クロスオーバー! フレッシュプリキュア! クロス†オーバー 第21話(後半)

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

フレッシュプリキュア! クロス†オーバー 第21話(後半)



ほんの数刻前までは、きらびやかな衣装に身を包んだダンサーたちが、その演技を競い合っていた舞台。
今やそこは、巨大な怪物が暴威を振るい、戦乙女たちが駆ける戦場と化していた。


「プリキュアフォーメーション! レディ……ゴー!!」

必殺技の態勢に入るプリキュアたちを眺めながら、ウエスターは物陰でほくそえんだ。

(まんまと罠にかかったな、プリキュア……!)

彼の任務はプリキュアを倒すことではない。
その注意を引き付け、別動隊であるサウラーのインフィニティ奪取を助けることなのだ。

(いまさらナケワメーケを倒したところで無駄だ! すでにインフィニティは、俺たちの手にあるのだからな……!)


「「「「ラッキークローバー・グランドフィナーレ!!!!」」」」


四人のプリキュアに包囲され、ナケワメーケは結界の中で浄化消滅しつつあった。
いつものウエスターなら、捨て台詞を残してすぐさま退散しているところだが……今の彼は勝者の余裕を堪能するように、静かに戦場を眺めていた。

「お前たち四人の戦いも、全ては無駄な……こと……ん?」

自ら漏らした言葉の中に、彼は小さく引っかかるものを感じた。
プリキュアの名前を小声で呟きながら、その人数を指折り数える。

「ピーチ、ベリー、パイン、イース、……ブレイ……ク……」

五本目の小指を折ると同時に、ウエスターは頭を抱え、ホールの隅々まで響く声で吠えた。


「しまったぁぁあああああっ!? 一人足りてないぞぉぉぉおおおおおおおっ!!?」


***


「ブレイクはん!!」
「……!」


ブレイクが意識を取り戻すと、自分の頭上へ巨大な腕が振り下ろされるところだった。
バズーカをかざして受け止め、飛び退いて距離を取る。
記憶の旅は、現実世界では僅か数秒間の出来事だった。

「ぶれいく、だいじょうぶ?」
「どないしたんや、急に動きが……」
「……いや……」

足元で心配するタルトとシフォンに、ブレイクは痛む頭を押さえながら答えた。
一瞬の内に、それも強制的に与えられた膨大な情報の氾濫に、脳が悲鳴を上げているのか。

『ソレワターセェェエエエ!!』

ホールの駐車場に並んだ車を取り込み、ソレワターセはさらなる巨大化を遂げている。
そしてそのすぐ近くに、天を仰いだまま微動だにしないトワの姿があった。

「トワ、逃げて!!」
「あの女、いつの間に……?」

忽然と現れた少女を、サウラーは訝しんだ。
トワは両目を閉じたまま、ブレイクの声にもまるで反応を見せない。

「ブレイク、大丈夫!?」
「パッション……それにみんなも!」
「サウラー、大丈夫か!?」

そこへナケワメーケを倒したピーチたち、そしてウエスターが駆けつけた。

「ウエスター……プリキュアを引き付ける役目はどうしたんだい?」
「あ、いや、それは、その……とにかく今は、プリキュアを倒すのが先決だ!!」
「やれやれ、仕方ないね……ソレワターセ!」

溜め息をつきながらも、サウラーはソレワターセに命令を飛ばした。

「その女を人質にしろ!」
「しまった……トワ!」
「トワちゃん!!」

主の言葉に従い、ソレワターセの腕が標的に迫る。

「わた……しは……」

トワの唇が動き、微かな呟きが風に乗る。


「トワ――――――――ッ!!」


ブレイクの叫び。
その言霊が大気を揺さぶり、トワの髪に結ばれた鈴を鳴らす。
冷たく震える音色が、彼女が問い続けた命題に、最後の答えを示した。


「……クイーン……!」


その場にいた誰もが、己の目を疑った。
トワの身体に触れた途端、ソレワターセの腕がどす黒く染まり……“虚空に喰われるように”消滅し始めたのだ。

「バカな……!?」
「何あれ……何が起こってるっていうの!?」
「ソレワターセ、そいつから離れろ!!」

サウラーの命令が下ると同時に、ソレワターセは即座に後退し、トワから距離を取った。
その右腕はすぐさま再生を開始したものの、感情を持たないはずの巨大な怪物は、目の前の小さな存在に明確な“恐れ”を抱いていた。


