クロスオーバー! フレッシュプリキュア! クロス†オーバー 第24話(後半)

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フレッシュプリキュア! クロス†オーバー 第24話(後半)




「……終わったのね」


ベリーの呟きに、五人のプリキュアは全身の緊張を緩めた。

「メビウス……様……」

メビウスが最期に姿を映し出していた、その場所に、自然とパッションは手を伸ばしていた。

「パッション……」
「……ラビリンスは、生まれ変わる。総統メビウス……私達が造り出してしまった闇……その過去を決して忘れずに、新しい明日を歩んでいく」
「そうだね。……あたし達はメビウスの言ったことを、ハートを忘れちゃいけない」

メビウスの末路に、惜別に似た感情を抱きながらも……プリキュア達は笑顔でもう一度、手を取り合った。

「さ、帰ろう。あたし達の世界へ!」
「ええ。クローバータウンストリートへ……みんなの所へ!」
「クイーン。あなたも、一緒に帰りましょう」
『……ええ。私も、ようやく帰る時が来ました』

プリキュア達を見下ろしながら、タナトスは微笑んだ。
今までに見たことの無い、冷たく妖艶な表情だった。


「……クイーン?」

タナトスが再び指を鳴らすと、轟音と共にその姿が砕け散った。
彼女を映していたスクリーンが、メビウスの城の最上部ごと、粉々に吹き飛ばされたのだ。

「なに!? なにが起こったの!?」

爆煙を突き抜けて、プリキュア達の直上から巨大な影が迫ってきた。
咄嗟に散開した五人の中心に、地響きを立ててそれは舞い降りた。

「これは……!?」
「キイマジン……いや、そんな甘いモノじゃない……!」

瓦礫の中にそびえる怪物は、ノーザやクラインとでは比較にならない程の、凄まじい邪気を全身から噴き上げている。
体長はおよそ3メートル。つるりとした白い体表のあちこちに、青い裂け目のような眼と口、奇怪な形に捻れた角や爪が、無造作に散らばっていた。
一点の曇りも無い純白が、逆に不気味な違和感……この世ならざる狂気、禍々しさを感じさせた。


『余は冥府の女王、クイーン・トワイライト13世。夜の王国、トワイライトの統治者』


何処からとも無く響いてきた声に、プリキュア達は破壊された天井を見上げた。
頭上に開いた大穴から、巨大なタナトスが、覗き込むように五人を見下ろしていた。

「な……!?」

いや、正確には、ラビリンスの空を覆う黒いベールに、その姿が大きく映し出されていた。


『女王の名において、今ここに、我が王国の復活を宣言する』



***


タナトスの左掌で、王家の紋章が蒼く燃え上がると……同時に、グレイブタワー周辺に劇的な変動が起こり始めた。
悠久の静寂に包まれていたトワイライトの大地が、息を吹き返したように激震していた。
地を割って無数に伸び、天を突く黒い十字架の群れ。
それらが一斉に放った、紫の稲妻のようなエネルギーが、同じく十字架を象ったタワーの先端に集束すると……。


『グレイブフィールドγ、発射』


トワイライトの空一面に広がった紫色のエネルギーが、無数の光球へと姿を変えた。
弾かれるように散らばった球体群は、次元の壁を突き破り、数多のパラレルワールドを目指して飛んでいった。
――クローバータウンストリート。
――スウィーツ王国。
――ラビリンス。
ひとつひとつ、別々の目的地に辿り着いた光球は、今度は黒いベールに転化し……驚くべきことに、一瞬でそれぞれの世界の全土を包み込んだ。


「一体、どうなってるんだ!?」

全ての世界の住人達は、己の目を疑った。
空が闇に包まれただけではない。
周囲を取り巻き、命ある者達を飾り立てていた色彩までもが、瞬く間に消滅していったのだ。

「色が……色がなくなっちまったぞ!」
「あの黒い壁は何なの!?」

だがこれらの異変は、さらなる惨劇への秒読みに過ぎなかった。


「サウラー、どうだ!?」

ラビリンス、第二管理塔。
そこには、国民と力を合わせ、事態に対処しようとするサウラーとウエスターの姿があった。

「駄目だ。ラビリンスのシステムは、ヤツに……クイーンに完全に支配されている。今の我々には、抵抗する手段がない」
「くそっ……!」

コンソールパネルに拳を叩きつけ、ウエスターは歯噛みした。


「最悪の事態に、なってしまいましたな」

ティラミス長老の言葉に、タルトの父――ワッフル国王は重々しく頷いた。

「今の我々には、信じるしかない……」

黒く塗り潰された空を見上げながら、彼は呟いた。

「プリキュアを……タルト達を」


闇に包まれ、色を失った世界で……混乱する人々の頭上に、神の如く君臨する者があった。
全てのパラレルワールドの空を覆い尽くしたベール、その表面に映し出された、巨大なタナトスの姿。

