クロスオーバー! フレッシュプリキュア! クロス†オーバー 第25話(その3)
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フレッシュプリキュア! クロス†オーバー 第25話(その3)




湖の岸に泳ぎ着いたせつなは、今一度、水底を見つめた。

「メビウスも、あなたがたどり着いた出口も、間違ってはいないでしょうね。……でも、私達は別の道を行く」

リングルンに似た黄金の輪が、彼女の眼前に現れた。
その内側には暗黒と、星々の輝きが渦を巻く。
グレイブタワー最上階――クイーンのもとへと繋がるゲート。

「この迷宮を抜けて、違った答えを勝ち取ってみせるわ」

再びその身に紅い装衣を纏い、白銀の翼を広げて、彼女は。
――彼女達は、最後の決戦場へと歩を進めた。


***


四つの黄金の輪が導く場所。
蒼い炎が照らす神殿。
壁に埋め込まれた小さな姿を、プリキュア達は見た。

「シフォン!!」

四人のキュアエンジェルが掌を合わせると、その中心に白いオルゴールが現出する。

「シフォンちゃん、今すぐ元に戻してあげるから……!」
「クローバーボックスよ!」

ピーチの声で展開したクローバーボックスから、子守唄が流れる。
が、シフォンのもとへ届くより早く、冷たく禍々しい笛の音が響き、その旋律を打ち消した。

「なに……この音……!?」

壁に取り込まれ、何処かへと消えるシフォン。
入れ替わるように、玉座に掛けた黒い女王の姿が、闇から浮かび上がる。

「インフィニティ・スイッチを解析して組み上げた、FUKOのメロディです。インフィニティを強制的に発動し、クローバーボックスを無効化する」
「……クイーン」

四人のキュアエンジェルと、クインシィタナトスとが対峙した。

「グレイブは……どこ」
「彼女はひと足先に、私が冥府へ誘いました」

タナトスはその左手に輝くリングルンを、証明と言わんばかりに示した。
愕然とするプリキュア達へ、さらなる事実を突きつける。

「……遅かったのですよ、フレッシュプリキュア。既に全ての世界は、トワイライトを甦らせるためのエネルギーへと、完全に昇華されました」
「うそ……間に合わなかったっていうの……!?」
「そん……な……」
「みんな、しっかりして!」

立ち尽くす仲間達を、ピーチの声が突き動かす。

「あたし達が諦めたら、クローバータウンストリートや、全ての世界の人達から託された想いを、本当に無駄にすることになるんだよ!」
「……そうだわ……。託された想い……この翼の、羽根のひとつひとつに、みんなのハートは生きている」
「まだ、トワイライトが完全に再生したわけじゃない……きっと、何とかできる方法があるはずよ!」

パッション、ベリーが後に続き、

「わたし達の前に立ちはだかった敵。誰よりも綺麗な心を持っていたために、届かなかった祈りを、信じられなかった世界を、ひたすらに、憎み続けるしかなかった人達。……その命も背負って、わたし達はここにいる」

パインの言葉に、全員が強く頷いた。
そんなプリキュア達のやり取りを目の当たりにしながら、タナトスは冷笑を漏らした。

「認めなさい。あなた達の世界は消えた。それを取り戻そうというのなら、私の行っていることと、どこが違うというのです?」
「それは……!」
「どちらにも正義がある。勝利した側が願いを叶える。単純明快です、素晴らしい」

玉座を立つと、足下に生じた影から大鎌を引き抜き、プリキュアへ向けて振りかざす。

「そして勝つのは、力ある者――私です」

対する四人も翼を広げ、陣形を組んでタナトスを迎え撃った。
キュアスティックを携えたピーチとベリーが、双璧となって前面に並ぶ。

「クイーンの裁きを、永遠の夜を、享受せよ」
「そうは――いかないわよ!」

先陣を切って飛んだベリーは、思いがけない行動をとった。
手にしたソードを大きく振りかぶると、それをタナトス目がけて投げつけたのだ。

「――!」

縦横に回転しながら迫り来る剣。蒼く輝く切っ先が、幾重にも光の輪を描く。
虚を突かれる形になったが、タナトスは即座に反応し、大鎌をかざして防御の態勢に入った。
が、

