クロスオーバー! フレッシュプリキュア! クロス†オーバー 第13話
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フレッシュプリキュア! クロス†オーバー 第13話

太陽の下、まぶしく重なるハートが四つ。
……そして、黄昏の闇に、もう一つ。


******


炎が町の夜空を紅く染め上げる。

「フハハハハ……どんどんFUKOが貯まっていくぞ!!」
「くっ……!」

ウエスターが操るナケワメーケの猛攻の前に、窮地に陥る三人のプリキュア。
地に伏せた彼女たちの真上に、瓦礫が降り注ぐ。

「みんな!」

炎をかいくぐり、駆けつけるメイ。

「ただのナケワメーケのはずなのに、どうしてこんな力が!?」
『おそらく……ナキサケーべの戦闘によって得たデータを基に、改良を加えているのでしょう』

メイの左腕を幾重にもくるむ、淡い光を放つ純白の布。
闇の力を抑え、治癒を促進する“光子の絹(フォトンシルク)”を、無理矢理引き剥がすメイ。

『メイ、何を!?』

布の下、無残に損壊したリングルンが露になる。

「行かなきゃ……私が戦わないと!」
『無理です。自己修復を待たない限り……今のリングルンでは、変身することは不可能です』
「だけど……!!」

唇を噛み締めるメイ。
その隣に……燃え盛る炎を挟んで、静かに並び立つ影。

「……やめろ、ウエスター」

白い肌と艶やかな黒髪が、赤く照らし出される。

「あなたは……!」

熱に歪んだ大気の中に、蜃気楼のように浮かび上がる少女の姿。
……東せつな。

「おお、来たかイース!」

喜々として目の前に降り立つウエスター。

「思い出したか? 我らの使命を。メビウス様に仕え、不幸を集める歓びを」
「……私はもう、イースではない」

肩に置かれた手を振り払い、リンクルンを構えるせつな。

「チェインジ・プリキュア! ビート・ア―――ップ!!」

展開される特殊空間。
他のプリキュアと比べても、一際高いエネルギー濃度を持つ……命を生み出す海にも似たその世界を、煌く魚となって駆け抜ける。

「真っ赤なハートは、幸せのあかし!」

閃光の中で再誕する戦士。
生命を象徴する赤をその身に纏い、苦しみの果てに掴み取ったその名を、高らかに叫ぶ。

「うれたてフレッシュ! キュアパッション!!」

今の彼女はすでに、ラビリンス幹部イースではない。
東せつな、即ちキュパッションなのだ。

「たああっ!」
「ぐおっ!?」

正拳の一撃で、ウエスターを吹き飛ばすパッション。
ナケワメーケの注意が逸れた一瞬の隙に、瓦礫の下を抜けて飛翔するピーチたち。

「「「トリプル・プリキュア・キ――――ック!!」」」

三人の同時攻撃を頭部に受け、よろめくナケワメーケ。

「今よ、パッション!」

ピーチの言葉に力強く頷き、リンクルンを起動するパッション。
アカルンの力が瞬時に結晶化し、その手元に舞い降りる。

「歌え、幸せのラプソディ! パッションハープ!」

白い指が、踊るように弦を弾き……その演奏によって、幸せの最終奥義たる技が発動する。

「吹き荒れよ、幸せの嵐! プリキュア・ハピネス・ハリケ―――――ン!!」

身体の高速回転によって捻り寄せられた空間に、プリキュアの力が充満する。
一気に放出されたエネルギーが、無数の羽根やハートを象って乱舞し……文字通りに吹き荒れる、荒れ狂う。