「トワ……あなたは、やっぱり……」

銀の睫毛が震え、少女の両目がゆっくりと開いていく。
紅い宝石、燃える双眸が世界を認める。
……覚醒の時は来た。

「……女王の名において」

腰に提げていたコンパクトを取り出すと、トワはその蓋に口付けた。
パンドラの匣の軋むような音と共に、ゆっくりと鏡面が展開する。
一切の曇り無き氷の湖が、紅い瞳を映す時……。
その中心から、一体の妖精が解き放たれた。

「黒い鍵の妖精……」
「ダークルン……!?」

存在しないはずだった26体目、最後のダークルン。
……イニシャルQ“クイーン”が、トワの左手、黄金に輝く腕輪に、吸い込まれるように一体化していく。
そして虚空に生じた菱十字の鍵を、白い指が掴み取り……。

「ターンオーバー」

腕輪に鍵を挿し込み、トワが呟く。
金色の輪が大きく広がり、左手を離れて宙を舞った。
頭上に輝いたそれは、女王の威光を示す王冠……“リンクラウン”に変じていた。

「トワ……!?」
「これは……変身!?」

輝きに導かれるように……周囲の影、暗がり、あらゆる闇から、蛇のような黒い鎖がトワのもとへ伸びる。
全身に巻きつき、融け合い、装衣を形作る闇達。
それに呼応して、大地から立ち上る黒いベールが、空を覆っていく。

「グレイブフィールド……いや、違う……」

全てが暗黒に包まれると同時に、彼女を縛っていた全ての鎖、神の戒めが虚空へと砕け散る。
一切の光無き永遠の夜に、唯一絶対の月として君臨する威容。
その名は――。


「永遠なる夜の女王! クインシィタナトス!!」


無限に等しい時の砂漠を越え、今再び、甦りし冥府の女王。

「とわ……なる……」
「夜の女王……!?」
「トワも、プリキュアだったの!?」

プリキュアとラビリンスの混乱を寸断するように、その口が真実を語る。

「余は冥府の女王! またの名をクイーン・トワイライト13世!!」

かざしたコンパクト……“ミラージュイスローン”の内側に、トワイライト王家の紋章が蒼く燃え上がる。

「トワが……」
「トワイライトの女王!!?」
「馬鹿な! 夜の王国トワイライトは、古代に滅んだはず……!」
「冥王の威光はここに甦ったのです。地に伏しなさい、悪漢」

その指が大地を示し、ラビリンスに降服を促した。

「うるさ―――い!! 冥王だかなんだか知らんが、俺達の邪魔をするならプリキュアと同じことだ!!」
「……愚か過ぎる……」

ウエスターの返答に嘆息すると、タナトスは開いたままのコンパクトを頭上に放った。

「ならば、とくと見よ。曇り無き銀月に、己の醜さを照らせ」

天空で静止したミラージュイスローン、その鏡面が月のように輝き、銀光が辺りを照らす。
足元に大きく広がった影の上で、タナトスは踊るようにブーツを踏み鳴らした。
黒い闇が水面のように揺らめくと、その波紋の中心から真紅の大鎌が浮上する。

