クロスオーバー! フレッシュプリキュア! クロス†オーバー 第14話

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フレッシュプリキュア! クロス†オーバー 第14話

どうやらダークプリキュアの設定が、本当にグレイブと近しいようで。
サイドストーリーが作れそうな勢いです。


******


夜の湾岸地帯。
暗い海面を割り、鎌首をもたげる巨大な影。
黒い鱗を全身に纏った、紅い眼の海竜。

『キィィィィィィィ』

その額が妖しく輝くと同時に、闇の彼方で、水平線が一斉に立ち上がる。
低い響きとともに迫る、白い壁。
海抜数十メートルはあろうかという高波が、陸地を目指して一直線に襲い来る。

「チェインジプリキュア!」

次元の地平を越え、颯爽と顕現するキュアグレイブ。
港に立ち、押し寄せる津波と真っ向から対峙する。

「マニューバーWJ!」

二体のダークルンを喚び出し、リングルンに装填するグレイブ。
胸の前で両手をクロスすると、沿岸部全体をカバーするように、数キロに渡る次元の障壁が現れる。
唸りを上げ、壁面にぶつかる高波。

「グレイブアブソリュート!!」

激突の瞬間、左手を前方にかざして叫ぶグレイブ。
リングルンが閃光を発し、力の波動が壁面全体を駆け巡る。
エネルギーを打ち消され、あるいは空間の屈折に巻き込まれ、一気に沖へと跳ね返る高波。

『キィィィィ!?』

鼻先に水塊を叩きつけられ、怯む海竜。
その頭上から、黒い処刑人が舞い降りる。

「ハアアアッ!」

巨体にあって唯一、鋼の鱗に覆われていない額に、トンファーが突き刺さる。

「ロック……ブレイク!!」

竜の頭に乗り、トンファーを一気に捻じり込むグレイブ。
水面を跳ね回り、暴れる竜の全身に、幾重にも光の輪が広がっていく。

『キィィィィィィィィッ!!』

断末魔の咆哮とともに、砕け散る海竜。
四散した体が大小様々な魚の群れと化し、海上へ降り注ぐ。
沖へと還っていく、無数の魚たち。

『イニシャルL、回収完了です』

波間から姿を現し、岸に泳ぎ着くグレイブ。
ずぶ濡れの身体を地面に横たえ、呼吸を整えながら、雲間に光る月を見上げる。

「これで……終わったんだね」
『はい』

やがて、静寂を取り戻す海。
変身を解き、ゆっくりと身を起こすメイ。

「もう私は、プリキュアにはなれない。……ならなくても、いいんだよね」

その言葉に、答えが返されることは無かった。
リングルンは既に沈黙し、そこからキサナの声が響くことも、もう無い。
月明かりの下、静かに打ち寄せる波の音だけが、辺りを包んでいた。



フレッシュプリキュア! クロス†オーバー
第14話『さらば! キュアグレイブ』



メイの家の前に集まったラブ、美希、祈里、せつな。
それに、タルトとシフォンも。

「いらっしゃいませ!」

呼び鈴を鳴らした次の瞬間。
勢い良く扉を開け、エプロン姿でラブたちを出迎えるキサナ。

「さ、どうぞお上がりください!」
「ほな、お言葉に甘えて…」
「お邪魔しま――っす!」

居間へと案内される一行。

「どうぞ、ごゆっくり!」

複雑な表情でテーブルに着いているメイ。

「ここは、私の家なんだが……」
「ケチなこと言わないの。せっかく、キサナが呼んでくれたんじゃない」

メイを囲むように座る四人。
シフォンを背負って、椅子の上に飛び乗るタルト。

「キサナが、どうしてもみんなにお礼をしたいって言うから……ゴメンねみんな、わざわざ集まってもらっちゃって」
「そんなことないわ。私、なんだかすごく楽しい」
「キサナちゃんとメイさんと、こうしてみんなで集まれるなんて、本当に久しぶりよね」
「プリップ――!」

テーブルの上に、キサナの手で皿が並べられる。

「お待ちどうさまです!」
「これって……」
「メイさん特製の、あのチャーハン!?」

黄金色に輝く米の合間から、ウインナーやスイートコーンが顔を覗かせる。
まさしくそれは、黒須メイ特製・アメイジングチャーハン。

「キサナ、いつの間に私の料理を盗んでいたんだ……!?」
「っていうか、メイのよりよっぽど美味しそうじゃない」
「うぐっ!」
「どうぞ、召し上がってください!」
「それじゃ……いただきま――す」