『シュワ……シュワァ』

擬似的な特殊空間に呑み込まれ、浄化消滅するナケワメーケ。
その光に照らされて立つ、四人のプリキュア。
パッションを囲むピーチ、ベリー、パイン。

「パッション、カンペキ!」
「きっと来てくれるって、わたし信じてた」
「これからはずっと一緒に、幸せゲットしようね!!」

三人の言葉を受け、瞳に涙を浮かべて微笑むパッション。

「ええ……精一杯、がんばるわ」

パッションを中心に、重なり合う四つの手。
今ここに完成する、四つ葉のクローバー。

『ついに、全てのプリキュアが揃いましたね』
「……ああ。これでやっと、メデタシメデタシ、って感じかな」

その光景を遠巻きに見つめ、ほっと胸を撫で下ろすメイ。

「……そうだよね。メデタシ……なんだよね」
『……メイ?』

一方で心の何処かを、冷たい風が吹き抜けていくのを感じながら……。



フレッシュプリキュア! クロス†オーバー
第13話『せつなとメイ 4つ目のハートは誰?』



ミユキの指導のもと、公園でダンスレッスンに励む四人。
ラブ、美希、祈里、そして……せつな。
その様子を、ドーナツカフェから眺めているメイ。

「へい、お待ち」

テーブルに並ぶ、五つのドーナツ。
端に置かれた緑色の一個に、メイの目が留まる。

「マスター、これ……」
「一個おまけね。新メニューのメロン味、食べてみてよ」

四人のダンスを見ながら、メロンドーナツを口に運ぶメイ。

「……うん、おいしいですよ。流石ですね」
「ありがと。……あれ?」

四個を残し、席を立つメイ。

「ごちそうさまです」
「もう、帰っちゃうの?」
「すみません。ちょっと、用事を思い出して。……残りのドーナツは、みんなにあげてください。もうすぐ、レッスンの終わる時間ですし」
「そう……じゃ、また来てね。おじさん待ってるから!」

手を振り、メイを見送るカオルちゃん。

「なんだか……背中が寂しいねぇ」
「カオルちゃ―――ん! ドーナツ四人分! ……ってあれ、メイさんは?」

メイと入れ違いにやって来るラブたち。

「おかしいわね。さっき向こうから、ここに座ってるのが見えたんだけど」
「それがついさっき、帰っちゃってねぇ。セーラー服のお嬢ちゃん、忙しそうだったよ」

テーブルを囲んで座る四人。

「最近、あたしたちと顔を合わせてくれないわよね」
「何か、あったのかな……」

不満そうな美希と、心配する祈里。

「もしかして、私のせい……?」

せつなの表情に、暗く陰が差す。

「ち……違うよ、せつな!」
「きっと、ラブと一緒に暮らしてるせつながうらやましくて、すねてるのよね」
「じゃあ今度、またみんなで遊びましょ? メイさんも誘って」
「うん、それがいいよ。さんせ~~~い!」
「…………」

祈里の提案に、両手を挙げて賛同するラブ。
その隣で、メイが残したドーナツをじっと見つめるせつな。

「……メイ……」


***


「おかえりなさい、早かったですね。おみやげのドーナツは?」
「……忘れた」

居間を横切り、まっすぐに自分の部屋へ向かうメイ。

「ちょっと待ってください、メイ」
「…………」
「ピーチさんに相談されましたよ。最近、メイの様子がおかしいと」

キサナの言葉に一瞬足を止めるも、そのまま廊下を進み、ドアノブに手をかける。

「携帯にも出ないそうじゃないですか。一体、なぜ……」
「私の付き合いの悪さは、今に始まったことじゃないだろ」
「そういう問題ではないです!」

ソファーから立ち上がり、メイの背中へ呼びかけるキサナ。

「…………」

返答の代わりに、扉の閉まる音だけが響く。
取り残され、一人ため息をつくキサナ。


***


森の占い館。

「もうイースではない、だと……? ふざけやがって!」

沸き上がる苛立ちを隠そうともせず、室内を歩き回るウエスター。

「いつまで、そんな調子でいるつもりなんだい?」

その隣で、静かに紅茶を啜るサウラー。

「別にいいじゃないか。どちらにせよ、ラビリンスとしての彼女の寿命は尽きていたんだ」
「しかし、奴はメビウス様を裏切り、そのうえ俺たちの邪魔をしようとしてるんだぞ!!」
「なら、今のイースなりのやり方で役に立ってもらうだけさ」

足を止め、サウラーの言葉に耳を傾けるウエスター。

「……どういうことだ?」
「簡単だよ。彼女自身の不幸を、メビウス様に献上する」
「え……?」

サウラーの口元が、僅かに歪む。

「……そう、報いは受けてもらう。裏切り者に居場所など無いと、たっぷり思い知らせた上でね」

その両目が鋭く、どこまでも冷たく光る。


***


その夜、桃園家。
ベッドの上でうなされるせつな。
夢の中に広がる光景……暗い、霧に包まれた森。
怯えながら、一人でそこを進むせつなの行く手に、浮かび上がるようにして黒い影が現れる。