「今よ、ピーチ!」
「――ん!?」

剣を受け止める寸前、目も眩む閃光が周囲を包んだ。
威力を絞ったラブサンシャインフレッシュが、高速回転するベリーソードに向けて照射されたのだ。
二つのプリキュアの力が弾け、激しい光熱となって乱れ飛んだ。
それはタナトスの視界を奪い、行動を妨げた。ほんの一瞬ではあったが、特殊空間に彼女を捕らえるには十分な時間だった。

「クローバーボックスよ、あたし達に力を貸して!!」

視力を回復したタナトスは、自身を取り巻く極彩色の渦を見た。

「……これがクローバーフィールド!」

渦巻くエネルギーがタナトスの四肢を縛る。
初めてその表情に焦燥の色が差した。


「「「「ラッキークローバー・グランドフィナーレ!!!!」」」」


タナトスを包んだ結界の内部で、四人のプリキュアの力が猛り狂う。
増幅されたエネルギーが、タナトスの纏う闇を浄滅していく。

「ふふ……そうでなくては」

それでもタナトスは、微笑を浮かべてみせた。

「世界が再生されるまでには、まだ時がある。お相手しましょう……最強、最後のプリキュアが」

菱十字の意匠を持った小さな鍵を、左腕のリングルンに挿し入れる。
交差した両腕を、翼のように広げて。
そして、その言葉を唱える――。


「チェインジプリキュア――クロスオーバー」


爆裂。
タナトスを戒めていた結界が……いや、彼女達を取り巻いていたクローバーフィールドそのものが、薄氷か硝子細工のように、粉々に砕け散った。
凄まじい量のエネルギーの氾濫に、四人のプリキュアは押し流され、神殿の壁に身を打ち付けた。
無数に並んでいた石柱の全てがへし折れ、倒壊していた。
暗闇に包まれた空間の中央に、青白く光る存在があった。

「キュア……グレイブ……!?」

タナトスの黒いドレスが白く染まり、形状までもが著しく変化している。
その装衣は、キュアグレイブ・プルートのものと同じ。
唯一の相違点――肥大化したエネルギーマフラーが、蒼い炎のマントとなってはためいている。
その中央に浮かび上がるのは、トワイライト王家の紋章。
菱十字の――まさしくトワイライトという、十字架を背に負った姿。

「無限の闇と永遠の夜。全てを葬る、冥府の女王」

全てのプリキュアに宛てた墓標。
全ての世界を葬る死神。
この世に生み落とされた、地獄そのもの。


「――キュアグレイブ・インフィニティ」


千年の時を漂流したクイーンが、その果てに辿り着いた威容。
メビウス、及びインフィニティとリンクした∞(インフィニット)リングルンは、本来想定されていた性能をほぼ完璧に発揮する。
さらにサーペンタインの輪から常時供給されるエネルギーは、無尽蔵と言ってよく。
23種のマニューバーの組み合わせによって、あらゆる事象を実現可能とする。
最強最後の――最悪のプリキュア。

「グレイブの真の力。プリキュアの恐ろしさを、存分に味わわせてさしあげましょう」

リングルンに灯った小さな輝きが、たちまち神殿を呑み込むまでに広がる。
左腕を天に掲げ、グレイブ・インフィニティ――クイーンは、呟いた。

「大・気・反・転」


***


暗黒の宇宙に浮かぶ、菱十字の大地。
その四つの頂点にそれぞれ、ピーチ達は立っていた。
彼女達の中央には、クイーンの姿がある。

「ここは……これが、グレイブフィールド……?」
「でも、前にわたしが見たのとは、少し違うみたい……!」

そう言って、パインは空を仰いだ。
かつて天に渦巻いていた無数の銀河団は、白く優美な光を失い、地獄の業火のように赤黒く燃え盛っている。
四人のキュアエンジェルの背後には、ハート、スペード、ダイヤ、クローバー……それぞれに対応する紋章が刻まれた、黒い十字架がそびえていた。

