やってみせろッ!!」

地面を滑るようにしてグレイブの懐に飛び込み、パンチの連打を浴びせかけるイース。

「ヤアアアアッ!!」
「……くっ!」

音速を超えた連撃を、辛うじて両手で捌いていくグレイブ。

「笑わせるな。避けるだけで精一杯か?」

イースの攻撃に押され、徐々に後退していく。

「……さて、それは」

唐突にガードを解き、イースの拳に身体を晒すグレイブ。

「っ!?」
「どうかな……?」

イースの拳撃が、真正面からグレイブの胸を捉える。
鈍く重い衝撃音。

「な……っ」

予想外の行動に、怯むイース。
打ち込まれた腕を、すかさずグレイブの両手が掴む。

「おおおおおおおおおおおっ!!」

肩が抜ける程の速度で、ハンマー投げのようにイースの身体を振り回すグレイブ。
水平回転によってミラージュマフラーが渦を巻き、真紅の旋風を生み出す。

「……でやああっ!!」

トドメの縦回転、渾身の力でイースを大地に叩きつけるグレイブ。
轟音とともに半径数メートルの地面が蜘蛛の巣状に爆裂し、土砂と岩石が天高く舞い上がる。


***


「あたし、どうしたらいいんだろう……」

暗い部屋に一人、ベッドの上で両膝を抱えるラブ。
と、さざ波のような小さな音が、窓の外から響いてくる。

「……雨……?」

窓ガラスに当たって水滴となり、やがて流れ落ちる雨。
その情景が、ラブの記憶を刺激する。

「……せつな?」

ナキサケーべを操り、人々を不幸に陥れようとしたイース。
総統メビウスの命令のためなら、どんな犠牲も厭わない。
たとえそれが、自分の命でも……。

「……違う」

流れ落ちた小さな雫を、ラブは見逃さなかった。

「せつなは、泣いていたんだ」

死の茨に蝕まれながら、イースが流した涙。
それは、彼女自身が不幸に囚われていることの証明。
それは、彼女自身が幸せを求めて苦しみ、喘いでいることのあかし。

「泣き叫んでいたのは……せつなの心だったんだ」

ゆっくりと立ち上がるラブ。

「側に、いてあげなくちゃ」

リンクルンを掴み、勢いよくドアを開けて部屋を飛び出すラブ。

(あたしはせつなに、友達だって言ったんだ。……それは、嘘じゃない。嘘にしちゃ……いけないんだ!!)


