クロスオーバー! フレッシュプリキュア! クロス†オーバー 第18話

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フレッシュプリキュア! クロス†オーバー 第18話

フレッシュプリキュア、南へ(サウラーは出てこないけど)!
沖縄を舞台に展開する青春百合模様。
今回は、いつもの『クロス†オーバー』とは一味違う!?
第18話始まります。


******


飛行機を降りると、空港内の暑さに驚く。
ガラス張りの廊下に差し込んでくる南国の日差しに、目を細めるメイ。

「あつ……」

メイたちの学年は、修学旅行で沖縄を訪れていた。

「どーしようせつな、ホントに来ちゃったよ~~!」
「落ち着いて、ラブ」
「落ち着いてなんかいられないよぉ~~~~!」

まるで強い日差しをそのままエネルギーに変えてしまったかのような、ラブのはしゃぎっぷりに苦笑しながら……視線を横に流す。

(さて……)

静かに、しかし燃えるような瞳でラブを見つめる少年が一人。
……知念大輔。

(あいつ、やる気満々じゃんか)

ラブと大輔の二人を視界に収め、かつてない戦いの予感に身を引き締めるメイ。
その胸で、リンクロスが淡く緑色に輝き始める。

「……え?」

それに呼応するように、ガタガタと揺れるラブのトランク。
中に潜んでいるのは、間違いなく……。

「……こりゃあ、ただの修学旅行ってわけには、いかなくなってきたな……」
「メイさん……?」

腕を組んで眉間に皺を寄せるメイを、不思議そうに見つめる由美。



フレッシュプリキュア! クロス†オーバー
第18話『ハートブレイク!? 沖縄修学旅行!!』



空港内をまとまって移動する一行。

「どうすんの、桃園さん?」
「どうするって?」

周囲の様子を伺いながら、ラブに耳打ちするメイ。

「タルトさんと、シフォンちゃん。ついて来ちゃってるでしょ?」

メイの言葉に、ガタリと反応するトランク。

「東さんに頼んで、向こうに帰してきた方がいいんじゃない?」
「それは、そうかもしれないけど……でもね」

トランクを見つめながら、優しく微笑むラブ。

「シフォンが、一緒にいたいって言ってくれたの」
「……え?」

懇願するように、メイの顔を見上げるラブ。

「あたし、シフォンにはもっと、色々なものを見せてあげたいんだ。……だから……」

その上目遣いには敵わない。
ため息をついて、目を逸らすメイ。

「……そういうことなら、しょうがないかな」
「ありがと、メイさん!」
「桃園さんには迷惑かけないように、しっかり面倒見ててくださいね!」

トランクに顔を近づけ、タルトに呼びかけるメイ。

(わ、わかっとるがな……)

その威圧感に、トランクの中で縮こまるタルト。


***


丘陵から青海を望む勝連城跡。
長大な石垣がうねる今帰仁城跡。
池を囲み、移り変わる景色を内包する識名園。
そして琉球文化の象徴、真紅の首里城……と、次々に世界遺産を巡る一行。

「でっかい! それに、きれい!!」
「城自体は、最近復元されたもんだけどな」

張り切ってラブを案内する大輔。
風景にカメラを向けながら、その様子をさりげなく眺めているメイ。
沖縄の風と光、刻まれた歴史の中にあっても、ただ遠巻きに二人の姿だけを追っている。

(あいつ、沖縄出身だっけか。……張り切るよな、そりゃ)

大輔と並んで城郭を見上げるラブの、心から楽しそうな表情に、メイの胸が小さくざわめく。

「メイさん、写真撮ってよ!」

大輔の隣から手を振り、呼びかけるラブ。

「……やだ」

カメラを下ろし、ぷいと顔を背けるメイ。

「……やっぱ俺、あいつに嫌われてんのかな?」
「メイさん……」


***


道中、立ち寄った物産店。
クラスメイトたちが楽しそうにお土産を選ぶ中、一人つまらなさそうにしているメイ。
そんな様子を見て、女子の何人かが集まってくる。

「メイさんも、一緒におみやげ見ようよ~~?」
「うちの一族はみんな世界中を飛び回ってるようなのばっかだし、今さらお土産なんて……」
「そうじゃなくて!」
「メイさんの、自分のためのおみやげを買えばいいじゃない!」