「あぁ……!」

目の前に現れたその姿に、震え、足をすくませるせつな。

『…………』

怯えるせつなを睨みつける、キュアグレイブ。
言葉は無く……ただその憎しみに満ちた視線が、全てを物語る。

「う……うぅっ!」

背を向け、必死で逃げ出すせつな。
グレイブの影に追い立てられるように、出口の無い森を、立ち込める霧の中を、どこまでも走り続ける。


***


翌日の公園。
昨日に引き続いて、ダンスレッスンを受ける四人。

「せつなちゃん、どうしたの? 今日は表情が硬いし、全然集中できてないよ」
「すみません……」

原因は告げす、ただ一心にミユキへ頭を下げるせつな。
その肩に、優しく手を添えるラブ。

「せつな、どうしたの? 朝から元気無かったし……何かあったなら、話してよ」

触れた小さな肩が、僅かに震える。

「ごめん、ラブ……私やっぱり、みんなと一緒にダンスはできないわ」
「せつな!?」

ラブの手を振り払い、走り去るせつな。

「せつな……待ってよ!」
「ラブちゃん!」
「ミユキさん、ごめんなさい……あたし、せつなを連れ戻します!」

公園を後にして、せつなを追いかけるラブ。

「せつな、大丈夫かしら……」
「ラブちゃんならきっと、せつなちゃんの悩みを聞いてあげられるって……わたし、信じてる」
「そうね……ここは、ラブにまかせてみよう」

ラブを信じ、二人の後姿を見送る美希と祈里。


***


熱を孕んだ夏の風が、草の匂いを巻き上げる。
川沿いの土手に一人、座り込んだせつな。
輝く緑の中にあって、黒く影を落とすような横顔。

「せつな……」

照りつける日差しを受け、煌く水面。
虚ろな赤い瞳に、その光がぼんやりと揺れる。

「私、幸せよ。プリキュアになれて、みんなと友達になれて。……でも」

せつなの声が途切れ、小さな雫が頬を流れ落ちる。

「……イースとして、してきたこと……みんなの願いと幸せを奪い続けてきた過去は、消えない。……そんな私に、みんなと一緒にダンスする資格なんて、無いわ」

嗚咽交じりに、苦しみ、もがくように言葉を吐き出す。

「メイだってきっと、そう思っているから……だから」
「……あのね、せつな。聞いてほしいことがあるの」

せつなの傍らにしゃがみ込み、呟くラブ。

「今、練習してる曲はね……あたしと、美希たんと、ブッキーと……メイさんとで、踊るつもりだったの」
「!」

顔を上げ、振り向くせつな。
川のせせらぎを見つめたまま、続けるラブ。

「ダンス大会が終わったら、メイさんも一緒に……そのつもりでミユキさんに、四人用の振り付けを頼んだの」
「じゃあ、どうして……どうして、私に!?」
「それが、メイさんの願いだから」
「……え?」

せつなの瞳を見つめ返し、微笑むラブ。


***


夕暮れの公園。
一人、ベンチに座ったせつな。
その隣に、腰を下ろすメイ。

「ごめんなさい、メイ。いきなり、話がしたいなんて言って」
「別に、いいけど……何の用?」

腕を組み、茜色の空を見上げるメイ。

「ダンスのこと……私、今まで知らなかったから」
「……あぁ」

視線を落とし、左腕のリングルンを見つめるメイ。

「私がプリキュアに変身できるのは、あと二回だけ。そして、この世界に解き放たれたダークルンは、残り一体。……そいつを封印した時、私のプリキュアとしての使命は、終わる」

夕日の照り返しに目を細めながら、穏やかな口調で語る。

「これからは東さんたち四人の力を一つにして、頑張ってほしいから。……プリキュアも、そしてダンスも。だからミユキさんに事情を話して、振り付けを完成させてもらったんだ。……新生、四つ葉のクローバーのために」
「……でも、メイは……」
「それに!」