***


「きゃあああ!?」
「どうした! プリキュア―――ッ!!」

ウエスターの圧倒的なパワーの前に、成す術も無く地面を転がるパイン。
一方では、ベリーがサウラーのスピードに翻弄されていた。

「以前よりは、強くなっているようだけどね」
「その程度では、俺たちを倒すなど無理だな! フハハハハハ!!」
「……このっ!」

サウラーに向かって拳を振りかぶるベリー。

「ふっ。無駄だというのに」

身を引いて間合いを空け、余裕の表情でカウンターの態勢に入るサウラー。

「……かかったわね」
「!?」

次の瞬間。
身をかがめたベリーの背後から現れ、たちまちサウラーの眼前に迫る橙色のブーツ。

「プリキュア反転キック!!」
「ぐああっ!!」

ウエスターに弾き飛ばされた反動を利用した、パインの飛び蹴りが、サウラーに直撃していた。

「貴っ……様ぁ」
「えっ? 何っ? 俺のせいっ!?」

慌てふためくウエスターの側頭部に、ベリーのハイキックがジャストミート。

「ぐぉあ!?」

大木に顔面から突っ込み、ピクピクと痙攣するウエスター。

「あなたたちも、この世界に来てから長いけど……“油断大敵”って言葉、まだ覚えてなかったみたいね?」
「チィィ……ッ!」


***


「ぐっ……がはっ! ごほっ」

イースの攻撃によるダメージが押し寄せ、グレイブの胸を圧搾する。
咳き込むグレイブの足元で、割れた地面の中央が隆起し、闇の中から赤い瞳が覗く。

「キュア……グレイブ……ッ!!」

土砂を押し退け、猛然とグレイブに飛びかかるイース。

「イース……!!」
「あああああああっ!!」

防御が間に合わず、イースの拳がグレイブの肩口に炸裂する。

「あうっ!」

泥の中に倒れ込むグレイブ、その頭上から迫るイース。
空中で全身に捻りを加え、ヒールの照準をグレイブの顔面に絞る。
放たれんとする、必殺必中の蹴り。

「これで……終わりだ!!」

その刹那。
イースの視界の隅、グレイブの背後に小さく揺れる物体。

(あれは……)

停止する思考。
……そして、我に返った時。
イースの胴に、グレイブの拳が深々と沈み込んでいた。

「か……はっ」

反動によって互いに跳ね飛ばされ、距離を置いて着地する両者。

「幸せ、の……」

辛うじて両足で大地を踏みしめたものの、よろめき、後ずさるイース。

「うおおおおおおおおっ!!」

限界を迎えたリングルンにマフラーを巻きつけ、炎の拳に変えて突進するグレイブ。

(ここまで……か……)

遠のいていく、イースの意識。
目の前でぼんやりと揺れる紅い光の中に、自らの記憶の一部が映し出される。
それは一人の少女の、屈託の無い笑顔。

「……ラブ……」

ほとばしる熱と閃光。
……だがその猛威が、イースに達することは無かった。

「……?」
「そんな……」

力の限りに繰り出された拳を、込められた憎しみの全てを、その身を賭して受け止める者がいた。
黒を纏った二人の合間に立つ、鮮やかな桃色の姿。

「桃園……さん」

盾となってイースを護り、崩れ落ちるピーチ。

「どうして……どうしてっ!!」

その身体を抱え上げ、涙を流すグレイブ。
ピーチの胸に落ちた雫が、音を立てて蒸発する。

「友達、だから……」
「!」

全身を焼き尽くす高熱に喘ぎながら、うわ言のように呟くピーチ。

「せつなも、メイさんも、あたしの大切な、友達だから……」
「桃園さん……」

二人のやりとりを、呆然と見つめるイース。

「何を言ってるんだ……私はお前の友達なんかじゃない!」
「……たとえ東せつなの存在が偽りだったとしても、桃園さんにとっては、それが“本当”なんだ」

ピーチを抱き寄せながら、イースをまっすぐに見つめるグレイブ。
先程まで燃え盛っていた憎しみは消え、その瞳は曇りの無い鏡のようにイースの姿を映し出す。

「そして、あなたも……桃園さんと触れ合う時間の中で、本当の幸せを感じていたはずだよ。……それが伝わったから、桃園さんもあんなに素敵に笑えたんだ」

いつの間にか雨は上がり、どこからか鳥のさえずりが聞こえてくる。

「……お前たちといると、私の中の何かが、おかしくなっていく……」
「おかしくなんかないよ。それが、本当のせつななんだよ」
「本当の……私……?」
「……やれやれ、私もすっかり忘れてたよ。桃園さん相手に、嘘はつけないってこと」

ため息をつくと、足元に開いていた“それ”を摘み取り、イースへ差し出すグレイブ。

「さっき私を蹴り損ねたの、これを見つけたからでしょ?」

緑色の十字架にも似た、幸せの象徴。

「幸せの……もと?」
「すごいよ、せつな! 幸せを呼ぶ四つ葉のクローバーはね、心から幸せを望んでいる人じゃないと見つけられないんだよ」
「心から、幸せを……」
「そうだよ。あなたが望んでいたものは、ここにあるんだ」