メイを囲み、力説する女の子たち。

「……自分の?」
「そ。みんなで過ごした思い出を、忘れないためにね」
「……思い出……かぁ」
「そうだよ~~。ほら、こっちこっち!」

熱意に押されて、棚を物色し始めるメイ。
数分後、決意の表情で品物を手に取る。

「よし……これに決めたよ」

メイが広げたのは、でかでかと達筆で“海ぶどう”の文字が書かれたTシャツ。
それを見て、水を打ったように静まり返る女の子たち。

「どうしたみんな、リアクション薄いぞ」
「……えと……」
「それ……おじいちゃんとかに……買ってくのかな?」
「はぁ? 私自身のためって、言ったじゃないか」
「…………」

メイのセンスの酷さに、絶句する友人たち。

「カワイイしさ、私“グレープ”には思い入れがあるんだよね」
「メイさん、ぶどうと海ぶどうとは、だいぶ違うよ……」
「……そうなの? まぁ、カワイイからいいけど」
「あはは……それはよかった……」

周囲で起こる乾いた笑いに、首をかしげるメイ。
そんな所へ、ラブと大輔の会話が聞こえてくる。

「これ、可愛い!」

棚に並べられた置物の一つを、手に取るラブ。
すかさず解説を入れる大輔。

「沖縄の伝説の獣、シーサーだ。門や屋根の上に置くと、魔除けになったり、幸せを招く効果があるって言われてるんだ」
「へぇ~~……沖縄の幸せアイテムなんだね!」

目を輝かせて、小さなシーサーの群れを眺めるラブ。

「じゃあこの、ちっちゃいやつを買ってこうかな!」
「小さいやつなら、二つ買ってったらどうだ? シーサーって、本来は二体一組で対になってるもんだからな」
「そうなんだ……」

それを聞いて、しばし何かを考え込むラブ。

「……ラブ?」
「じゃああたしがこっちを買うから、大輔はそっちね!」

デフォルメされたシーサーの一体を手に取り、隣にあったもう一体を大輔に手渡すラブ。

「か、勝手に決めるなよ……!」

文句を言いつつ、ラブと一緒にシーサーをレジに運ぶ大輔。
その様子を見て、ゆっくりとTシャツを棚に戻すメイ。

「あれ、買わないの?」
「うん……もうちょっと、考えることにした」

“海ぶどう”をひとまず保留した様子に、ほっと胸を撫で下ろすクラスメイトたち。
複雑な表情で、ラブと大輔の後姿を見送るメイ。


***


移動中、観光バスの車内でも腕を組んで思案し続けているメイ。

(あいつ、こっちで桃園さんに告白するつもりなのかな……)

ふとよぎった考えを、頭をぶんぶん横に振って否定する。

(いや、そんな度胸あるわけないし……絶対、意地張って失敗するパターンだし……)

「メイさん?」

そんなメイの様子を、隣の席で訝しげに見つめる由美。

(それに、桃園さんがOKするわけ……)

そこまで考えて、“ラブ本人の気持ち”の所在に思い当たるメイ。

(……桃園さんは、あいつのことをどう思ってるんだろう?)

自分より……メイより遥かに長い間、そばにいる大輔のことを。
実際、ラブが大輔を大切な友人としているのは、喧嘩するほど仲が良い……などと言うまでもなく、明らかなことだ。
もちろん、「友達」と「恋人」という存在の間には、大きな隔たりが横たわる。
だがもし、自分の本当の感情に気付いてしまったら――。
いつかのラブの言葉を、思い出すメイ。