人差し指をかざし、せつなの言葉を遮るメイ。

「東さんには、色々な幸せを知ってほしいと思ったから。……今まで、知らなかった分まで」
「……ありがとう」

微笑むせつなに、黙って首を横に振るメイ。
両膝を叩き、勢い良く立ち上がる。

「さ、もう帰ろう。暗くなる前に」
「待って、メイ。……一つ、訊きたいことがあるの」
「……ん?」

僅かな沈黙。
膝の上に置いた両手を握り締め、意を決して口を開くせつな。

「メイが、みんなを……私を避けているのは、どうして?」

一転して張り詰めた空気を通じて、メイの動揺が伝わる。

「……それは……」
「簡単なことさ」
「っ!?」

薄闇の中から、浮かび上がるように現れるサウラー。

「お前……!」
「サウラー……」
「東せつな。君がキュアグレイブにとって、憎むべき敵だったからだよ」
「……!」
「やめろ!!」

せつなを庇い、サウラーの前に立ちはだかるメイ。

「本当のことだろう?」
「……失せろ」

刃物のように鋭いメイの眼差しを意にも介さず、愉快そうな笑みを浮かべるサウラー。

「なら、君の影に訊いてみようじゃないか。……東せつなのことを、どう思っているのか」

傾いた日差しを受け、長く伸びたメイの影に、サウラーのカードが突き刺さる。

「ナケワメーケ、我に仕えよ!」
「な……!?」

カードの内側から溢れ出した闇が、大地に広がる。
その中心部から、沈む太陽を背にして、ゆっくりと頭をもたげる巨体。

「まさか……」
「キュア……グレイブ……!」

漆黒の身体に白金の両目を爛々と輝かせるそれは、まさしくキュアグレイブを模した姿をしていた。

『オマエハイース!!』
「!?」

せつなを指差し、糾弾するように叫ぶナケワメーケ。

『オマエハイ――――ス!!』
「あ……ああ……!」
「東さん!?」

目の前に立つナケワメーケと、夢で見たキュアグレイブの姿が、せつなの中で一つに重なる。

『オマエハイ―――ス!!』
「……やめ、て……」

耳を塞ぎ、フラフラと後ずさるせつな。

「それがキュアグレイブの本心さ。……これで良くわかっただろう? 裏切り者には、居場所など与えられないということが」
「黙れっ! 東さん、こんなデタラメに耳を貸さないで!」
「私は……私は……」

うずくまって震えるせつなに、のしかかるように迫るナケワメーケ。

「チェインジプリキュア……クロスオーバー!!」

マフラーを翻し、ナケワメーケとせつなの間に滑り込むグレイブ。
両腕を頭上でクロスし、ナケワメーケの攻撃を防御する。

「ほう。その無様な裏切り者を、まだ庇うつもりかい?」
「キサナ、リングルンの自己修復は」
『……機能復旧率、17パーセント。出力、安定しません』
「相変わらず武器もフィールドも、マニューバーも使えない……か」

虚勢とも自嘲ともつかない笑いが、グレイブの口から漏れる。

「やめて、メイ……そこをどいて!」
「安心して、東さん。あなたは私が守ってみせる。……あなたが、幸せを願う限り。私たちの大切な仲間、プリキュアである限り」
「メイ……!」