『たった今よりあなた方の生きている世界、あなた方自身の存在。全ては我が夜の王国、トワイライトの所有物となります』
「トワイライト……!?」
「そんな国、知らないわ!」

黒い死神の威容に怯えながらも、突如現れ、天を支配した存在に、人々は憤りの声を投げかけた。

『知らぬのも、無理からぬことでしょう。トワイライトは、いにしえに亡びた我が祖国。ですが、その栄華は今、再び甦る時を迎えたのです。……あなた方の命を、捧げることによって』


タナトスの言葉に、全ての世界の人々は慄き、惑乱した。
衝撃を受けたのは、プリキュア達も同じだった。
モノクロームに支配された世界で、未だその色を留めている存在は、タナトス以外には彼女達だけだった。

「これは……一体、どういうことですか!? クイーン!?」
『言葉の通りです。全てのパラレルワールドの、命と引き換えに。古代トワイライトを復活させます』
「うそ……!?」
「ま、待ってください。そんな馬鹿なこと……いくらトワイライトの科学力でも、時間を巻き戻すような、そんなことが、できるわけが――」
『できますよ。リンクロスから取り出した記憶と、あとは十分なエネルギーさえ、確保できるなら』

困惑するプリキュア達に、タナトスは事も無げに答えた。

『それらを纏め上げ、管理するのに必要な二つのシステムは、既に私の手に在ります』
「……まさか!?」
『一つは、リングルンを通じてコピーした、メビウスのメインプログラム。そして、もう一つは――』

タナトスの背後、壁画のように広がった鉱石回路。
その中心に埋め込まれた存在を認めて、プリキュア達は息を呑んだ。


「……シフォン」

その瞳は光を失い、生気の無い仮面のような顔が、回路と一体化している。

「シフォンが、インフィニティに……!?」
「FUKOのゲージは、破壊したはずなのに!」

プリキュア達がシフォンの姿に釘付けになる中で、何かに気付いたパインが、その顔を青ざめさせた。

「タルトちゃん……タルトちゃんは、どうしたの!?」
『さあ?』

玉座に頬杖をつくと、タナトスは大儀そうに視線を逸らした。

「クイーン……こんなことまでして、あなたは……!」
『話を戻しましょうか。……キュアグレイブ、いや、黒須メイ。あなたが垣間見た過去の世界……あの日、首都と夜鉱石を失う以前の“時間”を、完全に再現すること。それが、私の目的です』
「そのために……人々の命を、犠牲にすると?」
『そうです。全ての世界を、あらゆる存在をエネルギー源に換えて利用します。……それに、他の世界を滅ぼせば、二度とトワイライトが外敵の脅威に晒されることもない。私の治めるトワイライトは、真に永遠の王国となる。あなた方の世界の諺で、一石二鳥……というものです』
「クイーン……!!」

五人のプリキュアとタナトスの視線が、激しくぶつかり合った。
一歩も互いの道を譲るつもりは無いと、その眼差しが何より雄弁に語っていた。

「私達が……そんなことを、許すと思いますか」
『いいえ。許しを請うつもりなどありません。私は、私の目的を必ず果たします。そのためには、立ちはだかる者を全て排除します』
「……正気ですか」
『正気、ではないかもしれませんね。私は、狂人にも鬼にもなります。トワイライトを取り戻すためには』
「……どうして……!!」

悲しみとも怒りともつかない感情に苛まれながら、グレイブは叫ぶしかなかった。
あの夜の、痛みと苦しみに満ちたクイーンの表情が、脳裏に蘇った。
その辛さを、少しでも理解してあげたかった。
彼女が背負わされたものを、ほんの僅かでも、肩代わりしてあげたかった。
……だが、現実は……。