『さっきの大輔は、すごくかっこよかったよ』

その隔たりを、一足で飛び越えてしまうことだってある。

「ねぇメイさん、何をぶつぶつ言ってるの? さっきから変よ?」
「そんな……そんな……こと……」

メイの胸のざわめきが、にわかに大きくなる。

「……ないよね……?」
「あるよっ!」

由美に軽く怒鳴られて、初めて我に返るメイ。

「え……なに、どうしたの?」
「せっかくの修学旅行なのに、全然楽しそうじゃないんだもん」

本気で心配そうな由美に、軽く笑って答えてみせるメイ。

「気にしないで。……ちょっと、考え事をしてただけだし」
「気にするよ。友達でしょ、私たち」
「……うん……」

反省しつつ、小さく頷くメイ。
ほぼ同時に、由美の携帯のバイブレータが鳴る。
液晶画面を開いてすぐ、その表情がぱっと明るくなる。

「彼氏さんからメールかい?」
「えっ!?」
「顔を見ればわかるって。……えらく幸せそうだったし」
「や、やめてよ、メイさん!」

顔を真っ赤にし、携帯を閉じる由美。

「おみやげの催促よ。……嫌になっちゃうよね、もう」

言葉とは裏腹に、その瞳にはキラキラと、南の海のような輝きを湛えている。

「幸せ……か」
「え?」

ふと、どこか虚ろな笑みを浮かべて、窓の外を見るメイ。

「桃園さんも、その方が幸せなのかな……」


***


気もそぞろに時は過ぎ、日が傾き始めた夕刻。
砂浜でバーベキューの支度をする生徒たち。
ため息をつきながら、洗い場で野菜を切るメイ。

「由美も言ってたけど……メイ、ちょっと変だわ」
「……え?」

隣で作業しながら、話しかけるせつな。

「……ごめんね、東さん。でも、心配することなんてないから」

繕って明るい口調で応じるメイ。

「……きっと、大丈夫だから……」

まるで、自分に言い聞かせるように呟く。

「……大輔君のこと?」
「!」

心の中を言い当てられ、包丁を動かす手を止めるメイ。

「そうなのね?」
「…………」
「大輔君がいると、ときどきメイの様子がおかしくなるもの」
「……うん」

自分の手元を見つめたまま、観念したように頷く。

「メイは大輔君のこと、嫌いなの?」
「それは……」

せつならしいストレートな質問に、口ごもるメイ。
沈黙の後……小さく、しかしはっきりと答えを口にする。

「……嫌い」

その言葉を口にしたことで、堰を切ったように、一気に溢れ出そうとする感情。

「大っ嫌いだ……」

夕日を遮る、小さな屋根の下。
薄闇で震えるメイの、今にも包丁を取り落としそうな手に、そっと自分の手を添えるせつな。

「どうして? ……メイは、ちょっとの理由で人を嫌ったり、否定したりしない。私がイースだった頃も、正面から向き合ってくれたじゃない」
「違うんだ……あいつは……」

震える口で少しずつ、心の決壊を防ぐように、語り始めるメイ。

「あいつは、私と同じだから……」
「……同じ……?」
「桃園さんともっと仲良くなって……自分だけを見ていてほしいって、それだけを考えてる」

揺れる水面を、そこに映った自分の姿を覗き込む。

「勝手だよね。……自分を見てるみたい。だから、嫌い」
「……メイ……」
「そんな心で、桃園さんを汚したくない……汚されたくないの」

流し台にもたれかかるように、両膝をついてうずくまるメイ。

「嫌なんだ。桃園さんが変わってしまうのが。私の大好きな桃園さんが、遠くに行っちゃうのが。……耐えられ、ない」

ずっと心にうごめいていた何かが、胸を裂いて表に出ようと暴れ回る。
内側から圧迫されて軋む胸を、必死に押さえるメイ。

「メイ……私は、大輔君のことも、メイのことも好きよ? きっと、ラブだってそう思ってるはずだわ!」
「違う……そうじゃない……そうじゃないの……」

苦しそうに息をするメイを、ただ抱きしめることしかできないせつな。
帰りが遅い二人の様子を見に来る、ラブと大輔。

「おい、どうしたんだ!?」
「メイさん!?」

座り込んだメイに駆け寄るラブ。
腕を掴もうとしたその手を、払い除けるメイ。
まるでラブを避けるように……否、自分から遠ざけるように。

「……!」
「なんでもない。暑さにやられただけだから」

詮索を断つように、感情を廃した声で言い放つ。

「メイ……さん……」

立ち上がり、野菜の入った籠を抱えると、洗い場を後にしようとするメイ。

「ちょっと休んでくるから。……残りの野菜、お願い」
「お前、そんな言い方……!」

掴みかかる勢いの大輔を、そっと制するラブ。

「やめて、大輔。……メイさんと、ケンカはしないで」
「だけど、あいつ!」
「お願い……」

ラブに頭を下げられ、ため息をついて頭を掻きむしる大輔。

「わかったよ……」

生徒たちがバーベキューを食べて団欒する中、一人離れて座っているメイ。
皿に載せた串を、メイの所へ持っていくせつな。
それを、遠くから見つめているラブ。


***


洗い場で、バーベキューの後片付けをするラブとせつな。