せつなの悲痛な叫びを背に受けながら、歯を食いしばり、サウラーを睨みつけるグレイブ。

「……フッ。そんなもの、どうせ“建て前”に過ぎない。隠しきれない“本音”の前で、どれだけ持ち堪えられるかな……?」

ナケワメーケの片腕が、巨大なトンファーに変形する。

「……!」

せつなを庇い、真上から振り下ろされる丸太のようなトンファーを、両手で受け止めるグレイブ。
恐ろしい衝撃に全身が軋み、足元の地面が砕ける。

「……こんな偽者以下の、泥人形の攻撃なんかで……」
「そうか。なら、これはどうかな? ……ナケワメーケ!」

ナケワメーケの背から伸びた、漆黒のマフラー。
その先端が無数に枝分かれし、茨状の鞭となってグレイブに襲いかかる。

「!」
「メイ!!」

突き刺さり、巻きつき、打ち据え……両腕を封じられ無防備となったグレイブの全身を、ナケワメーケの鞭が蹂躙する。

「ぐ……ぅっ……う」

必死に悲鳴を押し殺し、気が遠くなるほどの激痛に耐えるグレイブ。

『メイ! これ以上は、聖衣が持ちません!』
「やめて、メイ……お願い……!」

すがるように、グレイブの腰を抱き寄せるせつな。

「今まで私は、大勢の人を不幸にしてきた。その報いを受けるのは、当然のことだわ」

涙を零しながら、懇願するように叫ぶ。

「……私を守る必要なんて無い。私は、私は……」
「私は、プリキュアなんかじゃない」
「!」

ナケワメーケの攻撃に身を晒しながら、ぽつりと呟くグレイブ。

「あなたのことじゃない。……私、自分のことをずっと、そう思ってたんだ」
「え……?」

グレイブの顔を見上げるせつな。

「私があなたを避けていたのは、本当のことだよ。……でもそれは、あなたが敵だったからじゃない」

目の前の敵を、己の影を正面から見据え、言葉を紡ぐグレイブ。

「四人揃ったみんなを見た時。本当の、四つ葉のクローバーが完成するのを見た時。……闇に染まったグレイブの身体が、真っ黒な自分の姿が、とても惨めに思えた」

鞭の一撃を受け、火花を散らして沈黙するリングルン。

「あなたのことが、うらやましい。……そう思った」

鞭が風を切るたび、黒い装衣のあちこちに次々と裂け目が走る。

「そんな自分が嫌だった。……あなたを避けることで、目を逸らしていたかった」
「メ……イ」

グレイブの、メイの言葉に呼応するように、せつなの胸に蘇る思いがあった。

「メイ、聞いて。イースだった頃……私は、自分とそっくりな姿をしたあなたがプリキュアとして戦っていることに、ずっと違和感を抱いていた。……あなたのことが、うらやましかったのかもしれない」

傍らに転がったリンクルンに、ゆっくりとせつなの手が伸びる。

「でも、あなたは教えてくれていたのよね。……私も、あなたのようになれるってことを」

その手でもう一度、戦う力を掴み取る。

「……そうだよ。私たちは、プリキュアになれるんだ。幸せを願う、守る……その心があれば」

苦痛に汗を滴らせながら、微笑むグレイブ。
通じ合った心が、二人の瞳に光を灯す。

「戦おう。今は、二人のプリキュアとして!」
「ええ!」

立ち上がり、リンクルンを起動するせつな。
自らの過去に挑み、乗り越えるその意志を、言霊に示す。

「チェインジプリキュア……ビートア――ップ!!」

赤熱光とともに解放されたアカルンの力が、ナケワメーケを弾き飛ばし、グレイブを縛りつけていた黒い戒めを焼き尽くす。

「イース……!」

閃光に顔をしかめ、憎々しげに呟くサウラー。
傷ついたグレイブの隣に、寄り添うように立つ、もう一人のプリキュア。

『オマエ……ハ……』

黄昏の大地に、燦然と輝く二つの星。

「「真っ赤なハートは、幸せのあかし」」

その右手は明日への道を切り拓き、願いを勝ち取るための剣。
その左手は命を賭けて、大切な誰かの幸せを守るための盾。

「うれたてフレッシュ! キュアパッション!!」
「冥府を望む玉座! キュアグレイブ!!」

……人は彼女たちを、プリキュアと呼んだ。

「行くよ、パッション!」
「まかせて、グレイブ!」

互いの手を固く握り締め、天高く飛翔する二人のプリキュア。

「ダブル!」
「プリキュア!」

空中で同時に身を屈め、体の内でマグマのように滾る膨大なエネルギーを、それぞれの片脚に集束する。

「「キ――――――ック!!」」

交わる軌跡が螺旋を描き、鋼の蹴撃が標的に突き刺さる。
堪らず、仰向けに倒れこむナケワメーケ。

「やるね、パッション」
「……フッ。あなたも、ね」

並んで着地し、微笑を交わす二人。

「ようやく、戦う気になったか。……だが」

余裕の表情で戦況を見つめるサウラー。
横たわったナケワメーケの身体が夕闇に溶け、一瞬に消える。

「君たちに、勝ち目は無い」
「!?」

グレイブの背後に伸びた影から、黒い巨体が這い上がる。

「グレイブ、後ろよ!」
「!」

寸前でナケワメーケの両腕から逃れるグレイブ。
地面に溶け込むように、再び姿を消すナケワメーケ。

「気をつけて……敵は、影の中を自由に移動してくるわ!」
「厄介な……!」

太陽が地平線に近づき、急速に面積を増す闇が、二人の逃げ場を奪っていく。

「なんとかして、あいつの位置を捉えないと……!」
『解析完了。ナケワメーケは、右斜め前方の木陰に潜伏しています』
「え!?」

即座に訪れた回答に、思わず声を上げるグレイブ。

『キュアパッションの身体から伝わるアカルンの力によって、リングルンの機能を一部復旧することができました』
「復旧って……そんな機能、前からあったっけ?」
『進化しているのは、あちらだけじゃないってことですよ』