『お話は終わりです。……起きなさい、ヒザマズーケ』

タナトスが三度その指を打ち鳴らすと、


『ヒ……ザ……マズゥゥゥウウウウウウケェエエエッ!!』


先程までは彫像のように、ぴくりとも動かなかった怪物が……一転、巨体を大きく反り、大気を震わす雄叫びを上げた。

「何これ……頭が、痺れる……!」
「鳴き声に精神波を乗せているんだわ……みんな、気をしっかり持って!」
「くっ……ヒザマ……ズーケだと……!?」
『そう。私の望みを叶えるための駒。……トワイライトの力の前に、跪け。プリキュア』

その隙間に、特殊な力場でも張り巡らしているのか。骨格だけの翼を羽ばたかせ、ヒザマズーケと呼ばれた怪物は、まず正面のグレイブに飛びかかった。

『ヒザマズゥウケッ!!』
「マニューバーO!」

“オーガ”の力、グレイブレード。
振り下ろされたヒザマズーケの巨腕を、グレイブは刀の鞘で受け止めた。
そのまま敵の脇を駆け抜けると、すれ違いざま、居合いの要領で一気に胴を掠め斬る。
確かな手応えを感じながら、グレイブは振り返った。
……が、その目の前で、ヒザマズーケを斬った刃が急速に腐蝕を始めたかと思うと……遂には柄の部分までもが、塵となって崩れ去った。

「な……に!?」

呆気に取られたグレイブの体に、一瞬で距離を詰めたヒザマズーケが、その拳を叩き込んだ。

「グレイブ!」

城の壁を突き破り、グレイブは空中に投げ出された。
翼を広げ、瞬時に舞い上がったピーチが、その体を抱き止める。

「大丈夫?」

黒い空を飛びながら、ピーチは腕の中のグレイブに語りかけた。
だが、グレイブは自分が受けたダメージすら忘れ、先程の現象について思考を巡らせていた。

「おかしい……あいつは、“オーガ”の力を持っている」
「えっ!?」

同じ魔人の力を使える者ならば、グレイブのマニューバーを無効化することができる。
確かにグレイブは、ヒザマズーケから“オーガ”の力を感じた。

「だけど、それだけじゃない。相手の心を乱す精神波……あれは、イニシャルSの、“セイキュバス”の力だった」
「じゃあ……二種類の力を、持ってるってこと?」
「……いや……」

二人の目の前で、城壁が次々と崩れ落ちた。
剥き出しになった最上階。ヒザマズーケの周囲を高速で旋回しながら、ベリー達が一斉に攻撃を仕掛けていくのが見えた。


『ヒザァァアアアアマズゥウケェッ!!』


ヒザマズーケが咆哮すると、その全身を包むように展開された障壁が、三方から急降下するキュアエンジェル達を弾き飛ばした。
白い胴体に大きく開いていたはずの刀傷は、跡形も無く消えていた。

「あれは“ウィッチ”の……それに、“ユニコーン”の力!」
「そうだ。あいつは……ヒザマズーケは、おそらく」

グレイブの能力を熟知したクイーンが、刺客として送り込んできた代物だ。
排除すべき標的を遥かに上回る性能を持っていなければ、むしろおかしい。

「……23体のダークルンの力を、全て、持っている」
「えぇ!?」
「ちょっとそれ、本当なの!?」

空中で体勢を立て直したベリー達が、編隊を組むようにグレイブとピーチの横に並んだ。

「グレイブと、互角の力ってこと……?」

パインの問いかけに、グレイブは左腕のリングルンを見つめながら、首を横に振った。

「当然だけど、クイーンの手によってすでに、グレイブタワーとリングルンとのリンクは断たれている。いま私が使えるのは、メビウスとの戦いのためにあらかじめダウンロードしていた、数体のダークルンの力だけ」
「……圧倒的に不利、ということね」

額に冷や汗を滲ませたパッションの言葉に、グレイブは微笑を浮かべ、もう一度首を振った。

「いいや。私にあってあいつに無い、一番強い力があるさ」
「え……」
「みんなだよ」



***


黒い空を舞い、白い魔物と死闘を繰り広げる五人の戦士達を、ラビリンスの人々は固唾を飲んで見上げていた。


「プリキュア……」


桃色の髪の少女は、黒須メイと触れ合った手を、祈るように強く握り締めた。


グレイブを抱いたピーチを援護しながら、ベリー達はヒザマズーケと戦っていた。
三体に分身したヒザマズーケは、それぞれが両腕に生じさせた光刃、光輪、光球を振り回し、猛攻を仕掛けてきた。
“ゾディアック”、“オーガ”、“ナーガ”、“タイタン”……四体ものダークルンの力を、全て同時に発動している。