キサナの料理を口に運び、感嘆の声を漏らす一同。

「キサナ、これ……すっごくおいし――よっ!」
「ありがとうございます」
「この味、まさにアメイジング……驚異のうまさやで~~!」

ラブたちが喜ぶ一方、少し不満そうなメイ。

「こんなに料理が上手かったら、普段から作ってくれればよかったのに……」
「ごめんなさい。メイが料理するのを見ながら、少しずつ覚えたんです。……この味を、忘れたくなかったから」
「キサナ……」
「でも、見た目は似てるけど、メイのとは味が違うわ」
「い、言いにくいけど……メイさんのは、キサナちゃんのと比べると……」
「まぁ、再現する必要は無い部分よね~~」
「家から叩き出すぞお前らっ!!」

料理を味わいながら、談笑する一同。
ふと手を止めて、キサナの方を見るラブ。

「ねぇ、キサナ……本当に、帰っちゃうの?」
「……はい。トワイライトに戻り、リングルンごと、全てのダークルンを封印します。その管理こそが、私の役目ですから」
「でも、寂しくなるわね」
「キサナがいなくなったら……メイは、一人で暮らすの?」

心配そうな顔をするせつなに、笑って首を横に振るメイ。

「へーきへーき。もともと私は一人だったんだから。……それに、故郷に帰るっていったって、もう二度と会えなくなるわけじゃあるまいし」
「そうよね。またこうして遊べる時がきっと来るって、わたし信じてる」
「後は……向こうではちゃんと一人で眠れるようになってくれたら、心配事も無いんだけどね」
「メイ、その話は……!」

ニヤけながら語るメイの言葉に、慌てて立ち上がるキサナ。

「えっ、どういうこと?」
「キサナには母さんの部屋を貸してるんだけど、怖い夢を見たって、夜中によく私の所に来るんだよね」
「メイっ! ダメですっ!」

顔を真っ赤にしながら、メイの口を手で塞ごうとするキサナ。

「へぇ……じゃあ、メイと一緒の布団で眠ったり?」
「キサナちゃんの、意外な一面って感じね」
「それから、他にも……むぐぐ……キサナ、行儀が悪いぞ!」
「だって、メイが!」

席を立ち、言い合いを始めるメイとキサナを見て、苦笑するラブたち。

「まあまあ、二人とも……」
「でも、こんなに慌てるキサナちゃん、初めて見たかも」
「まったく……本当に、仲が良いんだから」
「ケンカするほど……ってやっちゃな!」
「なんだか、うらやましいわ」
「プリップ~~♪」


***


その日の夕方。
ラブたちが帰った後の、メイの家。

「もしかして、まだ怒ってる?」

ソファーに腰かけ、膨れっ面でそっぽを向いているキサナ。

「別に……ただ、秘密にしておいてほしかっただけです」
「あはは……ゴメン、ゴメン」

夕食の支度をしながら、背中越しに返事するメイ。

「でもね……正直、私も寂しいと思ってる。キサナがここにいること、当然みたいに思ってたから」
「……メイ」

振り返るキサナ。

「メイは……私のことを、忘れずにいてくれますか?」

台所の水音にかき消されそうな、微かな声でメイに語りかける。

「…………」

メイの手が蛇口を閉める。
唐突に訪れた静寂の中で、こぼれ落ちた一滴が、小さな音を立てる。

「……当たり前じゃないか」

背を向けたまま、呟くメイ。
その言葉に微笑み、ソファーに身体を預けるキサナ。
ほのかに頬を染めて、とても幸せそうな……それでいて、切なげな表情。


***


早朝の公園。
集まったキサナとメイ、そしてラブたち。

「ダークルンは、シフォンの力に反応することがわかっています。万一の場合を考えて……タルトさんは、この子と一緒にここに残ってください」
「そか……そやったら、ここでお別れやな」