「闇に喰われ、闇に還る、その定めを」

自らの身の丈を、遥かに越えてそびえる大鎌。
それを手に取り、軽々と振り回すと……。

「享受せよ」

黒光りする切っ先で、冥王の意にそぐわぬ者たちを指し示す。

「作戦は失敗した……引き上げるぞ、ウエスター」
「え? いや、まだ……」
「いいから急げ!!」

かつて無い危険を察知すると、サウラーは即座に身を翻した。
ウエスターも慌ててそれを追う。

『ソレワターセェェェ!!』

撤退を助けるように、ソレワターセの巨体がタナトスの前に立ちはだかった。

「仕える主人を誤った、哀れな妖魔……。闇の中に、永遠の安息を与えましょう」

大鎌“クイーンズジャッジ”の柄に口付けると、タナトスは笛のようにそれを吹き奏でた。

『ソレ……ッ!?』

その旋律に従い、ソレワターセの足元に広がった影の中から、無数の黒い鎖が伸びる。

「グルイグル・ルルイ・グルタグルン……」

全身を戒められ、動きを封じられた巨体。
その体内からも滲むように闇が溢れ出し、頭から足の先まで、全てが漆黒に塗り潰されていく。


「享受せよ! 星無き夜のセレナード!!」


ソレワターセに向けて開いた、タナトスの左の掌に、トワイライトの紋章が浮かび上がる。

『ソレ……ワ……タァァセェェエエエエ!!』

断末魔と共に、巨体が大きくひしゃげ……闇に喰い尽くされて、虚空へと消滅する。

「……心に闇を宿す限り、私の前に跪くのみ」

タナトスが左掌を閉じると同時に、天を覆っていた黒いベールも消え去り、元の曇り空が姿を現した。


「……今までご苦労でした、フレッシュ・プリキュア」
「ふれっしゅぷりきゅあ……?」
「新たな世代の戦士、あなた達のことです」

半信半疑で自分を指差すピーチに、タナトスは微笑んで答えた。

「ちょ……ちょっと待ってよ、訊きたいことが山ほどあるわ!」

はやるベリーの言葉に頷き、女王は改めて口を開く。

「先程も申し上げたように、私は古代トワイライトを治めたクイーンです」
「じゃあ、記憶が戻ったのね!」
「トワが女王だったなんて……びっくりだよぉ!」

喜ぶパイン、ピーチに向かって、タナトスはその首を横に振った。

「私は、トワではありません」
「え……?」
「彼女は悠久の時を経て、抜け殻になっていた私の身体に偶然生じたもの。私とは別の人格です」
「……抜け殻……??」
「今、トワはミラージュイスローンの中で眠りについています。……私が戻っている間だけ」
「トワがクイーンで、でもクイーンはトワじゃなくて……え? あれ??」

困惑するプリキュア達に、タナトスはゆっくりと、ひとつひとつ事象を紐解いていく。

「キュアブレイク、黒須メイ。あなたはリンクロスの記憶の中で、過去の世界を見ましたね?」

リンクロスを手に取り、ブレイクは小さく頷いた。

「あれは、抜け殻であった私の身体がリンクロスに刻まれた記憶を求め、引き出そうとした結果、起こった事態です」
「それに私の意識が巻き込まれ、過去の世界を体験したのか……」
「魔人総攻撃の後も、荒廃した王国は幾度となく戦火に焼かれました。私もその中で傷付き、長い眠りにつかなくてはならなかった……。その後のトワイライトは、知ってのとおりです」

タナトスの頭上でリンクラウンが輝き、黒い鍵の妖精が再び姿を現した。

「私は眠りにつく前に、自分の記憶と魂を妖精の姿に閉じ込めました」
「それが、26体目のダークルン……」
「この子のおかげで私は、一時的とはいえ現代に甦ることができたのです」

地下神殿の聖櫃に肉体を、ダークルンの内に記憶と魂を保管して、クイーンはいつ醒めるとも知れない眠りについた。
そして、彼女の帰りを待つことなく、王国は亡びたのだ。


「リンクロスに蓄積された記憶から、この世界を取り巻く危機のことは把握しました。私も、かつてひとつの世界を治めた女王として……微力ながら、あなた達と共に戦いましょう」
「ありがとう、こっちもあなたの事情はよくわかったわ」
「感謝します、クイーン」
「ありがとう、クイーンさま!」
「……あ、あのぉ……」