イースへ向かって伸ばされたグレイブの手に、ピーチの手が添えられる。

「今からでもきっとやり直せるよ。……さ、幸せをつかみとって」

二人の笑顔に見守られながら……ゆっくりと、四つ葉のクローバーへ近づいていくイースの手。

「私が見つけた……幸せ……」

イースが触れる寸前。
グレイブの手を離れ、地に落ちるクローバー。

「ぐ……っ!?」

リングルンを押さえ、全身を激しく震わせるグレイブ。

「メイさん!?」
「どうした、キュアグレイブ!?」
「は、離れて……二人とも……!」

グレイブの背で燃えていたマフラーが、急速に膨れ上がる。
エネルギーの奔流に呑まれ、吹き飛ばされるピーチとイース。

「何が起こったんだ!?」
「メイさん……!」


***


「あれは……」

森の中心から吹き上げる、巨大な火柱。

「何だ!?」
「何なの、一体……?」

あまりの光景に、戦いを止めるベリーたち。

「……いけない!」

その合間を抜け、炎の源へと走るキサナ。

「どうしたの、キサナ!?」
「リングルンが暴走を始めました。このままでは、全てが終わりです!」
「!!」

キサナを追うベリーとパイン、後に続くタルトとシフォン。

「お、おい……待てっ! プリキュア!!」
「……どうやら、只事では無さそうだね」

雲を貫き、天へ突き上げる火柱。
その中心でもがき、苦しむグレイブ。

「凄いエネルギーだわ……」
「メイさん……!」
「メイっ!!」
「ベリー、パイン、キサナ……これは、どうなってるの!?」

駆けつけたキサナたちに、すがるように問いかけるピーチ。

「リングルンの暴走……制御できなくなった闇の力が、一気に解放されようとしているのです」
「メイさん、苦しそうだよ……このままじゃ、大変なことになっちゃうよ!」
「それだけでは済みません。全てのエネルギーが放たれれば、この一帯……町一つくらいは、軽く消滅するでしょう」
「そんな……!!」

火柱へ近づこうとするピーチを、制止するキサナ。

「駄目です!」
「どうして!? 早くなんとかしなくちゃ!」
「闇のエネルギーにプリキュアが接近すれば、激しい反発作用が起こります。次元崩壊により、この世界そのものが危険に晒されます!」
「だったら、どうしたら!」

涙を零して叫ぶピーチ。

「……プリキュアでなければ、いいんだな?」
「せつな!?」
「イース……あなた!?」

両膝を押さえ、ゆっくりと立ち上がるイース。

「確かに反発作用は起こりません。しかし、途方も無い量のエネルギーにあなたの身体が耐えられないでしょう。……ここは、私にまかせてください」

イースの行く手をさえぎるキサナ。

「お前が犠牲になるつもりか?」
「…………」

キサナの手を払い除け、火柱に向かって一歩、歩き出すイース。

「待って! どうしてあなたが、あたしたちを助けるのよ!?」
「……お前たちは、みんなそうだ。仲間の幸せのためなら、どんな不幸の中へでも飛び込もうとする」
「せつな……さん?」
「駄目です! 止まってください!」
「もう、たくさんだ。そんな愚かな姿を見せられるのはな」
「せつなぁっ!!」

火柱に触れるイース。
凄まじい熱と光がイースの身体を焦がし、視覚を奪おうとする。

「どのみち私の命は、あとわずかしか残されてはいない」
「!?」
「なによ……それ!?」
「我らの寿命は、生まれた時から管理されている」

キサナたちの背後から現れる、サウラーとウエスター。

「イースの命は、今日限りで尽きる。メビウス様の決められた通りにね」
「そんな……そんなのって」
「イース、なぜだ? なぜ、プリキュアを助ける!?」
「イース、これが君の選んだ結末かい?」