「せつな。……メイさんに、何があったの?」
「……それは……」

メイの言葉を思い返しながらも、説明を躊躇うせつな。
ラブ本人に伝えてよいことなのかどうか。
何よりもせつな自身が、メイの心を理解できずにいる。

「私にも、わからないわ」
「そっか……」

つい先程、ここであった出来事。
メイの様子を脳裏に描きながら、中空を仰ぐラブ。

「ときどき、メイさんの心が全然わからなくなるんだ。……友達になれたと思ったのに」
「ラブ……」
「あたし、いつもメイさんの本当の気持ちに触れられない」

悲しげな横顔に、言葉を探すせつな。
その時、唐突に流し台の向こうから現れる白い姿。

「ピーチはん!」
「タルト!?」

シフォンを連れて、気ままな沖縄観光を楽しんでいたはずのタルト。

「シフォンがインフィニティになって、いなくなってしもうた!!」
「「ええ!?」」
「森の方に行ったんやけど……」

刻々と闇に支配されつつある、原生林に目を向けるラブたち。

「おい、こっちは終わったか?」
「ごめん大輔、あたしたち先に行くから!」
「はぁ!?」

またしても様子を見に来て早々、後片付けを頼まれる大輔。

「……そうだ!」

走りかけて立ち止まり、ポケットを探るラブ。

「これ、メイさんに渡して」

取り出した小さな包みを、大輔に握らせるラブ。

「これを……俺が?」
「渡してほしいの。大輔から、メイさんに」


***


白い光を放ちながら、森の中を浮遊するインフィニティ。
それを追うようにして、巨大な黒い獣が密林を駆け抜ける。

『ソレワターセェェェェェ!!』

木々を押し退けて現れる、獅子の姿のソレワターセ。
その背に跨った、一人の男。
ラビリンス幹部、ウエスター。

「まさか沖縄にインフィニティがいるとはなぁ!!」

そう……この男もまた、沖縄へ上陸していたのだ。
ただし、観光目的でだが。

「今日の俺は最高に運がいい!! ツキまくってるぞおおおおお!!」

シーサーソレワターセを操り、インフィニティに迫るウエスター。
そこへ、タルトとともに駆けつけるラブ。

「ソレワターセ!? どうしてあんたがここにいるのよ!?」
「インフィニティを奪いに来たに決まってるだろう!」

尻ポケットに観光雑誌をねじ込んだまま、恥ずかしげも無く、堂々と言い放つウエスター。

『ワガナハ インフィニティ……ムゲンノ メモリーナリ……』
「タルト、クローバーボックスを!」
「させるかああああ!!」

牙を剥いて猛然と突進してくるソレワターセに対し、リンクルンを構えるラブ。

「チェインジプリキュア! ビートア―――ップ!!」


***


夕日が水平線に沈もうとする頃、宿へ入っていく生徒たち。
外のベンチに、一人座ったメイ。

「…………」

夜の気配に青く変わっていく空を、静かに眺めている。

「……おい」

メイの前に立つ影。

「……何の用だよ」

鬱陶しそうに視線を逸らすメイ。

「お前に、渡すものがあるんだ」

ジャージのポケットから、預かった包みを取り出す大輔。

「……ほら」
「…………」
「しょうがねえなぁ……」

メイに受け取る意志が無いと見ると、自分で包みを開け始める大輔。
茶色い包装紙の中から、厳つく、それでいてどこかユーモラスな顔が現れる。

「……え……」
「俺のとお揃いでさ。……嫌かもしんねーけど、あいつがこうしろって言ったんだからな」

それは昼間、ラブと大輔が一緒に買っていたシーサーの片割れ。

「でもそれ、桃園さんの……」
「違うんだよ。あのな……」

頭を掻きながら、決まり悪そうに説明する大輔。

「あいつ、自分の方は最初からお前にあげるつもりで買ったんだとよ。俺とお前に、もっと仲良くしてほしいからだってさ。……ホント、おせっかいなやつだよな」

小さなシーサーを、メイに向かって差し出す大輔。

「…………」

メイの目から、涙の筋が一本。
流れ星のように、落ちる。

「え!? お、おい……」

突然の涙に、慌てふためく大輔。
片手で頬を拭うと、勢いよく立ち上がるメイ。

「……そういうことなら、遠慮なくいただくぜ!」

大輔の手から、力任せにシーサーをふんだくる。

「黒須っ!?」
「なんくるないさ――――――っ!!」

道路を飛ぶように走り、海へ向かって疾走していくメイ。

「何なんだ、あいつ……?」

その背中を、呆然と見送る大輔。


***


満月が昇る、夕暮れの空の下。
白い砂を蹴り上げながら、波打ち際へとたどり着くメイ。

「ばっかやろおおおおおお―――――っ!!!」

心にくすぶっていた、全てのものを吹き飛ばすように。

「ばっかやろおおおおおお―――――っ!!!」

南の海に、その彼方へ沈みゆく夕日に、叫び声を轟かせる。
零れ落ちた涙が、潮風に混じって消えていく。

(……桃園さんは、何も変わっちゃいない。だから私は私で、ずっと変わらずに……そんな桃園さんを、好きでいればいい)