しゃがみ込み、タルトの両手を握るキサナ。

「プリキュアたちのこと……よろしくお願いします」
「ああ。キサナはんも、達者でな」

タルトの背から、キサナに向かって小さな手を伸ばすシフォン。

「きさ、な……」
「元気でね、シフォン」

シフォンの頭を優しく撫で、微笑むキサナ。

「……パッションさん、お願いします」
「わかったわ」

頷き、リンクルンを起動するせつな。
アカルンを呼び出し、鍵穴に挿し込む。

「……夜の王国、トワイライトへ!」

赤い光がキサナ、メイ、ラブ、美希、祈里、せつなの六人を包み、次元の彼方へと導く。


***


青白い月光が、見渡す限りの廃墟を照らし出す。
その中心には、巨大な墓標のような、十字架の形をした塔がそびえ立っている。
動くもの一つ無い、死に絶えた世界がそこにあった。

「ここが……トワイライト!?」
「でも……」
「これじゃ、まるで……」
「……今こそ、全てをお話しましょう」

愕然とする五人に向けて、ゆっくりと真実を語り始めるキサナ。

「トワイライトは……遥か古代に滅亡し、誰からも忘れ去られた王国なのです」
「……!」
「何ですって!?」
「……かつてこの地で、プリキュアと魔人たちとの、全ての世界の命運を賭けた、決戦が行われました」

遺跡と化した廃墟の群れを見つめながら、そこに過去の光景を思い描くキサナ。

「結果、プリキュアは辛くも勝利し、魔人たちの力をダークルンに変えて封印しました。そして、万一の場合に備えて……時の女王クイーン・トワイライト13世が、ダークルンを封印するための道具の、設計図を遺したのです」
「……それが、リングルン……」

メイの言葉に頷き、話を続ける。

「……しかし、戦いはこの世界に甚大な被害をもたらしました。わずかに生き残った住人たちも別々の世界へ散り散りになり、王国は亡びたのです」
「じゃあキサナちゃんも、別の世界に移り住んだトワイライトの人たちの、末裔なのね?」
「…………」

静かに首を横に振り、否定するキサナ。

「キサナ?」
「この姿は、メイの記憶から借りたもの。……今から、私の本当の姿をお見せします」

キサナの身体が半透明に霞み、その胸に小さな妖精の姿が浮かぶ。
息を呑むメイ。

「……そんな……!!」

現れたのは、黒い鍵を象った、妖精の姿。

「嘘でしょ……!?」
「まさか……キサナが……」

テレパシーによって響く声が、五人の心に真実を刻み込む。

『ダークルン・イニシャルX、“キサナドゥ”。……それが私の、本当の名前です』


***


街の東側に広がる公園。
かつては多くの人々が集い、笑顔を交し合ったであろう場所。

「……私は、ダークルンを管理するためのダークルン。古代の戦士、キュアグレープの人格を基に造られた、プログラム・スピリットです」

今は無人の廃墟と化したそこで、枯れた噴水の跡に腰掛けるキサナ。

「ここは、本当の私……キュアグレープが、大好きな場所でした。もっとも私は、内蔵されたデータの上でしか、知りませんでしたけどね」

月明かりの下、愛おしそうに、どこか寂しげに、街並みを見渡す。

「なんでだよ、キサナ……」

うつ向いたメイの唇が微かに動き、怒りと悲しみがない交ぜになった呟きが漏れる。

「なんで今まで、黙ってたんだよ」
「ごめんなさい。……でも、メイは優しいですから。この定めを知れば、キイマジンと戦うことを、ダークルンを封印することを、ためらってしまう……そう思ったから」

メイの左手を取り、リングルンを見つめながら、ゆっくりと語りかけるキサナ。

「最後のお願いです。……私を、封印してください」
「なっ……!?」

言葉を失うメイに、ただ穏やかな表情で告げるキサナ。

「私がリングルンのシステムと完全に同化すれば、二度とダークルンが解放されることはありません」
「待って! それじゃ、キサナちゃんは……!」
「ダークルンと一緒に……」
「永遠に、眠り続けなきゃならないってこと!?」

ラブたちの方を振り向き、小さく頷くキサナ。

「元々、それが私の使命なのです」
「……嫌だ……。私は、嫌だ! そんなの、絶対に許さない!!」

キサナの両肩を掴み、必死に叫ぶメイ。

「キサナが言うならいつだって、一緒に寝てあげるから! 料理だって、もっと上手くなってみせるから!」

使命もプライドも投げ捨てて、ただ、大切な家族のために。

「……メイ……」

その想いを全身に感じながら、ただ目を逸らすしかないキサナ。

「ドーナツも、好きなだけ食べていいんだよ? ……だから……だから」

瞳を潤ませ、絞り出すように声を放つメイ。

「一緒に帰るんだ! 私たちの家に、帰るんだ!!」

メイが感じている心の痛みが、言葉を通じてキサナの胸にも突き刺さる。

「メイ、でも……」
「私はみんなの、一人ひとりの幸せを守るために、プリキュアになったんだ。……だから!」

メイの瞳をまっすぐに見つめ返し、安らかな表情を浮かべるキサナ。

「だから、です。みんなの幸せのために……どうか私の願いごとを、叶えてください」
「……キサナ……!!」
「もう一度言います。……私を封印しなさい。キュアグレイブ」