タナトスの言葉に沸くプリキュアたちの中で……ピーチが一人、おずおずと手を上げた。

「あたしだけ、まだよくわかってないみたいなんですけどぉ~~っ……」
「ピーチはんには、後でわいからゆっくり説明しとくわ……」
「……頼むわね、タルト……」


***


「トワイライトに戻る?」
「はい」

手にしたクイーンズジャッジを振るうと、タナトスの前に次元のゲートが現れた。

「FUKOのゲージの所在がわからない以上、シフォンを守るには、ラビリンス本国を叩く必要があります」
「……!」

タナトスの言葉に、パッションの肩が小さく跳ねた。

「クイーン、それは……」
「わかっています。トワイライトの悲劇は、二度と繰り返させません。……民の命を犠牲にすることなく、総統メビウスの野望を頓挫させることが目的です。しかしそれは、非常に厳しい戦いになるでしょう」

タナトスが各々の顔を見渡すと、五人のプリキュアは決意を込めて頷いた。

「来るべき決戦のため……新たな力を得るために、私は一時トワイライトに戻ります。……遅くとも、明日の朝には戻るでしょう」
「わかりました。お気をつけて、クイーン」

ブレイクの言葉に一礼し、タナトスはゲートに向かう。

「シフォンも、クイーンさまにバイバイしよ?」
「……シフォンちゃん、どうしたの?」

タルトの背に隠れ、シフォンはその身を縮めていた。

「それが……さっきからずっと、こうなんや……」
「私の身体と記憶、そして魂を結び付けているのは、ダークルンの力です。……シフォンはそれを感じ取り、怯えているのでしょう」
「前にもあったわね、そんなこと……」
「すぐに慣れるよ。……ね、シフォン!」
「……キュアァ……」

僅かに顔を覗かると、シフォンはタナトスを見上げた。
その怯える眼差しに、タナトスは笑顔で応えた。

「それでは、また会いましょう。フレッシュプリキュア」

見送る一同に手を振り、タナトスは次元の彼方へと消えた。
新たな仲間を得た喜びを、或いは決戦に向けての決意を胸に抱きながら、プリキュア達は彼女を送り出した。
しかし、その中で一人、パッションだけが表情を曇らせていた。


(FUKOのゲージを破壊する方法。ラビリンス本国を巻き込まずに、戦いを終わらせる方法……。私だけが、それを持っている……)


「そういえばピーチ、大輔君は?」
「あ……」

ベリーの言葉に、ピーチの体が硬直する。

「あの調子だと、まだラブちゃんを探してるんじゃ……」
「あ、あたし、ホールを見てくる!」

走り出すピーチの後姿を、ブレイクは横目で見つめていた。

(知念大輔……か……)


***


崩れかけたホールの舞台に、大輔は独り腰掛けていた。

「大輔君!」
「ピーチさん……」

彼に駆け寄ると、ピーチはその隣に腰を下ろした。

「ラブちゃんなら大丈夫だよ。あたし、避難するのを見たから!」
「みたいっすね……さっきはすみませんでした、俺のせいで」

自分を庇い、ナケワメーケの攻撃を受けたピーチに、大輔はもう一度詫びた。

「気にしないで! いいんだよ、あなたが無事なら」

肩を落とす大輔を、ピーチは精一杯元気付けた。

「でも俺……やっぱり、駄目です」

ピーチの笑顔に背を向けると、大輔は苛立ちを込めて頭を掻きむしった。

「ダンス大会も、優勝するつもりだったのに……本気でやったのに……予選すら通れなかった」
「でも、それは……」

愛に溢れた太陽の輝きも、ひたすら自分を責める大輔の心には届かずにいた。
そして俯いた大輔の口から、小さく漏れた呟きに……ピーチは、その耳を疑うことになる。


「優勝したら、ラブに告白するつもりだったのに。……好きだって……」
「……!?」


***


「おかえりなさい、二人とも」

占い館、帰還したサウラーとウエスターをノーザが迎える。

「申し訳ありませんっ!!」
「……作戦は失敗です」

深々と頭を下げる二人に、ノーザはソレワターセの実に養分を与えながら、穏やかな声で答えた。

「大した問題ではないわ」
「……え?」
「しかし、インフィニティの奪取に失敗しただけでなく……新たな敵まで」
「……フフ……」

余裕の笑みを浮かべるノーザの手前に、ラビリンス本国と繋がるスクリーンが開く。

「クライン、手紙は届けてくれたかしら」
『はい、確かに。……しかし、本当にイースは来るのでしょうか……?』
「来るわ。罠と知っていても、他に選択肢はない。……そう、プリキュアである限りはね」