天に輝き始めた、無数の星々を見上げながら、誰にともなく呟く。

「……この気持ちを奪うことも、消し去ることも、誰にも不可能なのだから」

メイの言葉に、優しく応える無限の波音。
……そう。
宵空の端を僅かに染める、夕陽の紅も。
頭上に散らばった、星々の煌きも。
全ては何万年……何億年と変わらず、ここに在ったものなのだろう。
……そしてそれは、明日も同じく。
繰り返しの中で、またひとつになって新しい時を刻んでいく。

『オォォォォォォ……』

その時……静寂を破って海辺に響き渡る、人とも獣ともつかない唸り声。
リンクロスが激しく輝き、現れるミドルン。

『キュイ、キュイ!!』
「シフォンちゃんが……!?」

インフィニティの接近を感じ取ったミドルンの言葉に、事態を把握するメイ。
手の中の小さな“想いの形”を握り締め、森を見やる。

「……桃園さん……!」


***


(こいつ……強い!)

獣の怪力と敏捷性を持った相手に、苦戦するピーチ。
攻撃をかわし続けながらも、徐々に海辺の断崖絶壁へと追い込まれていく。

「……ハッ!」

天高く跳躍し、敵との距離を取ろうとするピーチ。
しかし、ソレワターセが巨体を僅かに屈めたかと思うと……砲弾のような勢いで、一瞬に肉迫する。

「速……っ!?」

正面から体当たりを喰らい、落下するピーチ。

『ソレワターセェェ!』

なおも追撃するソレワターセ。
地面を転がりながら、即座に態勢を立て直すピーチ。

「ハアアア!」

猛スピードで迫るソレワターセの鼻先に、正拳突きを見舞う。

「ハッ!!」

怯んだ敵の懐へ一気に踏み込むと、裂帛の気合と共に掌底を炸裂させる。

『ソレ……ッ!』

これには堪らず、大きく後方へ吹き飛ばされるソレワターセ。
乱れた呼吸を整えながら、構えを作るピーチ。
だがその背後には、崖が間近に迫っている。

「やるな……だが、所詮お前一人では勝てないぞ」
「……!」

土煙の中から、さしたるダメージを受けた様子も無く、立ち上がるソレワターセ。

「どうした? 降参するか?」
「シフォンは……渡さない……!」

自分の不利を身に感じながらも、敢然と立ち向かう意志を示すピーチ。

「ならば、お前を倒した後でゆっくり手に入れるとしよう!!」

ウエスターの命令に従い、迫り来るソレワターセ。

『ソレワターセェェェェェ!!』
「くっ……!」

その咆哮に、ピーチが身体を強張らせた瞬間。
洋上を駆け抜け、ソレワターセの目を眩ませる陽光。

『ソレェ!?』
「な、なんだ!?」

顔を覆い、慌てふためくウエスター。
後光の如く、ピーチの背から指す黄金の輝き。

「これって……」

目を細めながら、振り返るピーチ。
遥か水平線の彼方に沈んだはずの太陽が、朝日となって昇ってくる。

「夕日が……また昇る!?」

その光の中に、浮かび上がるシルエット。
……黒須メイ。

「メイさん!」
『ソレワターセェェェ!!』

怒りの雄叫びを上げ、ピーチを飛び越えてメイに襲いかかるソレワターセ。

「チェインジプリキュア!」

その言葉と共に、メイの前面に展開された魔方陣がソレワターセを弾き飛ばす。

「……ビートアップ!!」

その中心を走り抜け、プリキュアの姿に瞬転するメイ。
跳ね飛ばされたソレワターセを追って宙を舞うと、その胴に拳を叩き込む。

「四つのハートはっ!」

悲鳴を上げようとしたソレワターセの顎を、光の脚速で蹴り上げる。

「夜明けの光!」

大きく仰け反った巨体が、地に堕ちるより早く。
……その眉間に、鋼の踵を振り下ろす。

「朝焼けフレッシュ!」

土煙を上げ、頭から大地に突き刺さるソレワターセ。
その手前へ、華麗に降り立つ白い破壊神。

「……キュアブレイク、推参」

その視線に射抜かれ、途端にウエスターの本能が危険を訴える。

「あ……ちょ、ちょっと待てっ!」
「ウエスターか。まさかこんな所で、お前を始末できるとは思わなかった」
「……タンマ! タンマタンマ!!」

怯え、後ずさるウエスター。
片膝をついたピーチの手を取り、助け起こすブレイク。

「さっきは、本当にごめん。……あなたの気持ち、ちゃんと伝わったよ」
「ブレイク……」

二人の背後で、地面を割って息を吹き返すソレワターセ。

『ソレワターセェェェェェ!!』
「……っ!」
「危ない!!」

ブレイクを庇い、ソレワターセの口から放たれた光弾を叩き落すピーチ。
足元で爆煙が上がり、二人の視界を奪う。

「ようし……今だあああああああっ!!」

その隙に、インフィニティを目指して走るウエスター。

「こいつさえ手に入れれば!」

必死に伸ばした手を遮るように、赤い閃光が闇を裂く。

「そうは!」
「させないわよ!!」

黄と青の闘気を帯びた二つの拳が、ウエスターのボディにめり込む。

「ごふおおおおおっ!??」

夜空に打ち上げられ、満天の星の一つに変わるウエスター。

「プリキュア・ハピネス・ハリケ――――――ン!!」

真紅のハートの巻き起こす旋風が、黒煙ごとソレワターセを吹き飛ばす。

「間に合ってくれたみたいやな!」

クローバーボックスを背負い、走ってくるタルト。

「パイン、ベリー……パッション!」
「みんな!!」

南の地に勢揃いする、五人のプリキュア。

「せつなに呼ばれて、ちょっと沖縄旅行にね」
「ピーチ、ブレイク……無事でよかったわ」
「タルトちゃん、今のうちにシフォンちゃんを!」
「まかしとけやっ……と!!」