感情を押し殺したキサナの声が、メイを突き放す。

「私は……私は」

唇を噛み締め、左腕のリングルンに視線を落とすメイ。
二人のやり取りを、静かに見守るラブたち。

「メイさん……」

……その時。
唐突に静寂を打ち破って、地鳴りの音が廃墟に響き渡る。

「これは……!?」
「何なのよ、いきなり!?」

地面の揺れと呼応するように、キサナの瞳が紫色の輝きを放つ。

「……まさか!」


***


街の中央にそびえる、十字架型の塔。
亡びた王国を象徴するようなその建物を、見上げるキサナ。

「あの塔がどうかしたの!?」
「あれはトワイライト城の跡地に建てられた鎮魂の塔、グレイブタワー。全てのダークルンは、あの内部に封印されていました。しかし、この反応は……」

立っていられない程に、激しくなる揺れ。

「ここは危険です! 皆さん、あの丘へ!」

次々と倒壊する建造物群。
被害を避け、高台へと登るメイたち。
街の中心部が陥没し、地の底から現れた巨大な蔓のような物が、タワーに絡みつく。

「間違いない……でも、まさかあのダークルンが……」
「どういうこと!? 最後のダークルンは、封印したはずなのに!?」
「……確かに、メイの世界へ解き放たれたダークルンは、全て封印しました。しかし、今までずっと、眠り続けていたダークルン……二度と目覚めないはずだった、最強最悪のダークルンが、ここにはいたのです!」

漆黒に染まったタワーの壁面に、無数の紅い眼が、次々と開いていく。

「イニシャルY……滅びの大樹、“ユグドラシル”」

大地を割って伸びる、無数の黒い根。

「目覚めないはずのダークルンが、どうして!?」
「……ラビリンスの侵攻とFUKOゲージの蓄積が、影響したのかもしれません」

グレイブタワーを完全に取り込み、誕生するキイマジン・ユグドラシル。

『ギィィィィィィィ!!』

メイたちの存在に気付くと、根の数本が丘を目指して迫る。

「みんな、行くよっ!」

リンクルンを取り出し、起動するラブたち。
四色の光を纏い、特殊空間を一気に駆け抜ける。

「もぎたてフレッシュ、キュアピーチ!!」
「つみたてフレッシュ、キュアベリー!!」
「とれたてフレッシュ、キュアパイン!!」
「うれたてフレッシュ、キュアパッション!!」

悠久の時を越えて今、再びこの地に舞い降りる戦士たち。

「レッツ!」
「「「「プリキュア!!」」」」

四方に別れ、ユグドラシルを囲むように突撃するピーチたち。

「皆さん……待ってください!」

触手のようにうねる無数の根が、プリキュアの行く手を阻む。

「これじゃ、近づけないわ!」
「みんな、スティックとハープでいくよ!」

一斉にリンクルンを構える四人。

「待ってください! ……攻撃しては駄目です!」
「キサナ!?」
「どういうこと!?」
「ユグドラシルは滅びの大樹……あらゆる物を自らのエネルギーに変換し、吸収してしまいます。大地、光、水、生命……プリキュアの力でさえも」
「そんな!?」

根の先端に開いた巨大な口が、廃墟の建物や路面に噛り付き、凄まじい勢いで喰らい始める。
さらに増殖した根が全方位に向かって伸び、急速にテリトリーを拡大していく。

「一度目覚めてしまえば、全ての世界を喰らい尽くすまで、生長を止めることはありません」
「そんな相手、どうやって倒したらいいのよ!?」
「幸いユグドラシルはまだ目覚めたばかり、その能力も完全ではありません。変換しきれない程の力を一気にぶつければ、あるいは……」
「……だけどもし、私たちの力が及ばなかったら……」
「あいつに養分を与えるだけになる、ってことね」