熟した実を手に取ると、ノーザはそれを掌の上で転がした。

「どういうことです、ノーザさん……?」
「本当の作戦は、いま進行中なのよ」
「な……!?」
「プリキュアが尊び、頼みとする仲間の存在。それこそが最大の弱点でもある……。二人とも、間もなく楽しいショーが観られるわよ?」

味方ながら底知れぬノーザの闇に、サウラーとウエスターは身震いする思いだった。


***


日没後間もなく、闇に包まれた空から白いものがちらつき始めた。
雪降るクリスマスイブの夜。


「はぁ……」
「なんやピーチはん、さっきからため息ばっかりついて……」

部屋の机に突っ伏したラブの傍らで、タルトがシフォンをあやしている。

「らぶ、げんきない?」
「せっかくゲットした幸せが、逃げてまうで~~?」
「うるさ~~い……」

タルト達の方を振り向くこともせず、ラブはただ、机の上で唸っていた。

「せっかくのクリスマスイブやのに、ピーチはんらしくないで?」
「……あたしだって、そういう気分になる時あるもん」

キュアピーチとして聞いてしまった大輔の言葉が、ラブの頭に繰り返し響いていた。


『ラブに告白するつもりだったのに。……好きだって……』


幼馴染みとして、かけがえのない友達として。
大輔とはずっと、苦楽を共にしてきた。
そんな大輔が自分に恋愛感情を抱いていたという事実は、ラブの心に衝撃を与えた。

(どうしよう、あたし……)

その思考を断ち切るように、手元でリンクルンが鳴った。
液晶画面に表示された名前を見て、ラブは椅子の上で飛び起きた。

「もっ……もしもしっ!?」
『あ、ラブ……いま、大丈夫か?』
「う、うん……。なに? 大輔……」

ラブの返答の後、電話口の向こうで大輔が逡巡するのが感じ取れた。

『急でわりぃけどさ……直接会って、話したいことがあるんだ』
「えっ……」
『あ……いや、無理なら、いいんだ……』

消え入りそうな大輔の声に、ラブは慌てて答えた。

「だ、大丈夫だよ。行ける……と思う」
『じゃあ、広場の……ツリーのところで、待ってるから。……約束だからな』
「う……ん」


通話を終え、ラブは思わず、頭を抱えた。

「ああああっ……」
「イブの夜にお誘いでっか~~!? ピーチはんも隅に置けないお人やで~~!」

隣で跳ねるタルトの冷やかしさえ、彼女の耳には入らなかった。


(大輔の話したいことって、やっぱりあのこと? ……どうしよう……)


***


窓の外、少しずつ積もり始めた雪を眺めながら……。
同時に、ガラスに映し出された自分の姿と、東せつなは向かい合った。


『トワイライトの悲劇は、二度と繰り返させません』


タナトスの……クイーンの言葉が、その胸に繰り返し響いていた。

(あの時。故郷を……ラビリンスを捨てて一人になった私を、みんなが迎えてくれた。私はこの町を、新しい故郷にすることができた)

イースとして散るはずだった命は、せつなとして生きる世界を得た。
それは彼女が、自分自身で選んだ道だった。

(でも……)

廃墟と化したトワイライトの光景が、脳裏に浮かび上がる。

(トワが……クイーンが一人になったのは、魔人達に故郷を奪われたから。邪悪な存在のせいで、全てを失ったから)

かつての自分も、魔人達と同じだった。
他人の幸せを奪い、踏みにじる側にいた。

(みんなの未来、トワとクイーンの未来のために。私にできることは何? 私がすべきことは何?)