プリキュアの足元で、クローバーボックスを回し始めるタルト。

『ソレワターセェェェェェ!!』
「「「キュアスティック!!」」」

一斉にスティックを発動するピーチ、ベリー、パイン。
三本を交差し、ソレワターセの連射する光弾を跳ね返す。

「ブレイク、このまま一気に!!」

ピーチの言葉に頷き、頭上に掲げた両手を軽やかに打ち鳴らすブレイク。
邪悪を清める呪(まじな)いのように、澄んだ音が周囲に響き渡る。

「……悪いの悪いの、飛んでいけ」

詠唱に応え、水平線に輝いていた光の全てが、ブレイクの手の中に集束していく。

「プリキュア・デイブレイク……」

両掌の合間に新生する、小さな太陽。

「サンッ……シャアアアアアアイイイイ―――――ンンッ!!!」

燃え盛る超エネルギー球を、ソレワターセ目掛けて投擲するブレイク。
同時にスティックとハープを振るい、ピックルンの力を全解放する四人のプリキュア。

「「「「フレェェェェ―――――――――ッシュッ!!!!」」」」

四色の光と夜明けの輝きが、黒い巨体を呑み込む。

『シュオオオ……シュオオオオ……』

極彩色の奔流に溶け、瞬く間に分解消滅するソレワターセ。
再び夜闇に包まれた森を、満月と星々が優しく照らす。


***


「……キュア?」
「「「「シフォン!!」」」」
「「シフォンちゃん!!」」

オルゴールの音色によって、元の姿を取り戻すシフォン。

「シフォン。これからも、みんなと一緒に色んなものを見て……ずっと、一緒にいようね」
「桃園さん……」

シフォンを優しく抱き締めるラブの姿を、潤んだ瞳で見つめるメイ。

「メイ、ごめんなさい。その……さっきは私、何の力にもなれなくて……」
「大丈夫だよ」

せつなの言葉に、静かに首を横に振る。

「私は、もう自分を嫌わない。……自分も、友達も、苦しめないことにしたから」
「メイ……」
「いつかこの気持ちは、私自身の力で伝えるよ」

自分の胸に手を当て、穏やかな笑みを浮かべて。

「……私が、もっと自分を好きになれた時に」

シフォンと共に、星空を見上げているラブたち。

「ほし、いっぱい~~!」
「本当にいっぱいだね!」

指で形作ったフレームに、少し滲んだ、その光を切り取るメイ。

「……本当に、綺麗だ」


***


メイたちが修学旅行から帰って数日。
ダンスレッスン後、ドーナツカフェに集まったクローバーの面々。
そこへ、紙袋を片手にやってくるメイ。

「メイさん!」
「メイとは、沖縄で会ったきりだったわね。おかえりなさい!」
「実は、蒼乃さんと山吹さんにお土産があってさ」
「「本当!?」」

四人と同じテーブルにつくと、紙袋から出したものを美希と祈里に手渡すメイ。

「わぁ! メイさん、ありが……と……う」
「…………」

即座にトーンダウンする二人の声と表情。
一面に“海ぶどう”の文字がプリントされたTシャツを広げ、硬直する美希と祈里。

「それから……桃園さんと東さんにも、渡したいものがあるんだ」
「え?」

小さなシーサーを一匹ずつ、ラブとせつなに手渡すメイ。

「桃園さんにもらったシーサーのお礼だよ。……東さんには、向こうでいっぱい迷惑かけちゃったから」
「メイさん……」
「ありがとう、メイ!」
「……私を守ってくれる、幸せにしてくれる、二人のクラスメイトへ」

少し恥ずかしそうに、二人へ微笑むメイ。
背後から、その首元をロックする美希。

「この扱いの差は何なのよぉ~~!」