「いいか、みんな。ダークルンの力を纏め上げている、リングルンにあたるパーツが、あいつの体のどこかに必ずあるはずだ。今からその位置を見極め、私とピーチで破壊する。だから、それまで……!」
「オーケー!」
「そうと決まったら!」
「精一杯、やってみせるわ!」

三体の攻撃を紙一重で避けながら、ベリー達は互いの動きを複雑に交錯させ、ヒザマズーケの同士討ちを誘った。
ダンスで培ったコンビネーションの賜物である。
さしものヒザマズーケも迂闊な攻撃は出来なくなり、その動きを目に見えるほど停滞させた。

(たとえクイーンが百年、千年先を行っていたとしても……私だってキュアグレイブとして、いくつもの戦いを乗り越えてきたんだ!)

分身した三体のヒザマズーケに共通する、エネルギーの流れ。
ダークルンの反応が集中する場所を読むのは、今まで魔人の力に立ち向かい、あるいは味方につけて戦ってきたグレイブ=メイにとって、難しいことではなかった。

「わかったぞ……あいつの腹の、模様がある部分!」
「あの黒い十字架だね!」

ヒザマズーケの腹部に刻まれた、黒十字の紋章。そこに、ダークルンの力を制御する、小型の鉱石回路が埋め込まれているのだ。
ベリー達の撹乱戦法に業を煮やしたヒザマズーケが、分身を解除し、再び一体に戻る瞬間。
その隙を狙って、グレイブはリングルンを通じ、思念波を飛ばした。


「吼えろ、マシンクロスオーバー!!」


瓦礫を吹き飛ばし、爆音と共に城の最上階から飛び上がったマシンが、ヒザマズーケの背中にぶち当たった。
予想だにしない方向からの攻撃に、白い巨体は空中で大きくバランスを崩した。

「ハアアアアアッ!」

ピーチの手を離れ、宙を舞ったグレイブが、その真上からトンファーを振り下ろした。

『ヒザマズゥウウウケェッ!!』

ヒザマズーケの全身を、“ウィッチ”の絶対障壁が包み込んだ。
それも、“ジョーカー”の力でリミッターを解除した、最大出力のバリアだ。
この防御を切り崩すには――。
グレイブは持ち駒の中から、瞬時にダークルンを選択した。

「マニューバーUJ!」

再び“ユニコーン”の力を招来すると同時に、グレイブはヒザマズーケがそうしたように、“ジョーカー”の力でそのリミッターを取り払った。


「バイコーン・シュトローム!!」


グレイブの両腕に生成されたドリルが、唸りを上げて高速回転を始めた。
左のドリルが空間を撹拌し、障壁を渦巻状に歪ませる。
その中央に生じた特異点を、さらに右のドリルが貫き、押し広げた。

「ピーチ!」
「はああああああっ!!」

二本のドリルが障壁に穿った孔をくぐり抜け、ピーチの両掌がヒザマズーケの胴を捉えた。


「プリキュア・ラビング・トゥルーハート!!」


巨大なハートの光が、黒十字を包み込む。

『ヒ……ザマ……ズゥゥウウウゥウウケェエエエェエッ!!?』

鉱石回路を浄化され、苦しみもがくヒザマズーケの全身が黒く染まった。
溢れ出した魔人の力が、巨体をも呑み込んで漆黒の球体を成すと、さらに加速度的にその半径を広げていった。
その光景はまるで、黒い太陽の誕生だ。

「しまった……制御を失った力が暴走している。このままじゃ街ひとつ、いや、世界のひとつくらいは滅ぼしかねない!」

地上に降り立ったグレイブの目の前で、黒いフレアが周囲のビルを溶かし始めた。

「みんな!」

ピーチの声に、四人のキュアエンジェルが頷き合う。


「「「「クローバーボックスよ……私達に、力を貸して」」」」


四人のプリキュアと共にデリートホールに呑み込まれたクローバーボックスは、ピックルンの力によってエネルギー化し、それぞれのキュアエンジェルの装衣に織り込まれていた。
分かたれた光が再び一つに重なる時、空中に巨大なオルゴールの幻像が現れた。