「あたし達の墓標、って言いたいわけ?」
「プリキュアの最期に相応しい決闘場でしょう」
「最期……ですって?」
「そう。これがプリキュアの、史上最期の戦いです」

その言葉とは裏腹に、クイーンは手にした大鎌を天地逆にし、自らの足元に突き立てた。
一瞬で終わらせては興に欠ける、ということなのだろう。
クイーンの四方を囲んだピーチ達は、静かに視線を交わし、タイミングを計った。
口を開かずとも、集中すればリンクルンが互いの意思を繋ぎ合わせてくれる。

(勝負は一回……!)

再生システムを止めることを考えれば、戦いに割ける時間は少ない。
が、それ以上に、ラビリンスからの連戦による消耗が深刻だった。
クイーンは両目を閉じ、両腕を開き、無防備な姿を晒しているように見える。
たとえそれが確固たる勝算あっての行為だとしても、これがピーチ達に与えられた、最後のチャンスであることは間違いなかった。
一瞬の逡巡の後、四人のキュアエンジェルは四方から、一斉にクイーンへと猛進した。


「「「「はあああああああああああああああっ!!」」」」


ピーチロッド、ベリーソード、パインフルート、パッションハープ――それぞれの武器を、クイーンに密着した状態で発射する。
かつて、プリキュアの力が尽きかけたナキサケーベ戦でも用いた、捨て身の戦法。
万一クイーンが攻撃を避けたとしても、一斉に放たれたエネルギーの爆発に巻き込まれ、無傷ではいられない。
刺し違えてでも、クイーンを倒す……それが四人の覚悟だった。
五つの影が一つに重なり、そして――。
そして。

「……こういうことです」

ピーチ達、四人のキュアエンジェルは、それぞれの紋章が刻まれた十字架のたもとへ、同時に叩きつけられた。
四人の武器は、攻撃を放つより前に、跡形も無く粉砕されていた。
クイーンの手に握られていたのは、黒い一振りの鉄棍――グレイブトンファー。
この一本のみを操って、瞬きの間に四人の武器を破壊し、それぞれの急所に一撃を加えたのだ。
――それも、両の瞳を、伏せたままで。

「みんな……諦めちゃ、駄目だよ……!」

胴を押さえて立ち上がったピーチだったが、唐突な脱力感に襲われ、その場に膝を突いた。

「え……どう、して……」

身体が、思うように動かなかった。
手足に力が行き届かない。……というよりも、まるでどこかに、吸い取られていくような感覚。
同じ現象が、他の三人の身体にも襲っていた。

「ここはグレイブフィールド。私の支配する世界です」
「なん、ですって……?」
「邪悪なものの力のみを吸収する、それがかつてのグレイブフィールドでした。……しかし、今は違う。あらゆる存在からエネルギーを吸い上げ、リングルンに充填する」

この空間で戦う限り、何者であっても、支配者たる存在――キュアグレイブ・インフィニティの前に、跪く以外の術を持たない。

「――それが、“真の”冥府(グレイブ・フィールド)」
「くっ……うっ……!」

クイーンの、紅榴石の輝きを持つ二つの瞳が、ピーチの姿を映した。
既に彼女は、ピーチの目前に立っていた。

「“愛”のプリキュア、キュアピーチ。愛する仲間の散りゆく姿を見せないことが、あなたへかける、最後の慈悲です」

黒い鉄棍が、頭上へ振り上げられる。

「――享受せよ」

神速で走る死神の腕が、十字の軌跡を刻んだ時。
ピーチはその暴威に立ちはだかる、小さな背中を見た。

「あ……あっ」

言葉を失うピーチの眼前で、パインの体がスローモーション再生のように、ゆっくりと舞った。

「ラブ……ちゃん……」

その瞳にピーチを捉えると、パインは微かに笑った。


「――“真・イングレイブスター”」


山吹色の装衣が弾け、暗黒の空に散る。
祈りのプリキュア――キュアパインはこの瞬間、世界から消滅した。


***


暗闇の空間を、メイはゆっくりと沈降していた。
その心にあるのは、絶望――。世界を守れなかった、クイーンを止めることができなかったという、紛れも無い事実。行き着く先は、奈落の闇だ。