永遠に失われようとしている、かけがえの無いものを守るために。
……刹那の命を、燃やし尽くすこと。


「……往こう」

その決意に応え、赤い鍵の妖精が姿を見せた。
アカルンを掌に乗せ、今一度、せつなは部屋を見渡した。

「……今まで、ありがとう」

思い返せば、瞬きにも等しい時間。
それでも、数え切れないほどの思い出と、抱えきれないほどの愛情を与えてくれた場所。


「さようなら、四つ葉町――」


赤い光に包まれ、少女は“二度目の”、最期の戦いへ赴いた。


***


夜の王国トワイライト。
全ての光が失われた大地を照らすのは、亡霊のような青い月のみ。
グレイブタワーの最上階……地下神殿を再現した空間に、タナトスは独り佇んでいた。
壁画のように内部を埋め尽くしているのは、ここに封印されたダークルンを管理するための鉱石回路である。

「ルー・ルー・ルルエ……」

タナトスが奏でる旋律に応じて、その中枢に埋め込まれていた黄金の輪が分離する。
かつての主の掌に、時空連鎖デバイス……リングルンが舞い降りた。
冥府の女王がその吐息を吹きかけると、閃光を発しながら粒子レベルに分解、直ちに再構成を始めていく。

(私の手でリングルンを完成させる。来るべきラビリンスとの決戦のために。そして――)

リングルンの心臓部に、夜鉱石が露出する。
マザーストーン崩壊の衝撃を逃れた、最後の一片だ。
その輝きに、タナトスの顔に刻まれた、蒼い傷跡が疼いた。


「姉様の願いを……私が叶える」





つづく




******


次回のフレッシュプリキュア! クロス†オーバーは、
第22話『世界を救え! プリキュア対ラビリンス!!』をお送りします。
お楽しみに!




スポンサーサイト

テーマ : プリキュア
ジャンル : アニメ・コミック

コメントの投稿

非公開コメント

No title

変身してるメイさんは心配なく見守っていられる不思議。花輪もらえると喜んだり役に立たない目で見られて凹むメイさんは言うまでも無く可愛いので語ることが無い(`・ω・´)何気に後ろでこちょこちょ遊んでるミドルンが可愛いなw
いろんな国のプリキュアがいるっぽい・・・・光の国とU40、ピカリの国といったウルトラマン的なプリキュア体制がイメージされましたwそのせいかグレープのセリフがウルトラマンAにも見えたw
記憶を追体験してるだけなので何を変えられるワケでもない・・・それでもメイさんが成長できるなら意味あることだったはず。
クイーン・・・ウエスターさんを愚か者言わないであげて!タダでさえ映画パンフでせっちゃんに暗に残念な扱いされてるんだから!!
敵か味方かで一人称変わるのもいいなあw
トワちゃんとクイーンは別人格・・・・・クイーンになってもメイさんのチャーハン好きだったらいいなと密かに思ってたりwトワイライトに一時帰国しちゃったけど戻ってきたらメイさん家で暮らしていくのかな?二人で寝ててサプライズ帰国したナラカ姉さんを逆に驚かせたらいいじゃない!とか考えてしまったw
リングルン・・・これはグレイブ本編復活の兆し!?

今回の更新でこっちでグレイブさん使用させてもらってるネタ『レッツゴーキュアライダー』もめっちゃテンション上がってきましたw

コメントありがとうございます

>空魔神さん

純正プリキュアでないグレイブの時と違い、ブレイクは意識的にメイと少しキャラを変えてます。変身後は頼もしさが増すというのは本家でもありますし…。メイ自身の、プリキュアとしての誇りと覚悟の表れでもありますね。ミドルンは無邪気ながら、捉えどころのないキャラにしています。ピックルンは皆そういうイメージなのでw

古代では敵が強大だったぶんプリキュアも多く生まれたということで、それこそ宇宙警備隊的なw組織も結成されていた、という設定を考えてます。グレープの台詞はAと被るとは思ったんですが、前後の流れからやはりああいう台詞にするしかなかったですねw
過去は変わらなくても、メイは想いや願いを直接受け継ぐことができたわけで、無駄な戦いではなかったですね。

ウエスターの扱いが悪いのはもはやお約束なんですがw、出番は少なくても“らしく”書ければいいなと思ってますw
クイーンの一人称は基本的には「私」で、名乗り等の時だけ変わりますね。「我が名はイース!」みたいな感じですね。
終盤の登場ゆえ、クイーンとメイを絡ませる機会自体はとても少ないのですが、この二人の関係がラストへ向けて重要になってきます。
そして、冥府を望む玉座の帰還も…

次回はメイの片想い決着編ですので、ご期待ください!
『キュアライダー』楽しみにしてます!!