「プリキュアフォーメーション! レディ……ゴーッ!!」

闇を裂いて極彩色の特殊空間が展開されると、ピーチを先頭に、四人のキュアエンジェルがその中を飛んでいく。

「ハピネスリーフ、セット!! ……パイン!」

手の内に凝縮した“幸せ”の力を、赤いハートの一葉に変えて、パッションは前方を飛ぶパインに投げ渡した。
翼を翻し、両手でそれを受け取ると、パインはその一枚に力を込め、“祈り”の葉を付け加えた。

「プラスワン、プレアーリーフ!! ベリー!」

パインが投げたハートを、ベリーはきりもみ回転しながら掴み取り……“希望”の一枚を加えて、その勢いのままに投擲した。

「プラスワン、エスポワールリーフ!! ピーチ!」

紡がれてきたハートの絆を、ピーチは真っ直ぐ前を見据えたまま、その掌で受け止めた。
“愛”の力が最後の一枚を開くと、四色のハートが織り成す、四つ葉のクローバーが生まれた。

「プラスワン、ラブリーリーフ!! ……はっ!!」

ピーチの手を離れたクローバーが、数十倍、数百倍に面積を広げ、巨大な魔方陣に姿を変える。
四人のキュアエンジェルを乗せた魔方陣は、黒い球体を透過すると、クリスタル状の結界で包み込んだ。


「「「「ラッキークローバー・グランドフィナーレ!!!!」」」」


四人が声を揃え、四方から流し込むプリキュアの力が、結界の中に満ち、無限に増幅されていく。


「「「「はああああああああああああああああああああっ!!!!」」」」


極彩色の輝きが、暴走する魔人の力を浄化し、ヒザマズーケの体を消滅させていった。

『シュオオォ……シュオォ……!!』

やがて、その体の核を成していた、小さな十字架……漆黒のリンクロスも、光の中に融けていった。


「プリキュア……!」
「プリキュアがやったぞ!!」
「ありがとう、プリキュア!!」


勝利した五人のプリキュアに、ラビリンスの人々は改めて声援を送った。


***


「思ったよりも早かったですね。……流石はプリキュアです」


グレイブタワーの最上階。
玉座から立ち上がったタナトスが、その踵を踏み鳴らすと、黒い床が水晶のように透き通り、階下の光景を明らかにした。
……いや、そうではない。
床全体がスクリーンとなり、タワーの地下深くを映し出しているのだ。

「……服従せよ、ヒザマズーケ」

クイーンの左掌で、紋章が蒼く燃え上がる。
同時に、トワイライトの大地が水面のように揺らめくと、地上に伸びていた無数の黒い十字架……巨大なリンクロスが、その波紋の中に沈んでいった。
広大な地下神殿に並んだ、禍々しい彫像の群れ。天井から降り注いだリンクロスが、その一体一体に融合していく。
石造りの怪物達の眼に、一斉に蒼い光が灯った。


『あまねく世界の民よ、拝聴せよ。……余は記憶の闇より甦りて、全てを暗黒へと塗り潰す者。永遠の夜を統べる、冥府の女王なり。その意に背く者は、死して魂までも、地獄の業火に焼き尽くされると知るがいい。あまねく世界の民よ……その定めを、享受せよ』

空に映し出されたタナトスの姿が、全ての世界にその言葉を届けていた。
その響き自体が、死神が唱える呪文のように、計り知れない恐怖と絶望を帯びていた。

(こんな……こんなことが、あっていいわけがない)

闇に囚われた街の中心で、グレイブはその拳を、震えるほど強く握り締めた。

(魔人の力で故郷を焼かれた人間が、自分の手で、それより酷いことをするなんて)

その心を表すように、彼女の背中で蒼い炎が、さらに激しく燃え盛った。

「止めてみせる……絶対に」

地面を滑るように走りこんできたマシンが、蒼い残像を置いて、その姿を一瞬で連れ去った。

「マニューバーRJ!」

グレイブの声と共に、六本のエネルギーマフラーが翼のように巨大化し、マシンは宙を駆け上がった。
空中のキュアエンジェル達を飛び越し、天を覆った黒いベールへ向けて突進していく。

「グレイブ!?」
「このままフィールドを突き破る。パッション、同時にアカルンの力を!」
「……わかったわ!」

ハンドルから手を離し、マシンのシートから立ち上がると、グレイブは両腕のドリルを重ね合わせた。
高速回転するドリルが一つに融合し、さらに数倍の大きさを持った巨大な一本に変化する。
――マニューバーUJ、第二段階の発現。