キサナの指示に従い、手を取り合って走るグレイブとパッション。
ナケワメーケが姿を現すと同時に、その顔面にダブルパンチが炸裂する。

「バカな……!」

うろたえるサウラーの隣を、吹き飛ばされたナケワメーケが転がっていく。

「これでもう、便利な逃げ場は使えないわね」
「ああ。ぼちぼち暗くなってきたし、ここらで終わりにしようか」

ヨロヨロと身を起こしたナケワメーケに向けて、端正な笑顔を浮かべながら、ゆっくりと身構える二人。
両雄の姿、陽炎のように立ち上る闘気に慄き、僅かに後ずさるナケワメーケ。
だがその片足が動き始めるより早く、二発の砲弾のような拳が胴にめり込む。

『!?』
「「ハアアアアッ!!」」

最終ラウンドのゴングは、一方的にかち鳴らされた。
こうなってしまえば、戦神と化した彼女たちを止めることなど、何者にも不可能。
ナケワメーケが苦し紛れに振り回す両腕を、茨の鞭を、必要最低限の機動で避けつつ、拳撃の雨あられを浴びせかける。
上下左右全方向から叩き込まれる千の鉄槌を前に、黒い巨体はもはや的でしかない。

「ハアッ!」
「ヤアアッ!」

最後の二撃を喰らい、夕空に向かって勢い良く跳ね上げられるナケワメーケ。
丘一つを飛び越えて、地平線の向こうで土煙を上げる。

「決めるわよ、グレイブ!」
「オーケー!」

アカルンを装填し、リンクルンを展開するパッション。
生成されたハープを左手で受け、右手をグレイブと繋ぐ。

「歌え、幸せのラプソディ!」
「……パッションハープ!」

パッションが抱えたハープの弦を、グレイブの指が奏でる。

「「燃え上がれ、幸せの炎!!」」

強く結んだ手と手を中心に、向かい合い、舞踏のごとく円を描く二人。

「「プリキュア・ハピネスハリケーン……」」

激しい回転のさなか、グレイブのエネルギーがミラージュマフラーを通じて放出され、ハピネスハリケーンと一つに融合する。
怒れる竜巻とも、花開く蕾とも見える、その姿。

「「フレ―――――――――ッシュッ!!!」」

渦を巻き、激しく噴き上げる炎の奔流。
世界の全てを夕日の紅に染め上げながら、大地を駆け抜ける。
燃える旋風に呑み込まれ、瞬く間に消滅するナケワメーケ。

『シュワ……シュワァ……』

その光に追われるように、闇へと退散していくサウラー。

「おのれ、プリキュア……!」

静けさを取り戻した黄昏の公園に、佇む二人のプリキュア。
言葉は無く、ただ互いの存在を確かめるように、しっかりと手を握り合って……。
並んだ影がどこまでも、明日へ向かって伸びていく。


***


薄紫に染まった空。
並んで一番星を見上げる、せつなとメイ。

「やばぁ、もう夜じゃんか。……東さん、こんな時間に帰ったら怒られない?」
「大丈夫よ。だって今日は、メイの家に泊まるじゃない」
「あぁ、そっか……ってえええええ!??」

メイのリアクションを完全スルーし、嬉しそうに続けるせつな。

「みんなとはダンス合宿の時に色々な話をしたけど、今日はメイのことをたくさん知りたいわ」
「色々と知りたいことがあるのは、むしろこっちの方なんですけど……一体どこから、そんな話が?」
『今日の昼間、パッションさんから家に電話があったので。とりあえずOKしておきました』
「ええっ!? 聞いてないよ!」
『なにぶん、リングルンの通信状態が悪かったものですから……うふふ』
「ウフフじゃなぁぁぁい!!」
『携帯に出ないメイが悪いんです』