No title

どうも~^^ こちらでははじめましてですね。
今後ともよろしくお願いします☆

クライマックスに向けて、どんどんテンションが上がってきてますね~!
本家フレッシュとはすこし話の路線が変わってきて、予測できない展開になってきていますね!
クロスオーバーの真骨頂といったところでしょうか?

グレープ、キサナちゃんとの二度目のお別れ、クイーンの登場・・・そして、大輔の告白・・・!

メイちゃんたちによって、新たに吹き込まれた命が、どのような変化をもたらしていくのか、作品としての可能性をどのように示してくださるのか、

これからも楽しみにしております!




コメントありがとうございます

>我さん

こちらこそよろしくお願いします!

この先、フレッシュ終盤の展開はなぞりつつも、どんどんオリジナル要素が入ってきます。
原作の本筋を改変しまくるのは緊張するし躊躇もあるのですが、とにかく充実した内容にできればと思っています。
難しいですが、フレプリの二次創作としても、オリキュア作品としても意味のあるラスト…というのが目指すところですね。

次回もお楽しみに!

いよいよカウントダウンへ・・・

お久しぶりです。待ってましたの21話でしたが、徐々に伏線回収されていく中で、いよいよカウントダウンだなぁという感じがしてきました。
となると、読者としてはどうしても次を早くという事が気になる訳ですが、さすがに次期プリキュアの半ばでようやくファイナルという今の流れではどうしても飽きが来てしまい兼ねません。
やはり、ここは無理してでも「本編(残り5話)年内決着、来年から外伝へ」という目標を考える必要があるように思います。厳しいかも知れませんが、あえて楽しみにしている読者の一人として言わせて頂きました。次回も楽しみにしております。

コメントありがとうございます

>畑中智晴さん

第1話からここまで、常に“前回より一段上”の完成度を目指して書き進んできましたが、それも終盤となれば、自分で最大限満足のいくものができるまで、存分に時間をかけたいと思うところです。
しかし、毎回の更新を楽しみにしてくださる皆さんがいればこそ、ここまでストーリーを描いてこれたのも事実。読者のためにも、ペースを上げる努力はしていくつもりです。
そしてお待たせした分、内容の充実は保証いたします。
…私も、スイートよりは早く終わらせたいと思ってるので…(汗

No title

おひさしぶりですももたまちゃんです!21話が公開されてさらにお知らせのリプまでいただいていたのにここ最近ネ禁していたので気づいたのが今日になってしまってもうしわけないです…〔汗〕 今回も読んでて最初からクライマックスで胸熱の連続でした!滅び行くトワイライト…、時空を超えた戦士の共闘…!そして覚醒する亡国の女帝…!今後の伏線も盛りだくさんでテンションあがりまくっりっす!この熱い想いを近日中に表現したいと思っているので楽しみにしていてくださいね♪

コメントありがとうございます

>ももたまちゃんさん

お久しぶりです!

今回はさすがに詰め込み過ぎた感があって、ちょっと構成失敗したなと思ってるんですがw テンション上がる内容になっていれば何よりです。
ももたまさんの作品、楽しみにさせていただきます! そして、私もそれに応えられるよう、次回も熱い内容に仕上げていきたいですね。
プロフィール

ヤネ

Author:ヤネ
フレクロF、今度はイニシャルWW編です。

Twitter
最新記事
最新コメント
カテゴリ
月別アーカイブ
最新トラックバック
検索フォーム
RSSリンクの表示
リンク
プリキュアサーチプリキュア検索
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QRコード
上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。