「プリキュア・ギガホーン・ラッシュ!!」


空間撹拌と空間拡張、二種の力が相乗し、最強の局所破壊貫通力を生み出す。
蒼い炎の竜巻となったグレイブが、黒い障壁に突き刺さると、その一点を即座に粉砕した。

「アカルン! ……夜の王国、トワイライトへ!!」

グレイブの一撃がフィールドを突破するのと同時に、アカルンの力が、五人の行く手にゲートを開いた。


「プリキュア、頼んだぞ……」
「君達なら必ず、全ての世界に光を取り戻せるはずだ」

管理塔から空を見上げるウエスター、サウラー。そしてラビリンスの国民達は、次元の彼方に消えていく五つの流星に、その願いを託した。


『ヒザマズゥゥゥウウウウウウケェェエエエエエッ!!』

飛び込んだ次元の狭間でプリキュア達を待ち構えていたのは、ヒザマズーケの群れだった。
それも、10や20ではない。
100体は下らない数が、特殊空間にひしめいていた。

「すごい数……!」
「また、とおせんぼってわけね?」
「でも、私達の進む道は決まっている」
「ええ。行きましょう、みんな!」
「――レッツ!」

ピーチの声に、五人は息を揃え、邪悪の軍団へ立ち向かっていく。
全ての世界を、全ての命を、救うために――。


「「「「「プリキュア!!」」」」」


ヒザマズーケの眼を通じ、グレイブタワーのスクリーンでその様子を眺めながら、タナトスは再び玉座に腰掛けた。
その背後では、物言わぬシステムと化したシフォンとメビウスが、全パラレルワールドから送られてくるエネルギーを記録、管理している。

「無限の力は此方に。反抗は意味を持ち得ない」

驕るでもなく、ただ冷徹に、タナトスは言い切った。


「あなた方の世界の単位で、三時間と三十三分、三十三秒後。全世界のエネルギー化は完了します」


天井に備え付けられた、大きな時計の歯車が、重々しい音を立てて時を刻み始めた。
あの針が一回りした時、本当の意味で、トワイライトの時間は再び動き出すのだ。

「……姉さま……」

壁を伝わってくる心地良い震動を、全身で感じながら――。
タナトスは、ゆっくりと目を閉じた。





つづく




******


次回のフレッシュプリキュア! クロス†オーバーは、
第25話『最大最後の敵! キュアグレイブ対五人のフレッシュプリキュア!!』をお送りします。
お楽しみに!




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テーマ : プリキュア
ジャンル : アニメ・コミック

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非公開コメント

No title

更新お疲れ様です!!

まず、マシンクロスオーバーがカッコ良すぎですねw グレイブらしくって、スピーディな描写も相まって素晴らしい味を出していたと思います^^
そして、メビウスが敗れ去り・・・タナトス様が・・・!!
姉の約束を守るためとはいえ・・・これはなかなかハードですね・・・

メイちゃんは一度、グレイプと想いを交わしていますから、彼女こそタナトス様を止めるには必要な椅子なのかなと思ったりも・・・

・・・あと、個人的には、「魔人の力のユニコーン→ジョーカーの力でバイコーンに」、というユニコーン系の解釈が良く出来ているなぁと感じて嬉しかったですw 生意気な言い方ですみませんw キュアユニコーンの姿を追う僕としても、ドキッとする部分で、満喫できました^^


次回も楽しみにしています!楽しい時間をありがとうございました!

コメントありがとうございます

>我さん

ついに専用バイクの登場です。マフラーならまだしも、ここまで直球で「仮面ライダー」なアイテムを出していいものかちょっと迷いましたが、やりたいことは全部やろうということでw

五人のプリキュアの中でグレープと会ったのはメイだけですから、やはり彼女とタナトスの対決がメインになってきますね。
託された願いに応えようとしたのは二人とも同じで、その辺りの皮肉とか悲しみを表現できたらいいと思うんですけどね。

正直に言うと、スクハイを読むまで「バイコーン」という幻獣を知りませんでしたw
ユニコーンとは別物として扱った方がいいのかな?とも思いましたが、どうせなので技名に使わせていただきました。こういう遊びをするのは楽しいですね。
ユニコーンは回復もできるし、魔人の中でも相当強力な部類です。…ただ、乙女に弱いという性質上、古代からプリキュア相手には実力が出せなかったというw

フレクロも残すところあと2話ですが、次回もたくさん楽しんでいただけるものを書きたいと思います!