二人の言い合いを尻目に、バッグから何かを取り出すせつな。

「ねえ、メイ」
「……ん?」
「もう一つだけ、お願いがあるの」

両手を背後に回し、少し照れくさそうに微笑むせつな。

「あ……夕飯のメニューは、私が決めるからね? 文句は言わせませんよ?」
「私と、ダンスしてほしいの」
「……へ??」

外灯に照らされたベンチの上に、ダンシングポッドを置くせつな。

「……一度でいいから、メイと一緒に踊りたい」

雪のように白い頬を桜色に染めて、メイの顔を見上げるせつな。

「東さん……」
「お願い」

妙な気恥ずかしさを感じ、あわてて目を逸らすメイ。

「で……でも私、振り付けとか、憶えてないし……」
「私にまかせて!」

ポッドのスイッチを入れ、強引にメイの手を取るせつな。

「ひ、東さん!?」
「ハイ、手を上に伸ばして!」

流れ始めるBGM。
せつなのリードで、ぎこちなく踊るメイ。

「ちょ、ちょっと……」
「そう、その調子よ!」

握った手の温もりに戸惑いながら、せつなに合わせて一つ一つ、ステップを踏んでいく。

「ここで、ターン!」
「こ、こう……かな?」

せつなの笑顔と弾む声に、メイの緊張も次第に解けていく。

「そして……」
「次は」

正面から向かい合い、お互いの視線が間近で交錯する。

「「ハイタッチ!」」

頭上で触れ合い、軽やかな音を立てる、二人の手と手。

(ねえ、メイ……これからも一緒に、幸せゲットしてくれる?)
(ああ。……みんなの願い、私たちの願い。たくさん叶えていこう)

外灯の白い光が、スポットライトのように二人へ降り注ぐ。
いつしか、空はすっかり暗くなり……一番星のすぐそばでもう一つ、小さな星が輝き始めていた。





つづく




******


最後のキイマジンとの戦い。
ついに明らかになるキサナの秘密。
そして、その果てに待つ別れ。

次回のフレッシュプリキュア! クロス†オーバーは、
第14話『さらば! キュアグレイブ』をお送りします。



新しいプリキュア!? 



新しいプリキュア、もうすぐ登場!?




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テーマ : プリキュア
ジャンル : アニメ・コミック

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非公開コメント

No title

な、なんだプロフィールがw
八寝さん暴走!?

さて、本編。26話中心かと思いきや、まさかの25話リメイク(?)でしたね
時間軸は26話の後、かな?
ハピネス・ハリケーンフレッシュ。うん。なんだかすごく強そう。なんでだろう
うぬ…それにしてもリングルンってなんだかすごい能力いっぱい持ってそうだなぁ
失われてる能力とは…
その辺、ミドルンの能力で覗けたり…しないかな

さて次回…最後のダークルン。どんな能力を持っているのでしょう。どれくらい強いのでしょう…

何?別れ?そ、そんなの信じないぞ!
だってプリキュアって、さよならってタいトルつけておいて結局さよならしないじゃないか!

>新しいプリキュア
マスカー完全体?新しいグレイブ?
はっま、まさか6にn(ry

これからクロスオーバー!もついに架橋を迎えるのですね…

待ってましたの13話

待ってましたの13話、柳星張さんも言っていましたが26話後の時間軸で中身は25話リメイク、なかなかの読み応えでした。
そしてシルエット登場は、本編だとパッション登場へのカウントダウンを思わせる展開、おそらくはリングルンが完全復旧し、グレイブから新たなプリキュアへとステップアップ(まるでS☆Sの2ndフォームや本編で言えばキュアエンジェルの如く)するのか!?
シリーズも次回から26話編成の後半に突入、後半ではキサナの故郷である夜の王国トワイライトへの訪問もありそうな気配ではありますが、まずは1stラウンドの総決算となる次回14話に期待したいと思います。

コメントありがとうございます

>柳星張さん
>畑中智晴さん

プロフィールは…前回の仮面ライダーを観たら、つい、叫びたくなりまして。

紆余曲折ありましたが、26話後の時間軸で25話寄りの内容(冒頭に24話を挿入)という形になりました。
ダンス合宿にメイを放り込んで、もっと明確に「どっちが四人目?」をやろうかとも思ったのですが、貴重なブキせつエピソードを潰したくなかったので。

今回のテーマは「プリキュアの資格」。
ただ、メイがダンスをやらない理由を一度説明しておかなくてはと思い、それを盛り込んだために少しややこしくなってしまったかもしれません。
前置きとラストは、後期OPEDになぞらえています、一応。
リングルンがチート過ぎるのも、まだ詳しく言えませんが、伏線の一つです。

このところ毎回最終回のようなノリが連続していて、こちらもだいぶ疲弊してきているわけですが、
次回はついに一つの決着を見ることになります。お楽しみに。
プロフィール

ヤネ

Author:ヤネ
フレクロF、今度はイニシャルWW編です。

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