(ごめん……)


虚ろな瞳から、涙が零れた。


(ごめん、みんな……)


グレイブフィールドγに呑み込まれたメイは、サーペンタインと連動したそのシステムによって……全てのパラレルワールドがそうなったように、エネルギーとして吸収されつつあった。
それでもメイの体が持ち堪えていたのは、プリキュアの力がその身に残っていたためである。
事実、腕に絡んだマフラーは既に分解され、刻々と形を失い始めていた。
闇に尾を引きながら、次第に崩れゆく紅い糸。それを手繰り寄せるように、メイへと近づく者がいた。
冷たく無機質なプログラムの暗闇に、一点の光が輝いた。
絶望を繰るシステムに立ち向かうもの――それはいわば、希望という名のプログラム。
流れる涙を、そっと拭う指先の温もりを、メイは感じた。


(姉さん……?)


いや、違う。

「キ……サ……」
「憶えていて、くれたんですね」

メイの零した涙は、先程までとは違う輝きを持ったものだった。


(……当たり前じゃないか)


――私達は、ずっといっしょだったじゃないか。
今すぐに、笑顔で、……そう、彼女に伝えたかった。
だが、今のメイには声を出すことはおろか、口を動かすことすらできなかった。
温もりの中で、メイの意識は遠のいていった。

「今の私には、あなたをここから出してあげることはできない。……でも、あなた自身にはその力があります。たくさんの人の願いが、あなたを支えているのですから」

メイの身体を、クリスタル状の結界が包み込んだ。
グレイブフィールドのシステムから、彼女を保護するためのバリア。

「メイ、あなたに託します。……救ってください。世界を……そして、“あの子”を――」

最後にもう一度メイを一瞥した“彼女”は、身を翻し、再び暗闇の中を昇っていった。
今こそ自らの生まれ持った宿命と、対決するために――。


***


虚空の決闘場。……否、それはもはや、処刑場以外の何物でも無かった。
力を失ったプリキュアの体を、十字架から伸びた黒い鎖が捕縛した。
磔の祈里は物言わぬまま、頭(こうべ)を垂れている。

「クイーン……あなたは……」
「死んではいませんよ。あなた方の命も、トワイライトにとって貴重な財産なのですから」
「……許さないっ!!」

地面を擦るように飛び立つと、その加速の全てを乗せて、ベリーは鋼の右脚を繰り出した。
クイーンは動かない。
渾身の蹴撃が、真正面から、その胴を貫いた。

「――っ!?」

目の前にあったクイーンの姿が掻き消えると同時に、雷に打たれたような衝撃と激痛が、ベリーの全身を襲った。

「幻……影……!?」

ピーチとパッションには、動く隙すら無かった。
それもまた一瞬の、あまりにもあっけない出来事だった。
意識が途絶える寸前。背中越しに、ベリーは聞いた。


「――ロックブレイク」


処刑の十字と共に添える、死の女王の呟き。

「……ベリ―――――っ!!」

蒼いプリキュアが散華する。
膝を突き、地に伏せる蒼乃美希。
彼女の背後から現れたクイーンの手には、小さな鍵の妖精が握られていた。

「ブルン!?」
「イングレイブスターの持つ、真の力……プリキュアブレイク」

苦しみもがくブルンが輝くエネルギーに変換され、クイーンの装衣へと吸収されていく。
グレイブ・インフィニティの右脚に描かれたハートの紋様に、蒼い色彩が宿った。

「妖精の力をその身から切り離し、グレイブの一部として取り込む」

マントの内側に隠れていた、左腕の紋様――そこにもパインを象徴する、山吹色が現れていた。

「じゃあ……今の幻影も」

胸に輝くエメラルドの十字架を、クイーンはその指でなぞった。
――リンクロス。

「絆の鍵。その力も既に、私の一部」


クイーンの左右には磔にされた二人、正面にはピーチが片膝を突いている。
パッションには背を向けた状態で、彼女は瞳を閉じ、次の一手をただ待っていた。
感覚を失いつつある両手を、ピーチは固く握り締めた。