「ぐぁ……なぜだぁ……最高のお土産を選んだのに……っ!??」
「ちょっと美希ちゃん、完璧にキまっちゃってる!!」
「ぎぶ、ぎぶぎぶぎぶ……」

秋空に吸い込まれていく少女たちの声。
……メイの心の旅は、まだまだ続く。





つづく




******


次回のフレッシュプリキュア! クロス†オーバーは、
第19話『大海戦! 船上パーティー波高し!!』をお送りします。
お楽しみに!




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大プリキュア戦記・参加オリキュア解説その3

・黒須メイ-当同盟の掲示板に代表以外で一番最初に書き込まれた七寝八寝さんの2次創作「フレッシュプリキュア! クロス†オーバー」に登場する、四つ葉中学校に通う中学二年生。 マイペースで人付き合いは少々苦手な彼女だが、夜の王国トワイライトの使者・キサナと出

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18話感想&TB報告

待ってましたの18話、今回は沖縄修学旅行の回でしたが、印象的だったのがメイの登場シーンでしたね。本編では月をバックにしたピーチの登場シーンが印象的でしたが、こちらはピーチの後方から昇ってくる朝日をバックに登場するメイが、まさに「日はまた昇る」な感じがして、印象深かったです。また、ラブの「プリキュア・ラブサンシャイン」に呼応するメイの「プリキュア・デイブレイクサンシャイン」も、まさに「敵に回したくないプリキュア」の印象を更に強くしたようですな。
次回は御子柴家の船上パーティーにブッキーがお呼ばれする本編41話がベース。本編ではブッキーとキルンを介しての動物達とのやり取りがメインでしたが、果たしてメイが絡むとどうなる事やら・・・。

さて、大変お待たせしましたが、「大プリキュア戦記」の設定をリンク先の「万国プリキュニスト同盟」ブログに掲載し、その中からメイに関しての設定をTBさせて頂きました。
なお「大プリキュア戦記」に関しては、掲示板と平行して今後参加オリキュア作者の共有ブログを開設し、そこでも展開を予定しておりますのでご期待下さい。

コメントありがとうございます

>畑中智晴さん

夕日に月に星に朝日と、やたら忙しい空模様ではあったのですがw、
原作のピーチとの対比は色々意識しました。
次回は本当、内容が全然決まってないです(ちょ
メイがどんな化学反応を起こすか、期待せずにお待ちください。

戦記の方はどんな話が展開されるのか、設定の続きが気になります。
一匹狼でちゃんとやってけるのかなぁ。
むしろ、単独行動のブレイクが敵にボコされる所から開幕しても面白いかもw

No title

メイさん青春してるなあw大人っぽいようで大輔やラブさんへの感情が子供っぽくて堪らないです。実に見守っていたい娘だ。一回デザトリアンになってスッキリしてもいいんじゃないかと思ったりw
自分は、作品よりメイさんが良く悪くも中二らしいと思ってます。言葉や言動の端々に背伸びしてとんがってるというか、かっこつけようとしてる感があるというか……そこがまた可愛いと思えるんですがwwラブさん達が真っ直ぐに女子中学生ぽい中で微妙に男子中学生ぽいというか寄り道しそうでしてない中二感がたまらないwともかくメイさん見てるとニヤニヤが止まらんのですよカワイイなあもう!!
プリキュアとしては他の四人より完成してるイメージがあるので、メイさん自身の成長がいつも楽しみですw