ユグドラシルの根の何本かが捻れて螺旋を描き、激しい回転で空間を攪拌する。

「いけない……!」

渦の中に現れる、次元の扉。

「ユグドラシルが、別の世界へ根を伸ばし始めました。……もう、時間はありません」

リンクルンを握り締め、全員の顔を見渡すピーチ。

「やろう、みんな」
「ピーチ……」
「それがあたしたちの、プリキュアの使命だから」

ピーチの言葉に頷き、リンクルンを構えるベリー、パイン、パッション。

「「「「ハッ!!」」」」

それぞれの武器を手に取り、ユグドラシルに向かって飛翔する四人のプリキュア。

「キュアスティック! ピーチロッド!!」
「ベリーソード!!」
「パインフルート!!」
「パッションハープ!!」

四人の心と力を一つに重ね合わせ、一気に解き放つ。

「「「「プリキュア・クアドラプル・フレ―――――ッシュッ!!!」」」」

網目のように絡み合い、障壁となったユグドラシルの根に、プリキュアの力が炸裂する。

「「「「ハアアアアアアッ!!」」」」

光の四重奏を、物ともせず受け止めるユグドラシル。

『ギィィィィィィ』

プリキュアの力を闇のエネルギーに変換して取り込み、ますます増殖していく。

「ダメ……吸収されちゃう!?」
「みんな、あきらめないで! あたしたちの力を、全部振り絞るよ!!」

両者の激突を見守る、キサナとメイ。
プリキュアを嘲笑うかのように、次々と新たな根を伸ばすユグドラシル。

(やはり、力が足りない……。古代と違い、プリキュアがたった四人しかいない、この状況では……)

「ねぇ、キサナ」
「メイ?」
「リングルンの機能を使って……あいつが吸収したエネルギーを、プリキュアの力に再変換できないかな?」
「……!」

メイの提案に、キサナの中で小さな希望の火か灯る。

「確かにキュアグレイブは、ダークルンのエネルギーをプリキュアの力に変換して戦っていました。しかし……」
「もう一度、もう一度だけでいいんだ。グレイブに変身する方法は、本当に残っていないの?」
「……それは……」

ためらうキサナの肩に触れ、顔を覗き込むメイ。

「どんな方法でもいい。少しでも可能性があるなら、教えて」
「メイ……」
「お願い、キサナ。最後のダークルンを封印するまでは……私は、プリキュアとして戦わなくちゃいけないんだ」

葛藤に揺れるキサナの瞳と、正面から向かい合う。

「叶えさせて、私に。……あなたの願いを」

メイの目を見つめ返し、ゆっくりと頷くキサナ。
その瞳に十字の紋章が浮かび、全身から紫色のオーラが立ち上る。

「……リングルンを暴走状態にし、強制的に起動。私がメイと一体化し、その力を制御しながら戦闘を行います」

キサナの手がリングルンに触れると同時に、メイの左腕に電流のような痛みが走る。

「ただしあなたの身体には、想像もつかない程の負担がかかることになります」

再び、正面から見つめあう、目と目。

「やれますか? メイ!」

キサナの手の上に自らの手を重ね合わせ、微笑とともに頷くメイ。

「……当たり前じゃないか」

ゼロになっていたリングルンのゲージが急上昇し、MAXになる。
キーを挿し、中枢の次元球を作動させるメイ。

「「チェインジ・プリキュア!」」

互いの腕をクロスし、叫ぶメイとキサナ。
展開された特殊空間に包まれ、手を繋いで次元の地平を舞う二人。
ダークルンの姿となり、メイの身体に吸い込まれるようにして一体化するキサナ。
メイの全身が漆黒に染まり、両目が真紅に輝く。

『「クロス・オーバー!」』

身体を覆いつくした闇の力、黒い柩を一気に打ち破り、その内部から現れる美しき影。
流れる銀の髪。
煌くプラチナの瞳。
紫のラインが全身を駆け、
紅い炎のマフラーが背から噴出する。