(負けるわけには……いかない)

勝算は、ほぼ無い。だが、ゼロではない。
このまま時の歩みを許せば、クイーンの勝利だけが確実に訪れる。
動かなければならない。
尽きかけたエネルギーを絞る、最後の攻撃。
クイーンにダメージを与えうる武器が、唯一あるとすれば、それは――。

(……パッション!)
(ええ……ピーチ)

クイーンを跨いで視線を巡らせ、二人は小さく頷き合った。


「クイィィィ――――――ンっ!!」

静寂を裂く声と共に、パッションはクイーンを目がけて地を蹴った。
引き構えた右の拳に、紅い光が収束する。
もはや、パッションハープを生成するだけの力は残されていないのだ。
光に照らされ伸びる影は、目の前のクイーンが幻でないことを示している。
その標的に向けて、最後の輝きを纏わせた拳を、背後から叩き込む。
身を翻したクイーンは、炎のマントをかざして、その一撃を防御した。
……つもりだった。

「!」

閃光の拡散が視界を覆い、パッションの姿をくらませた。
攻撃に見せかけたワープ――クイーンの意識が逸れた間隙、時間差で肉薄したピーチの拳が、クイーンを捉えた。
鈍い炸裂音が空間に滲む。

「…………」

半身だけ振り向いたクイーンは、グレイブトンファーでピーチの攻撃を受け止めていた。
砕けた拳がぐにゃりと歪む。
が、ピーチは微塵も怯むことなく、生きている左手をクイーンの喉元へと喰らいつかせた。

「パッション!!」

両者の頭上。
漆黒の空に舞う、真紅のドレス。
大鎌を携えた戦士の顕現。


「はああああああああああああああっ!!」


ワープアウトしたパッションは、落下の速度を乗せたクイーンズジャッジを、垂直に振り下ろした。
手放した武器を奪うための、自身とピーチを囮にした、二段構えの陽動。
クイーンの動きは、ピーチが完全に封じている。狙いは外しようが無い。

(――勝った!!)

大鎌の切っ先が、クイーンの顔面へと吸い込まれていく。
クイーンは瞬きひとつしなかった。


「……く……っ!?」

翼を広げ、パッションはその全力を両腕に込めた。
だが、刃はクイーンの額に触れたところで静止し、ぴくりとも動かなかった。
紅い瞳がパッションを見上げ、笑みの形に歪む。

「審判の鎌は、女王にしか従いません」

刃が翼のように羽ばたき、翻り、パッションの装衣を切り刻む。

「あああああああああああっ!!?」
「パッション!!」

パッションを救おうと伸びた、ピーチの左手。
容易く解放されたクイーンは、トンファーを縦横に走らせ、終止符を打つ。
マントが逆巻き、蒼い火の粉が乱舞した。

「これで――」

二つの光の十字架が、銀河に花開く。
プリキュアの、世界の黄昏に、手向けるレクイエム。


「――冥府、完成」


グレイブフィールドに残された二つの十字架が、それぞれの主を迎え、力尽きた戦士を虚空に晒す。
フレッシュプリキュア、壊滅。
今ここに、現世の全てが冥府に下り、クイーンの前へと跪いた。


***


トワイライト上空。
時を古代に巻き戻すかのように、ゆっくりと廻り続けるサーペンタイン。
円環の向こう側――空一面に、天地逆様に映し出された街並。
それは、在りしトワイライトの情景であった。
天と地、光と闇、昼と夜、過去と未来、生と死、現世と隔世が入れ替わる。
その時が、目前に迫っている。