いよいよカウントダウン2へ

いい意味で、クラインとメビウスの最期を見届けて、次なる戦いへの入りを堪能させて頂きました。
もはや、私から何も言う事はなさそうです。あとは七寝八寝さんの筆力に期待したいと思いますし、私も今後大プリキュア戦記を書く際の参考にさせて頂きたいと思っております(スイプリも次週はメージャーランド入りして新アイテムを探すそうですが)。

No title

マシンクロスオーバー!!・・・・・・中学生がバイク運転なんてしちゃいけません(`・ω・´)!!・・・・・すいません冗談ですwwいっそのことサイドバッシャーみたいになって隣にラブさん乗せちゃいなよ!なんて思ったりw
無人ライダーブレイク・・・ハゲ頭の正体知ってるとどうってことないんですが知らない上に一応は親みたいなもんであるパッションには衝撃映像すぎるでしょうww相変わらず容赦ないなグレイブはww
幻は止めろメビウス!お前の声のメイさんなんか見たかねえわい(´・ω・`)まあ本物のメイさんがあの声になっても変わらずついていきますけどねwメイさん可愛いよメイさん(`・ω・´)
プリキュア・クライング・ダークネス・・・・・まさかこれは私の!?おぉ……使っていただきあざっす!!

敵を倒したと思ったら味方が最大の黒幕だった・・・・・・!あれですね、メビウスがZマスターでクイーンが遊星主に見えてきましたw
ヒザマズーケ・・・この発想はなかった!というかシフォンをインフィニティから解放したフリして仕込んでた上にこんなもん使い出したら完全にラスボスやないですかクイーン・・・・・トワちゃんクイーンを止めておくれ(´・ω・`)
ともかくクイーンはメイさんとラブさんに殴られて目を覚ますべき(`・ω・´)私は最初からメイさん一筋ですのでクイーンの心情も解かりますが揺らぎませんぞ。まあそうでなくてもこんなやり方は認められませんけどね。
(小説版FINAL読んだ身では実はクイーンも”本人”は死んでるんじゃないかとビクビクしとりますw)
フレクロも残りわずかですか、いわゆる最終3部作に入りましたね・・・・・寂しさもありますが25話も楽しみにしています!

コメントありがとうございます

>畑中 智晴さん

長い間、付き合わせてしまってすみません(汗
キイマジンとの戦い、ラビリンスとの戦いを経て、ついにクイーンとの最終決戦です。
ここまでくれば、次話以降がどんなに遅れても、最低でスイプリと同時期には終了できるかと…
本編の更新にまたお時間を頂くことになりますが、どうか最後までお楽しみください!

コメントありがとうございます

>空魔神さん

あくまでバイク型アイテムなので、大丈夫…ですw サイドカーという発想は無かったですね。それもすごくいいかも…!
グレイブがまた容赦無さ過ぎるんですけどw、自分としてはごく自然に書いちゃった部分ですね…。説得をさせる一方でマシンを攻撃待機させていたり、わりと冷徹な判断なんですが、まぁ、何よりパッションを守るためですから。
メビウスの幻は、イース仕様の五人組というのがネタとしてやりたかった部分ですね。声はともかく、邪悪なメイは非常に似合うと思うんですがw
メビウスを倒す必殺技がまだ決まっていない所に、空魔神さんのイラストが上がってきたので、これしかない!とw 使わせていただきました。本来はプルート単体で放つ技のフレッシュバージョンという設定です。

狙ってそうした部分と、無意識にシンクロしてしまった部分があるのですが、シリーズの構成としては最初から『ガオガイガー』を意識していました。遊星主はかなり好きな悪役ということもあり、目的のシンクロは偶然ですが、クイーンの描写にアベルの影響はありますね。
クイーンがクローンだったり、プログラム体だったりということはさすがにありませんがw、もし『ガオガイガー』に登場したアベルが暴走したプログラムではなく本人だったら、こういった心情が描かれたのではないか?と思いますね。こじつけですけどw

書く側としても、いざ終わりが見えてくると寂しさを感じますが…次回もお楽しみに!
プロフィール

ヤネ

Author:ヤネ
フレクロF、今度はイニシャルWW編です。

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