背を向けたまま、最後の逡巡を見せるイース。

「……さらばだ」

プリキュアとラビリンスの双方に別れを告げ、一気に火柱へと飛び込む。
燃え盛る炎に呑まれ、瞬く間に掻き消える後ろ姿。

「せつなあああああっ!!」

想像を絶する地獄。
溶鉱炉の内側のような紅い空間を、手探りで進むイース。

『引き返して……』

渦巻く灼熱のエネルギーの中を、断片となって流れてくるメイの言葉。

『私は、もう……』
「諦めるな、キュアグレイブ!」

もがくように両手を動かしながら、一歩、また一歩と前に進んでいく。

「今度は、私が救う番なんだ」
『…………』

薄らぐ意識の中、グレイブの視界に黒い影が映る。
まるで水面に映した自分のような、ゆらめく黒い姿。

「今までずっと、目を逸らしていた。……あなたたちの笑顔から。……あなたたちと一緒に、心から笑いたい。そう思う自分から」
『東……さん』

イースを迎えるように伸ばされる、グレイブの左手。

「そうだ……今度こそ、掴み取ってみせる」

炎の中で見開かれたイースの瞳に、小さな光が宿る。
その指がグレイブの手に、リングルンに触れる。

「私のこの手で、幸せを!!」

イースの……せつなの叫びに呼応するかのように、シフォンの額が、キサナの両目が、赤く輝き始める。

「この反応は……」
「シフォン、どないしたんや!?」
「……ピップル―――――ッ!!」

吹き上げる炎が、一瞬で赤い閃光に変わる。
光の柱に寄り沿うように、雲を突き抜けて一直線に舞い降りる赤い妖精。
天を仰ぐ三人のプリキュア、そしてサウラー、ウエスター。

「おい……何が起こってるんだ!?」
「あれは……!」
「アカルンだわ!?」
「……それじゃ、まさか!!」

集束していく光。
イースの意志とリングルンの機能、そしてアカルンの力。
その三つが共鳴し、邪悪な力がプリキュアのエネルギーへと変換されていく。

「――最後の、プリキュアが!?」

光柱によって貫かれた雲間から、スポットライトのように降り注ぐ陽光。
その輝きを全身に浴びて立つ、伝説の戦士。
彼女の胸に抱きかかえられ、穏やかな表情で眠るメイ。

「イース!?」
「せつな!!」

地獄の業火の中から、不死鳥のように蘇った一人の少女。
紅蓮の炎をその身に纏ったかのような、赤い姿。

「真っ赤なハートは、幸せのあかし」

自らが手にした新たな名を、確かめるように呟く。

「うれたてフレッシュ……キュアパッション」





つづく




******


次回のフレッシュプリキュア! クロス†オーバーは、
第13話『せつなとメイ 4つ目のハートは誰?』をお送りします。
お楽しみに!




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テーマ : プリキュア
ジャンル : アニメ・コミック

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感想一番乗りでスイマセン

クロスオーバー版キュアパッション誕生話の前半部分ともいうべき12話でした。
次の13話がせつなvsメイ話になるようで、後半がどんな形になるかも注目です。

No title

西さんは、やはり愛すべき馬鹿なんですよね。
しかし、キサナって一体何者?グレイブに秘められた力って?
グレイブに秘められた力は普通ではないような気がします。
なんかが隠されてるような感じで…
次回は、4つ目のハートの奪い合い…
でもメイさんってきっと、真ん中の緑だよね!
そしてそろそろ後半戦!つまりOP、EDが変わる頃ry

感想ありがとうございます

>畑中 智晴さん

原作と異なるのは、せつな(イース)自身の明確な意志によって、パッションが誕生している点。
彼女の内面的には、一段階先のステップへ飛ばさせてもらっています。
これを踏まえた、後編となる次回は……「クロスオーバー」らしい、豪快な肩透かしが待っているかもしれませんが(^^;
お楽しみに。

>柳星張さん

西さん本格登場ということで、大変緊張しました(嘘
グレイブが持たされた力は、確かに異常です。その秘密は……さて。
メイのポジション。真ん中の緑=シフォン=ミドルンという解釈で書いてるので、半分正解って感じですね(マスカー的な意味で
そう、次回からOPEDが変わります。つまり、どのエピソードに当たるのか……もうおわかりでしょうか。
プロフィール

ヤネ

Author:ヤネ
フレクロF、今度はイニシャルWW編です。

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