「マニューバーモードを、用いるまでのことでもありませんでしたね」

グレイブタワーの最上階。
神殿の中央に四つ、横並びに立てられた十字架。
それぞれに桃園ラブ、蒼乃美希、山吹祈里、東せつながその身をくくられている。

「顔を上げなさい。決して、あなた方の力が及ばなかったわけではありません。……生きとし生けるものはみな、“死”という真理の前に、抗うことなどできないのですから」

姿を成した“死”そのもの――それこそが、冥府の女王。真の、キュアグレイブ。

「私達をどうするつもり?」

せつなの言葉に答える代わりに、クイーンは左腕を四人に向けてかざした。
リングルンの中枢部が展開し、四つの光が解き放たれる。
クイーンズジャッジの旋律に操られ、黒い鍵の妖精が円を描くように、ラブ達の周りを飛び始めた。

「ダークルン!?」
「あなた方に力を授けます。トワイライトの新たな戦士として、生きる機会を」
「あたし達を利用するつもりなのね。ダークルン四姉妹と同じように……!」
「享受すべきです。記憶という形だけでも、あなた方の世界が存在した証を残すために」

イニシャルL、M、I、E――四体のダークルンが、それぞれ適合する主へと一体化していく。

「い……や……だ!!」

ラブ達四人は、その精神力で、心を侵す力の誘惑を跳ね除けた。

「あたし達は、まだ愛を諦めちゃいない!」
「希望は捨てない!」
「勝利を信じてる!」
「幸せを、見失ってなどいない!!」

四人の叫ぶ姿を、クイーンは悲しげに見つめていた。
その瞳に偽りは無かった。
ダークルンを呼び戻すと、玉座を立ち、先程とは異なる旋律を吹き奏でた。

「これを拒むというのなら。全てのものに等しい救い――“死”をもって、プリキュアの物語を締めくくりましょう」

影の中から浮上する、四つの黒い十字架。
リンクロスの倍ほどの大きさを持ったそれらは、空中で転回し、銃器へと変形した。

「一思いに――滅びた故郷へ、還りなさい」

ラブ達を狙う銃口に、青白い輝きが灯る。


「ファイアー・オフ」


クイーンが指を打ち鳴らすのと同時に、閃光が走り、ラブ達の周囲は白い爆煙に包まれた。
……僅かな時間の後。
奇妙な静けさの中で、四人は目を開いた。

「あ、あれ……?」
「あたし達……生きてる」

紫色に輝くエネルギー障壁が、彼女達を守護していた。

「なに……?」

クイーンは目を凝らした。
跳ね返されたビームが天井や床を砕き、粉塵が視界を妨げていた。
その向こうに、朧に浮かぶ小さな影があった。

「ここで全てが終わり、そして始まったあの日。……私もグレイブも、あなたの望みを実現するための、道具でしかなかった」

響き渡る少女の声。
花のように可憐な美しさの内に、凛とそびえる強さを、確かに秘めて。

「……しかし、今は違う。キュアグレイブはみんなの願いを叶えるために、邪悪と戦う者の名」

流れる黒髪。風に翻るセーラー服。
晴れゆく爆煙の向こうに、冥府の女王と対峙するその後姿を、ラブ達は見た。

「黒須メイが変身する、一人のプリキュアの名。フレッシュプリキュア、五人目の戦士の名です」

プログラムスピリット、ダークルン・イニシャルX。

「私も、キュアグレイブという存在も、メイと出会って新しい生を受けた」

今はその宿命に抗い、愛する仲間と共に戦う者。

「……そう。私は、私の名は」


「願いの超新星――キサナドゥ」





つづく




******




クロス†オーバー。
それは、超越の物語。
明日へ、未来へ、全ての運命を越えて。
私はこの道を、ただまっすぐに。


次回、フレッシュプリキュア! クロス†オーバー
グランドフィナーレ『明日へのクロスオーバー!!!』


最大・最強・最後の変身、とくとお見せしましょう!!!