『「冥府を望む玉座! キュアグレイブ!!」』

この冥府を統べる女王にして、眠れる魂の静寂を保つ墓守。
キュアグレイブが今、夜の王国へと舞い戻った。

『大丈夫ですか? メイ!?』
「ああ……」

グレイブの全身に稲妻のような亀裂が走り、紅いエネルギーが血のように滴る。

「くっ!」

容赦無く襲いかかる激痛に、メイの意識が歪む。

「ぐあっ……う……っ!!」

五体を引き裂かれる感覚に、己の両肩を抱えて耐え忍ぶグレイブ。

『メイっ!!』

拳を固く握り、震える脚で大地を踏みしめるグレイブ。

「ぜんぜん、平気だよ。……だって、キサナをすぐ近くに、感じているから」

汗の雫を落としながら、一つ一つ、言葉を紡ぐ。

『メイ……』
「キュアグレイブは、一人じゃない。いつだって、一人じゃなかった」

苦痛に喘ぎながら、真っ直ぐ前を見据える。

「こうしてキサナと、みんなと、一つに繋がっているから」

その瞳に燃え上がる闘志。

「だから私は、負けない……負けるわけが、無い!!」

グレイブの、メイの意志に応えるように、激しく炎と閃光を噴き上げるリングルン。

「行こう、キサナ。……これがキュアグレイブの、最後の戦いだ」
『はい!!』

片手の一閃によって巻き起こされた衝撃波が、周囲に伸びた根の全てを薙ぎ払う。
マフラーを翼のように広げ、タワー目がけて飛び立つグレイブ。

「キュアグレイブ!?」
「メイさん!」
「メイ……!」
「遅いわよ、メイ!」

駆けつけたグレイブの姿に、四人のプリキュアの中にも再び、希望の光が輝き始める。

「ごめん。遅れた分は、超光速で取り戻す!」
『皆さん……今こそ最後の力を、貸してください!!』
「わかった!」
「「「「ハアアアアアアアッ!!」」」」

キサナの号令を受け、持てる力の全てを解き放つピーチたち。

「メイさん!!」
「……うおおおおおおおっ!!」

全身をマフラーで包み、紅い炎の塊となってタワーに突撃するグレイブ。
ユグドラシルの心臓部へ、一気に左腕を叩き込む。

『ギュイイイイイイイイ!?』

リングルンが放つ閃光が、闇を裂く。
再変換されたプリキュアのエネルギーが、ユグドラシルの体内で一斉に猛り狂う。

『ギュオ、オオオオオオッ!!?』

光のシャワーを全身から噴き上げ、根を滅茶苦茶に振り回すユグドラシル。
トドメとばかりに、右手に握ったトンファーを突き立てるグレイブ。

「ロック……ブレイクウウウウウウウッ!!!」

心臓を貫き、ダークルン本体をえぐり出す。

『ギィエエエエエエエエエエ!!』

内部から爆裂し、断末魔の叫びを上げて崩れ落ちるユグドラシル。
噴き出したエネルギーが、紅い大輪の花となって夜空に開く。

「やった!!」
『やりましたね、メイ』
「……うん。みんなと……キサナと、私の力でね」

枯れ果て、土に還っていく無数の根。
その姿を取り戻す、グレイブタワー。
王国の墓標を静かに見上げる、“六人”のプリキュア。


***


崩れ落ちた廃墟の真ん中で、見つめ合うメイとキサナ。

「メイ、これを」

十字架を象ったペンダントを、懐から取り出すキサナ。

「リンクロスです」
「リン、クロス……?」
「キュアグレープが遺した物です。力の源となるパープルンが失われた今、変身の道具として使うことはできませんが……どうかお守りとして、持っていてください」