No title

ギャグではなくシリアスでほとんどを占めてくるとは、思わなかった…
本編39話とは逆だけど、これは神回に入るのでしょうね
メイさんの言っているグレープには思い入れがある、と言うのはキュアグレープ的な何かなのでしょうか。
恋の事で悩んでいるメイさん。この状態なら本気で浄化技でシュワシュワできそう…
ふむ、この回って、いろいろと本編と逆になってるのか…
それにしても海ぶどうと達筆で書かれたTシャツがかわいいと言うメイさん…一体どんな感覚をしているんだ…ラブさんが好きとか、その辺すごく普通らしいと思ってたら…

コメントありがとうございます

>空魔神さん

作者冥利に尽きます。

中二病を開放したオリキュア作品を書くにあたって、主人公を意図的に中二くさいキャラにすれば、逆に手綱が取れると思ったんですよね。
メイを鏡にして、自分の暴走を客観視できるというか。
書き手としても本当に可愛いキャラなので、気に入っていただけたのはとても嬉しいです。

本当に、デザトリアンになれたら楽なのかもしれませんがw
そんなメイのこと、これからもよろしくお願いします。

コメントありがとうございます

>柳星張さん

終盤に向けて、今までギャグにしてごまかしていた部分を、真正面から描いてみました。

今は亡きキュアグレープは、グレイブとキサナ、両方のモデルとなった人物ですから。
メイとしても、特別な思い入れがあります。

ちょっとした感覚が常人と相容れない部分はありますね。
チャーハンの味付けとかw

次回もよろしくです。

戦記でのメイについて補足

>一匹狼でちゃんとやってけるのかなぁ
一応設定は「独立プリキュア」という形にはしましたが、一匹狼という堅苦しいレベルではなく、むしろ積極的に手助けをするタイプと考えて頂くと解りやすいかと思います。
何せその強さは「敵に回したくないプリキュア」ですから、なぎほの・咲舞といった「ふたり」系や、のぞみやラブといった「チーム」系にもマッチすると思います(もちろんつぼえりやサンシャイントリオにもバッチリです)。

>むしろ、単独行動のブレイクが敵にボコされる所から開幕しても面白い
おそらくハトプリ初回のキュアムーンライトvsダークプリキュアを意識していると思いますが、そこまでは考えていません。
むしろ七寝八寝さんが掲示板にUPして下さった戦記のOPもどきの如く、様々なプリキュア達が活躍して、それが1つの物語として紡がれていく、という形を考えております。

はじめて感想。

ついったでも申し上げたとおり、mktnとブッキーのおみやげが不遇すぎるw
メイなりに考えたこととは申せ、他のこが苦言を呈していたものなのに^-^;

それはともかく、メイさんいるとクローバーボックスに依存しなくてもソレワターセ撃破できるわけですねぇ。
本能的にメイの危険を感じ取る西さんとか、事情が事情でもやはりメイにとっては徹底してつぶす対象なのでしょう。

夕日をバックにばっかやろー、あまずっぱいですねぇ。
メイさんの場合がち百合さんなので少し事情が異なるのですが……


とりあえず、感じること思うことを適当に並べてみました。
次回は伝説のバグ(ブッキー大活躍)回とのことですが、メイさん介入でバグ度が軽減されるんだろうなぁと推測してみたり。

コメントありがとうございます

>エクスリさん

美希ブキは犠牲になったのだ…。本編にオチをつけるための犠牲にな。
…まぁ、クラスメイトも直接「それはあかん」って言ったわけじゃないですし?(言えなかった)

悪とみれば、相手が人でも容赦なく倒す勢いのブレイクですが、前話ではサウラーに痛みを教えて見逃しているように、悪事をさせたくないがための「脅し」の要素も多少は含んでいます。
ブレイク自体の属性は闇を払う光の破壊神、「悪即斬」なので、メイの優しさがそうさせているのでしょう。

クインティプルフレッシュ(仮)は、単純に毎回グランドフィナーレを描写するのがちょっと、タルいのでw
ブレイク一人で倒すようなことさえしなければ、OKかな…?と、やってしまいました。

さて、次回はどんな技で締めくくられるのか?
バグるのか?バグってしまうのか!?
…お楽しみにw









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