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テーマ : プリキュア
ジャンル : アニメ・コミック

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No title

最終決戦だけにメイさん可愛いよメイさん(`・ω・´)と言える隙が無かった・・・・・(´・ω・`)いや、例えそうでもメイさんが可愛いのはかわりねえんだ!やっぱりメイさん可愛いよメイさん(`・ω・´)
復活の四姉妹は予想外!だけど実は悪キュアだったのがもっと予想外でした。
バルキリージュカは名前的にも実力的にもプリキュアじゃなくローズみたいな追加戦士ポジのような気もw
ラビリンスカードが決め手とかせっちゃんカッコイイよ!!(一瞬今度はキイマジンでなくホホエミーナになるんじゃ・・・・・とか思ったのは秘密w)
サブタイでメイさん操られて・・・・・とか心配してたらクイーンが変身だったのか。だが空魔神にとってはグレイブはクイーン、貴方ではなくメイさんだぜい!
力を封じられるグレイブはJジュエル凍結くらったJを思い出しましたwグレイブフィールドはマックスフィールドぽいと思ってたけど真になるとEI-01のGパワー封じがw
そして復っ活っ!キサナ復っ活!!妖精も戻ってメイさんの最後にして本当の変身が楽しみです!!早くこぶしパンチでクイーンの目を覚ましてやって!・・・・・・そうかもう最後かちょっと寂しい(´・ω・`)

No title

まさに最終決戦!!ピンチに次ぐピンチにハラハラドキドキでした~>< はぁあああ怖いw

四姉妹をここで持ってくるとは・・・四人という設定を活かした見事な采配のタナトス様に感服です。
フレッシュチームにあてがわれたのは、それぞれの想いとは真逆の存在であったので、この点でもキャラクターが活きてきているなと、感心させられっぱなしでしたw

グレイブに感じていた”違和感”はやはり、タナトス様から与えられた力であるという点でしたが、やはりこうなってしまいましたか・・・!!

希望を失いかけたその時に現れた、愛しのキサにゃん!!タナトス様を止めるのは、やはり彼女の姉の意思を受け継ぐ者の想いなのでしょうか・・・。

メイちゃんをはじめとする、すべての人の想い。最後まで見届けたいです。

この度は更新お疲れ様でした!次回も楽しみにしております!!

コメントありがとうございます

>空魔神さん

最終回に向けてメイには一度完敗してもらいました。
四姉妹も、あれだけで使い捨てにするのはやっぱり可哀想だと思いまして。彼女達のプリキュア名(キュア○○)も一応考えてはあるのですが、披露する機会はあるかな?w
エンジェルの羽根からホホエミーナを召喚して逆転というのも考えはしたんですが、あれは雰囲気ブレイカー過ぎて私には扱い切れませんでしたw 力不足ですw
サブタイトルはそういうミスリードもちょっと狙いましたね。まぁ、メイが操られるのはすでに二度もやってますから…
アベル大好きなので、はい。あれはそのままJジュエル凍結ですw 真グレイブフィールドは、ラスボスに付き物の反則能力ということで。どう破るか、という点にご期待ください。
ようやくキサナを帰ってこさせることができました。私としても、本当に嬉しいですね。やっぱり安心感があります。
書き手としては最終回に差し掛かって、いよいよ本番という感じですw 寂しさはまだ感じる余裕がないですねw
感想ありがとうございました!! 次回もお楽しみに!!

コメントありがとうございます

>我さん

とにかくバトルが多くて、読むのも大変だったかもしれません。最終回手前ということで、ひとつひとつの戦闘も激化しまくりですしねw

クローバーと四姉妹それぞれをぶつける展開を思いついた時、ここでやるしかない!と強引に組み込んでしまいましたw
真逆の主張の敵と戦わせることで、ラストに向けてラブ達のキャラを再確認できればいいなーと。

そこに違和感を感じられていたのはさすがですね。当然ながら、クイーンに与えられた力ではクイーンには勝てません。

希望を求めてメイと出会った彼女が、今度は最後の希望を繋ぎます。グレープの記憶と想いを継いだキサナと、クイーンとの対決にご期待ください。

全ての世界を救えるものがあるとしたら、やはり全ての世界に生きるものの想いしかないでしょう。メイ達はその代表として、明日を生きるために戦います。

感想ありがとうございました!! 次回もお楽しみに!!
プロフィール

ヤネ

Author:ヤネ
フレクロF、今度はイニシャルWW編です。

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