ペンダントを手渡したキサナの手が、徐々に透けていく。

「キサナ!?」
「……先程の戦いで、力を使い果たして……この姿を保つことすら、難しくなってきています」

キサナの身体は霞み、今にも消えようとしている。

「でも最後は、あなたにもらったこの姿で……笑顔で、お別れしたいんです」

メイを見上げて、にっこり笑うキサナ。

「ごめん、キサナ……」

メイの声が震える。

「私、やっぱり笑顔が苦手みたい。……うまく……笑えないよ」
「いいんです。私にはちゃんと、メイの笑顔が見えていますから」
「キサナ……」

メイの目から、涙が零れ落ちる。
一つ、また一つと、小さな雫が止め処なく流れる。

「あなたを助けたいのに……幸せにしてあげたいのに」

リングルンに落ちた一滴に応えるように、姿を現す緑色の妖精。

「ミドルン……?」
『キュイ!』

ミドルンの額から放たれた光が、二人の周囲に幾つもの映像を映し出す。

「これは……!」

キサナがメイと、ラブたちと、一緒に過ごした日々の記憶。

「私たちの、思い出……!」
「……私は造られた存在。姿も人格も、全てコピーでしかありません。……でも、この思い出だけは。メイやみんなとの思い出だけは、本物です」

自分の胸に手を当て、これ以上ないくらいの幸せな表情で、微笑むキサナ。

「私の幸せは……メイと過ごした日々は、ずっとここにあります」

宝石のようなひとしずくの涙が、その頬を伝う。

「そうだよね。……キサナの中にも、私の中にも」

キサナに向かって、ゆっくりと左手をかざすメイ。

「絶対に消えない、私たちの幸せがあるんだよ……ね」

メイの掌がキサナの胸に触れ、そこからゆっくりと光の輪が広っていく。

「キサナ……怖くない? 痛くない?」

心配そうなメイの左手に、そっと自分の両手を添えるキサナ。

「平気ですよ。……メイが、こんなに近くにいてくれるんですから」

眩い輝きに満たされて、キサナの姿が消えていく。
メイの視界の全てを、白い闇が奪っていく。

『……さようなら』

闇の中で聞いた、最後の言葉。
再び、目を開けた時……彼女はもう、そこにはいなかった。
メイの左腕を離れたリングルンが小さな光に変わり、タワーの頂へと昇っていく。

「キサナ……」

その光の中に一瞬、キサナの笑顔を見るメイ。

「キサナ――――――っ!!!」

王国の全てに届く程の声で、叫ぶメイ。
遠ざかる光を見上げながら、その場に崩れ落ちる。

(進んでください、メイ。あなたの道を。……仲間たちとともに)

喉が張り裂けんばかりに声を上げて、子供のように泣きじゃくるメイ。
彼女に寄り添い、去り行く光を見送るラブたち。


***


全てが終わり、再び静寂を取り戻したかに思われた、この世界。
トワイライトの地の底で、いま人知れず、目覚めようとする存在があった。
何本もの石柱が並ぶ、神殿のような空間の中央。
氷で造られた柩の中に、一人の少女が横たわっている。
人形のように整った顔を飾る、銀色の髪。
すらりと伸びた肢体に、燐光を放つ薄布一枚を纏って。

『キィィ』

どこからともなく現れた黒い鍵の妖精が、氷の柩をすり抜ける。
少女の胸に吸い込まれ、一体化する妖精。
やがて、雪のような白銀の睫毛が震え、目蓋がゆっくりと開いていく。
……その瞳が映し出す物は、何か?
一つの終焉とともに、次なる舞台の幕が今、静かに上がり始めていた。





つづく




******


次回のフレッシュプリキュア! クロス†オーバーは、
第15話『インフィニティ現れる! プリキュア最期の日!?』をお送りします。お楽しみに!





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テーマ : プリキュア
ジャンル : アニメ・コミック

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No title

闇キュアとグレイブが近しい?サイドストーリー?おぉこれは期待!

ダークルンはメイさんの世界にいたやつだけではなかったと…ほほぉ奥が深い…
キュアグレープ、ですか。
グレイブとグレープって何かが似てますね。
今回みたいな最終回張りの展開、大好きです
これからも期待してます!
最後のシーン、キサナ…?
そしてまさか、本物のグレープ…?

コメントありがとうございます

>柳星張さん

ダークに関してはまだ色々と推測の域を出ないので、当分は無理っぽいですけどね。
いつかはグレイブと絡ませたいです。

14話は最終回としても通用するように、意識して書きました。
本当の最終回である26話と比べても、限りなく等価値になると思います。

グレープの話は後ほど、補足説明を設けます。

とりあえず前半終結

うーん、複雑な気持ちで前半終結を読ませて頂きました。
後半は本編のインフィニティ編とのクロスオーバーの形になると思いますが、どう展開していくか、今から楽しみです。

>グレープの話は後ほど、補足説明を
楽しみにしております。あと時間がありましたらダークルンの未解説分も・・・。

コメントありがとうございます

>畑中智晴さん

今回のエピソードから感じられるのが喪失感や唐突さ、やりきれなさであるならば、ある意味では狙った通りの作品を書けていることになるのですが……。
ここがこうならば……というのがあれば、今後のためにお聞かせ願いたいです><

しばらくはインフィニティ編に沿って展開していくことになりますが、キサナやトワイライトをめぐる物語は、まだ始まってすらいない……とだけ言っておきましょう。
数日中にはダークルン紹介③を載せますので、そちらもよろしくお願いします。
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Author:ヤネ
フレクロF、今度はイニシャルWW編です。

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